報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

アルカティリ前首相、オーストラリアを激しく非難

2006年07月08日 17時18分03秒 | ■東ティモール暴動
東ティモールでの反乱や暴動などの事態は、オーストラリアによって計画されたものであると、この1ヵ月ほど主張してきた。

オーストラリアの目的はティモール海の石油と天然ガスを略奪することだ。そのためには、東ティモールの政治を掌握する必要があり、その最初の段階が、マリ・アルカティリ首相の追い落としだ。そして、それは成功した。

この事態に対して、ほとんどすべてのメディアは、東ティモールの出来事は自然発生であり、内的な要因によって引き起こされたという見解を保っている。

いま、アルカティリ首相自身が、今回の彼の失脚は、オーストラリアによって計画されたものだと、オーストラリアの「シドニー・モーニング・ヘラルド紙」とのインタビューで語った。


私はタフがゆえに悪者にされた:アルカティリ
Lindsay Murdoch in Dili
July 6, 2006
東ティモールの辞任した首相、マリ・アルカティリは昨夜、オーストラリアを激しく非難した。メディアと「私を好まない」オーストラリア政府の何人かの大臣や役人が、彼を悪者にする企てをした、と発言した。

アルカティリ氏は「ヘラルド紙」対して、彼がティモール海に埋蔵された石油とガスに関して、頑強な交渉を行ったためにオーストラリアの標的にされたのだと信じている、と語った。

「オーストラリアの全てのメディアが、私を悪者にしようとしていたということに疑いの余地はない。それが真実だ」。先週、辞任することを強いられて以降、アルカティリ氏が、オーストラリアのジャーナリストのインタビューに答えるのはこれが最初だ。

「(標的にされたのは)なぜかって? 私は、タフな交渉者として彼らに知られていたからだ。オーストラリアの何人かの大臣と役人が私を嫌っているということに疑念の余地はない」

アルカティリ氏は、オーストラリアと東ティモール双方が彼の失脚で損をしたと言った。なぜなら、彼は、ティモール海のグレーターサンライズ鉱区の石油とガスの開発において、双方が当分の権益を得る交渉をキャンベラと行ってきたが、彼はこの410億ドルの契約を批准する議案を議会に提案するつもりだったからだ。

「すべてが元の木阿弥になった」、と彼は言った。

アルカティリ氏は彼の失脚を「(オーケストラのように)調和のとれた計略」だと描写した。

その計略の背後には誰がいると信じているのか、と問われて、彼は言った。誰かを告発する前に、まだしなければならないことが少しある、と。「いつかすべての真実が明らかになると、私は信じている」

彼の政治的意向について、彼ははじめて口を開いた。アルカティリ氏は、フレティリン党の事務総長に留まり、来年に予定された選挙を指導すると宣言した。フレティリン党は議会の過半数を保持し、全国的に最も党員が多い。

「選挙に勝つことが今の私の主任務である」、と彼は言った。「しかし、これは治安情勢のために非常に困難なものになるだろう。特に国の西部地域では、フレティリンのメンバーが、武装した者によって、いまだに脅迫されているからだ」

治安情勢が改善されなければ、「選挙を実施することは難しいかもしれない」とアルカティリ氏は言った。

もしフレティリンが勝つなら、彼が首相に再任されることがあるかどうかと尋ねられて、彼は言った:「それは党が決定することだ。私は党が私に依頼しないことを望んでいる。他の人物がなるべきだろう。我々がすべきことは、過去ではなく未来について考えることだ」

数日内に、ノーベル賞受賞者ジョゼ・ラモス・ホルタが、彼の代わりに指名されるという広範な推測について尋ねられると、アルカティリ氏は、コメントできないと言った。「フレティリンは、三つの違った宛名を書かれた三つの異なった荷物を梱包している・・・」と彼は言った。「いまこの国に必要なのは、選挙に至る和解である」

外務及び防衛大臣のラモス・オルタ氏はもはやフレティリンのメンバーではないが、この党を創設したメンバーである。

憲法によって、多数党であるフレティリンは首相を指名する権利を持っている。しかし被指名人は大統領によって承認されなくてはならない。ラモス・オルタ氏はシャナナ・グスマン大統領にごく近い同盟者である。

