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流出原油はどうなった?
メキシコ湾の原油流出事故はどうなっただろうか?7月15日以降、壊れた暴噴防止装置には油井キャップが取り付けられ、流出は止まっているはずだ。
ところが今回、マサチューセッツ州にあるウッズホール海洋研究所(WHOI)の調査により、長さ35キロ、厚さ200メートルにもなる原油の層が、水深1100メートル付近に数カ月間居座っている事実が判明した。米科学誌サイエンス(電子版)で発表した。
深海や海底の生態系に長期間にわたって悪影響が及ぶ恐れがあることを示す内容。米政府は原油の4分の3が蒸発や分解によって除去されたと発表したことから、事故の影響を楽観するムードが広がっているが、見方が変わる可能性もある。
研究チームは6月19日から28日にかけて、無人潜水艇に搭載した分析装置を使って事故現場周辺の海水を調査。この結果、原油の成分である炭化水素を含むプルームが水深1100メートル付近を西南西に向かって35キロ以上も延びていることを確認した。プルームは厚さ200メートル、幅2キロに達した。中でも特に毒性が強いベンゼンやトルエン、キシレンが通常の原油に比べて高濃度で含まれているという。
酸素濃度の違いからプルーム内の原油成分は海面付近に比べて細菌による分解が遅いとみられ、チームは炭化水素は長く残留する可能性があると指摘している。(共同)
原油を分解する新種細菌!
一方、原油を分解する新種の細菌(破線の円内、研究グループ提供) 大量の原油が流出したメキシコ湾の海底で、原油を分解する新種の細菌が繁殖していることがわかった。
米ローレンス・バークレー国立研究所の研究グループが発見し、8月24日の米科学誌サイエンス(電子版)に発表した。
今年5月25日から6月2日にかけ、メキシコ湾の深海底17か所で採取した試料から見つかった。オセアノスピリラーレスと呼ばれる細菌の仲間で、水温が5度の冷水環境でも、効率良く原油を分解しているという。
細菌の繁殖によって海中の酸素濃度が低下する可能性もあるが、研究チームの観測では、濃度低下は確認されておらず、他の海洋生物への悪影響は心配ないとしている。(2010年8月25日 読売新聞)
死の海の復活
地下に眠る有機物を細菌が分解して、原油はつくられる。そして、流出した原油をきれいに掃除してくれる細菌もいるとなると、何ともありがたい話だが、そんなに都合のよい微生物がいるのだろうか?
しかし、過去にも地球の汚染をきれいに掃除する、細菌は発見されている。1956年水俣湾は、世界最大の水銀公害といわれる水俣病が発生し、悲劇の海と化した。水俣湾には36年間、150トンとも言われるメチル水銀が流されていた。
県は、湾内に堆積した25ppm以上の高濃度の水銀ヘドロを14年かけて取り除き埋め立てた。では残りの水銀はどうなったのか?水俣湾の研究者である中村先生は、過酷な環境に適応して生きる細菌の中には水銀に耐えるものもあるはずと考え、ヘドロを採取し細菌を探し続けていた。
自然界の神秘
1983年、水俣湾の海底で独自に進化した驚異の細菌を発見。水銀に耐えるだけでなく、分解、帰化させる能力を持っていた。水銀耐性菌の一つ、わずか1ミクロンほどのシュードモナス菌は、自分たちの生存に不都合な水銀そのものを食べてしまう。そして、そのメチル水銀を、金属水銀とメタンガスに分解、吐き出す。分解されてできた金属水銀はやがて気化し、自然の水銀サイクルの中に組み込まれていく。
さらに驚くのはこの細菌はまったく違う種類の違う他の細菌にもコピーして伝達することができた。海の中では莫大な数の細菌たちがもくもくと水銀を分解し、海のお掃除をしていたのだ。そして役割を終えた耐性菌はその能力の元となる遺伝子を捨て去り、またもとの普通の菌に戻る。自然の浄化のメカニズムは神秘そのものだ。(「死の海からの復活」より)
この水俣湾の復活劇を見ると、原油流出を分解する細菌も信じられる。ただ海岸に多く見られるプラスチックゴミは、そう簡単に分解できる微生物はいないようだ。人間は取り返しのつかないプラスチック汚染を、今日も広げ続けているのだ。
参考HP 素敵な宇宙船地球号「死の海からの復活」
メチル水銀を水俣湾に流す 入口 紀男 日本評論社 このアイテムの詳細を見る |
海洋汚染 (災害とたたかう) ジェーン ウォーカー 偕成社 このアイテムの詳細を見る |