さてさて、99本目はTIFF@渋谷Bunkamura の『浜辺の女』(2006年 監督:ホン・サンス)。コンペティション参加作品。昨日のこの作品上映では、ホン・サンス監督のプレスと一般とのジョイント記者会見付だった。そんな事どこにも書いていなかったのだけど、ちょとしたサプライズが映画祭の楽しみ。
(Image source: tiff)
『浜辺の女』なんてタイトルだからメロ作品だとばかり思ったら、まぁメロであるような、コメディであるような、ドラマであるような。うぷぷ。
『女は男の未来だ』を見た人にしかわからないのだけど、この作品は『女は・・・』を3倍ぐらい拡張強化した作品。奥行きもある。『女は・・・』以上に、『浜辺の女』は、くっくっくと笑い始めるととまらない。男女のすれ違ったおかしな会話が、楽しめる。
ストーリーはシナリオ創作に行き詰った映画監督(キム・スンウssi)は、映画美術担当(キム・テウ)とその彼女ムンスク(コ・ヒョンジョン)と一緒に海岸へ行き、そこでシナリオ創作に没頭するはずが・・・ムンスクに惚れてしまい、三角関係になってしまう。
『女は・・・』同様、ここでも三角関係なのだけど、今回は、大きな三角関係、小さな三角関係が生まれては消え、また生まれて重なりあったり、男女間の機微がなんとも心憎く描かれている。頼りなくて臆病な監督を演じるキム・スンウssi ははまり役だし、浜辺のヒロインのコ・ヒョンジョンssi は一旦芸能界を引退して最近カムバックした女優で、本作品が映画デビュー。演技を初めて見たのだけど、なかなか味のあるいい女優さん。顔は美しいけど存在感のない若い女優さんが多い中、すごい美人というわけじゃないけど愛嬌があって、この人やっぱりただ者じゃなさそう。
どうして三角関係を題材に?という問いに、監督は「どうしてだかわからない」(爆)
って、あなたがシナリオ書いたのでしょう!??
主人公の職業に映画監督を選んだ理由は? ホン・サンス監督の分身か?という問いには、「映画監督じゃなくても、職業は何でもよかった。ただ身近なものだったからストーリーを展開しやすいと思った。理由はない。今度は別の職業にも目を向けた方がいいのだろうか?」
って、理由もなく映画監督を選んだ??(爆) 職業は何でもよかったと3度も強調しておられたので、かえって、やっぱりご自身の分身なんじゃないのぉぉ?? なんてアマノジャクな私は思ってしまった。
『女は・・・』でユ・ジテssi が演じた役もそうなのだけど、作品中、男性の存在がなんとも頼りなくて、いい加減で、臆病で、でも憎めなくて・・・ そして、女性の方はさっぱりしているようで、時々執着心も見せたりして可愛くて、でも、意外と地に足がついている。ホン・サンス監督の描く男女って、舞台が韓国でなくてもどこでも世界を置き換えられそうだ。
監督いわく、ネタは身近なところで、見つけるそうだ。作品におけるものの見方というのも、平凡で、ごく普通の生活の何気ないところを掘り下げて、何かを見つけたかったそうだ。カメラワークにもズームをあまり使わず、確かに役者の表情をどアップで撮っていないので、何かこだわりあるのかという問いにも、「理由が特にあるわけでなく、ただなんとなく(爆)、そのときの監督の感性で撮った」のだそうだ。作品を見れば、本当に感性と経験だけで撮った作品だということがすぐにわかる。
プレスと一般とのジョイント記者会見はTIFFで今回初めての企画だったらしいのだが、監督がこんな感じでボソボソ話すのでちっとも盛り上がらなかったのだけど、それがまたこの監督らしくて でも国際舞台慣れしておられるせいか、韓国語と英語とダブルの通訳はややこしいからと、自らすべて流暢な英語で話をされた。
そうそう、キム・テウssi も出演しているのだけど、どうもそのキャラのせいか、テウssi ってやっぱりそういう運命なのね・・・うぷぷ。
日本での公開予定はないそうだけど、お奨めの一品なのにもったいないなぁ・・・