アルカティリ氏は、選挙の前に政治的ライバルを排除するために襲撃隊を編成しようとしたという主張について、この質問に答えることを断わった。彼は、襲撃隊に関するあらゆる情報を否定した。

前内務大臣ロジェリオ・ロバトは法廷において、国家警察の武器庫から略奪された高性能武器を与えられたと証言する襲撃隊に関する「完全な知識」を、アルカティリ氏は持っている、と主張した。ロバト氏はディリで自宅拘禁中である。

ディリに多少の安定が戻りつつあるので、ラモス・オルタ氏は”緑の廃棄物”からエネルギーを作り出すための1億ドルのプロジェクトについて、昨日アジアの投資家と会った。
I was demonised for being tough: Alkatiri
http://www.smh.com.au/news/world/i-was-demonised-for-being-tough-alkatiri/2006/07/05/1151779013612.html?from=rss



21世紀最初の国家の初内閣     2002年5月21日撮影

東ティモール報道 : 豪軍だけがクローズアップされる

2006年07月07日 17時16分40秒 | ■東ティモール暴動
少し前にも、似たような記事があったが、小さな反乱兵士のグループが、オーストラリア軍に武器を引き渡した。

東ティモール反乱兵、武器を引き渡す
Wednesday, July 5, 2006
グレノ、東ティモール(ロイター)-- 反乱兵のあるグループは、オーストラリアの平和維持軍に所持する武器を引き渡した。アジアの新国家は秩序回復に向っている。

反乱兵の小さなグループのリーダーであるアウグスト・アラウジョ中佐は、すべての(武装)集団に違法な武器を引き渡すよう促した。

彼のグループは、若干の武器とともに今週離脱した最新の反乱兵である。

「我々はこれ以上戦うつもりはなく、平和を支持したいということを、世界と東ティモールの人々に示したい」
East Timor rebels surrender guns
http://www.cnn.com/2006/WORLD/asiapcf/07/05/timor.weapons.reut/index.html?section=cnn_latest


こうした武器の引渡しというのは、はっきり言っていつも「茶番」だ。単なる演出だ。

99年の8月にも、併合派民兵と独立派ゲリラ・ファリンティルは、UNAMETが提言した武器引渡しに同意し、それぞれ大々的なセレモニーまで行われた。

しかし、引き渡されたのは、全体の何十分の一という量にすぎず、ほとんどは使い古されてもともと役に立たないようなポンコツ銃だった(セレモニー用に新しい物も少しは混じっていたと思うが)。この武装解除セレモニーの一週間後には、豊富な武器による民兵の容赦ない殺戮がはじまった。

記事中の反乱兵士のアラウジョ中佐のグループは、今週離脱して、はやくも平和のためと称してオーストラリア軍に武器を引き渡している。少々、不自然に感じる。

こうした反乱兵士の武器引渡しの報道は、オーストラリア軍の手柄のような印象を与える。

ピーター・コスグローブ将軍の、「オーストラリア軍の駐留は必然であり、それが東ティモールのためになる」という発言を、バックアップする一要素とも言える。オーストラリア軍は、存在するだけでなく、こうして具体的な成果をあげている、ということを示せる。

東ティモールには、ポルトガルやニュージーランド、マレーシアの警察部隊も派遣されているのに、なぜか、オーストラリア軍だけがクローズアップされる。

何としても東ティモールに駐留したい豪

2006年07月06日 17時40分23秒 | ■東ティモール暴動
マリ・アルカティリ首相が辞任し、東ティモールの政局をコントロールできそうなオーストラリア政府は、次に、オーストラリア軍の「正式な駐留」をめざしている。

現在の2000名の派兵は、あくまで暫定的な措置にすぎない。東ティモールの治安が安定してしまえば、撤退しなければならない。オーストラリア政府は、東ティモールが安定したとしても軍隊の駐留を続けたい。そのための布石をはじめている。

オーストラリア政府は、INTERFET(国際軍)の司令官として東ティモールに赴任した経験のあるピーター・コスグローブ将軍を使って、オーストラリア軍の東ティモール駐留がいかに必要であるかを訴えさせている。

東ティモールへの軍隊配備は「過剰」ではない、とコスグローブ
ABC Newsonline July 5, 2006
”マチェテ(大型のナタ)や棒で武装した暴徒の鎮圧に、オーストラリア軍を派遣することは過剰である”との見解に対して、前豪国防軍司令官ピーター・コスグローブ将軍は、これを否定した。

東ティモールでのバイオレンスのほとんどは、マチェテやガーデン・ツール、棒などで武装したギャングによって犯された。

しかし、コスグローブ将軍は、現状を平定するには、ヘリコプターや武装した軍隊が必要であると言う。

「当面必要なことは、住民がストリートバイオレンスに巻きこまれないように、ストリートギャングを排除することだ。それこそが、本当にいま必要なことだ。」

警察をもっと派遣すべきであるという提案は、実際的でないとコスグローブ将軍は言う。

「どこにそんなにたくさんの警官がいる?」

「我々は、これを簡単に実現できることだと見たがっているが、豪国内を見て見ればいい、何千という暴徒を相手にできるほどの警察官がいるかね」

6年前、東ティモールの民主国家への過渡期に、国際軍の指揮を執ったコスグローブ将軍は、紛争地域にはオーストラリア軍を派遣し続けるのが必然である、とみている。

「たとえ東ティモールが、安定し、豊かになり、民主的になり、成熟し、発展したとしても、我々が駐留するのは、それは、我々の責務であり、当然の役目である」

「我々は永遠の隣人である。我々は、友人に対して、この義務から離れるべきではない」
Cosgrove denies E Timor deployment 'overkill'
http://www.abc.net.au/news/newsitems/200607/s1678943.htm


ピーター・コスグローブ将軍は、1999年の東ティモールでの虐殺と破壊を阻止するINTERFETの司令官として、東ティモールに派遣された。

しかし、以前お伝えしたように、コスグローブ将軍が東ティモールでおこなった主な任務というのは、インドネシア国軍や民兵による虐殺の証拠(遺体を含む)を隠滅し、虐殺の規模をできるだけ小さく報告することだった。

そのようなコスグローブ将軍の言葉だということを考慮すれば、今回の発言はあまりにも見え透いている。

オーストラリア政府は、アルカティリ首相を追い落したことによって東ティモールの政治を掌握することに、ほぼ成功したと言っていい。

しかし、この先東ティモールの政局が思い通りに動くかというとそういう保障はない。その保障を得るためには武力ほど確かなものはない。東ティモールの政治を思い通りに操り、資源を略奪するためには、軍隊の駐留が絶対条件と言える。

コスグローブ将軍の発言は、オーストラリア軍駐留のための見え透いたコンセンサスづくりが目的と言える。

<参考記事>
99年9月、虐殺を放置したオーストラリア政府
http://blog.goo.ne.jp/leonlobo/e/45151f0fd3ddf096fd5cff316b4ffafc
続・99年9月、虐殺を放置したオーストラリア政府
http://blog.goo.ne.jp/leonlobo/e/86e87cecd7ddc415c7395b7b967bde0d
国連という玉手箱
http://blog.goo.ne.jp/leonlobo/e/9965b4328396ff49e95ccfef9dfbf44f

廃墟と化したディリ市内を歩く豪兵士   1999年12月撮影

東ティモール 写真

2006年07月05日 17時56分49秒 | ●東ティモール












Matebian山 標高2373m バカウ県            2003年撮影
東ティモールは、四国ほどの大きさだが、2000メートルを越える山もいくつかある。
最高峰はTatamailau山、2963m。

                ロスパロス市郊外         2004年撮影 
東ティモール東部のロスパロス市郊外には
広大な高原が広がっている。
気候も清涼で、とても赤道直下とは思えない。













                     早朝のロスパロス市中心部       2004年撮影
 
                    朝は、かなり冷え込み、霧がでることも多い。
                    ディリと違って車もほとんど走っていない。
                    同時に産業もほとんどなく、とても貧しい。





Timor-Lest 国連地図
http://www.un.org/Depts/Cartographic/map/profile/timoreg.pdf

東ティモール 小休止

2006年07月04日 20時05分03秒 | ●東ティモール
たまには、のどかな東ティモールの風景でもお楽しみください。














        ライス・フィールド Baucau近郊         2003年撮影

              ビーチ Dili        2003年撮影













                             落日 Dili          2003年撮影



東ティモールの最新情勢は、ラモス・ホルタ外相兼国防相が首相代行になり、これから、後任の首相が選出される。
首相は、与党政党が選出するので、本来与党の党員が首相に就任する。
しかし、国民の不信をかっている与党フレティリンから次期首相が選ばれると、また争乱が再燃する懸念がある。
おそらく、ラモス・ホルタ氏が後任首相に指名され、ひとまず事態は落ち着くことになるだろう。
筋書き通り、というところだろう。

問題は、来年の議会選挙だ。

東ティモール報道: 写真が伝えるメッセージ その2

2006年07月03日 17時41分49秒 | ■東ティモール暴動
報道写真というのはひとつの素材である。
撮影者は素材を提供するが、たいていの場合、自分で料理はしない。
料理をするのはデスクと呼ばれる人物だ。

次ぎの写真は、前回の一連の写真例とまったく同じような素材だ。
前回の写真例と入れ替えても、すべての記事が成立つ。

写真例:ロイター配信/ABC Net掲載
しかしこの写真のキャプションは、
大敵 : オーストラリアは、石油資源を得るために、この危機を引き起こした、と将軍は告発している。(写真:ロイター)

記事のタイトルは、
オーストラリアは東ティモールの敵、と将軍
http://www.abc.net.au/news/newsitems/200606/s1670775.htm

この記事は、前回の写真例を掲載した記事とは、まったく異質な内容なのだ。
オーストラリアは救世主ではなく、石油を略奪しようとしている敵なのだと、オーストラリアのメディアにしては大胆な記事だ。
しかし、ここで使われている「侵略軍」の写真は、他の記事とテレコになっても何の問題もない。
テレコになった瞬間、写真の持つメッセージは変わってしまう。
「侵略軍」から「救世主」に、早変わりしてしまう。

報道写真というのは、絶対的なメッセージを放っているわけではない。
タイトルとキャプション次第で、まったく逆のメッセージを持つこともある。
また、撮影者の意図とはまったく逆の意味に使われることもよくある。

写真は、そこに存在するものを撮影する。
存在しないものは絶対に撮影できない。
ある意味では、これほど確かなものはない。
しかし、その写真が放つメッセージというのは、容易に変化させることができる。

侵略者を救世主に見せることも可能なのだ。

東ティモール報道 : 写真が伝えるメッセージ

2006年07月01日 19時38分52秒 | ■東ティモール暴動
大手メディアが世界に配信する東ティモール関連の記事は、意図的に真実が覆い隠されている。同時に記事に添付されている写真にも、意図的なメッセージが込められている。

大手通信社が東ティモールの記事に添付している写真は画一的で変化に乏しい。画一的で変化に乏しいとは、アングルや構図のことではない。そこにこめられている「メッセージ」のことだ。

ロイター:http://www.alertnet.org/thenews/pictures/DIL03.htm

ロイター:http://www.alertnet.org/thenews/pictures/DIL03.htm

BBC:http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/5024390.stm

BBC:http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/5128744.stm

ABC:http://www.abc.net.au/news/newsitems/200606/s1674650.htm

SMH:http://www.smh.com.au/news/world/were-going-to-kill-you-all--mob-fans-flames-of-discontent/2006/06/28/1151174269546.html

一連の代表的な写真が伝える「メッセージ」は歴然としてる。
”事態は最悪だが、オーストラリアに任せておけば大丈夫”
”オーストラリア軍だけで十分やっていける”
東ティモールの危機を救出にやってきた、強く、逞しく、頼りになる、不屈のオーストラリア軍が表現されている。

そして、世界は本当にそう信じるだろう。
”オーストラリアにまかせておけば大丈夫”と。
そして、東ティモールは関心の外に置かれ、忘れられる。
あとは、オーストラリアが好きなように料理できる、ということだ。

現在、東ティモールにはオーストラリア軍以外にも、ポルトガルやマレーシアの警察部隊が駐留している。また、オーストラリア政府はさらなる警察部隊の派遣を国連に提唱しているが、INTERFET(東ティモール国際軍)の時のように指揮権はオーストラリア軍が握るだろう。


ちなみに、マリ・アルカティリ前首相の身辺を警備しているのも、オーストラリア軍のようだ。
これでは、もはや籠の鳥だ。
CNN:http://edition.cnn.com/2006/WORLD/asiapcf/06/29/timor.violence.ap