報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

東ティモール: ギャング団を操る勢力

2006年07月15日 18時52分07秒 | ■東ティモール暴動
東ティモールのディリ周辺では、いまだ7万人が非難生活を送っている。

僕が住んでいる町の人口が約8万人だ。その人口がまるまる難民となるところを想像するのはかなり難しい。8万人が難民になるだけでも、それは大事業だ。しかし、東ティモールでは、ほんの短期間の間に15万人が家を追われたのだ。

メディア上では、いともあっさり、東ティモールでは15万人が家を追われた、と表記されるが、そこには大変なエネルギーが投入されているはずだ。

恐怖に駆られた人々が、自主的に家から出てきたのではない。住民は、ギャング団の脅迫によって家を追いたてられたのだ。このギャング団なるものの組織力、統率力は並大抵ではないはずだ。言って見れば、準軍事組織的というべきか。

「明確なグループ群だった。それをギャング群と呼ぼう。彼らは、明らかにギャングの世界以外の人物によって、操られコーディネイトされていた。それは絶対に真実であると私は強く感じる」と将軍は言った。
The Age
"East Timor: the story we weren't told"
http://www.theage.com.au/news/opinion/the-story-we-werent-told/2006/07/09/1152383608905.html

ギャング団が、15万の住民を家から追い出しても何のメリットもないことは明らかだ。つまり、ギャング団は、報酬を得て、他者の命令に従って、住民を追いたてたと考えるのが合理的だ。ギャング団が法務省から、インドネシア国軍高官の訴追資料を略奪して何のメリットがある?また、オーストラリア軍は法務省から連絡を受けても何のアクションも起こしていない。

「東西対立」というのは、暴動をおこし、難民を発生させるために捏造されたダミーにしかすぎない。首相に就任したラモス・ホルタ氏は、「東西対立は、ディリ市内にあるだけだ」と発言した。実に都合のよい発言だ。自分が首相になったとたん、「東西対立」は些細な問題だと言い出した。彼も、この対立など最初からないことを知っていながら、アルカティリ首相追い落としに利用したのだ。

では、どういう勢力が、何の目的で、ギャング団を操縦して、住民を難民化させたのだろうか。まだ、それに対してはっきり記述されたものはない。

しかし、これまでの経緯から、導き出される答えはたったひとつだ。一番得をしたのは誰か。今回の東ティモールの出来事で、誰が得をするかは、もはや聞き飽きたと思う。

オーストラリアだ。

国際社会の大部分は、マリ・アルカティリとフレティリン政府にこの危機の責任を、素早く負わせた。国際メディアの中には、「政権の交代」を求める声さえある。外国勢力は、東ティモールの国内の争いと失敗を、操作し利用する強い位置を占めていることは明らかだ。
"STANDING BY EAST TIMOR"
Focus on the Global South
http://www.focusweb.org/content/view/939/


(暗殺隊に関する)以上の疑問点は、危機が始まって以降、首相を追い詰めようとしていたオーストラリアのメディアによって検証されることはなかった。それは、特に驚くべきことではない。彼ら特派員は、アルカティリを非難する(報道の)大合唱に圧倒され、(報道の)隊列を乱すことを恐れたのだ。
The Age
"East Timor: the story we weren't told"
http://www.theage.com.au/news/opinion/the-story-we-werent-told/2006/07/09/1152383608905.html

東ティモールで発生したあらゆる問題の責任は、欧米のメディアによって、すべてがアルカティリ首相にあるとされた。

しかもそれは、”非常に迅速に”、つまりろくに検証もされず、”非常に統率の取れた形で”、つまりメディアの一糸乱れぬ大合唱によって、行われた。あらかじめ、すべてのシナリオが書かれていたから、こういうことができるのだ。

オーストラリアは、このときのために、何年も前から大規模ギャング団を養成していたに違いない。15万人を家から追い出す作業というのは、急にそこらへんのギャング団を寄せ集めてできる仕事とは思えない。十分な構成員と確実な命令系統、そして十分な養成期間が必要だ。

僕が東ティモールを何年にもわたって取材して、毎回、とても不思議に思う集団がいくつもあった。全国規模の反政府団体、元ゲリラ兵士の団体、大規模な窃盗団、無数のマーシャルアーツ・グループの存在だ。2001年にはすでに存在していた。それは、時とともに規模を拡大し、数を増やしていった。

世界最貧国20の中に入る東ティモールで、構成員を食べさせることができるのだろうか。窃盗団が成立つほど盗むものがあるのだろうか。まだ、そこらじゅうに焼け跡が残る東ティモールでそんなことを考えた。

こうした団体は地方の住民を脅し、カネを巻き挙げ、恐怖をもってメンバーに引き入れていた。しかし、焼け跡の東ティモールで、恐喝や窃盗だけで、組織を維持するコストを賄うことはできないだろう。当時から、このコストを負担する勢力が存在すると考えていた。おおよその見当はついていたが、確信はなかった。

しかし、今回の不自然な暴動や15万の避難民の発生の過程を考えると、外国勢力に操作されている”ギャング団”と総称される統率のとれたグループは、かつて僕が見た反政府団体や窃盗団、マーシャルアーツ・グループに違いない。

そして、彼らを養成し操縦しているのは、オーストラリア以外に考えられない。
ただし、証拠はどこにもない。だから、誰もはっきりとは書かないのだ。
”外国の勢力”それが精一杯だ。
しかし、東ティモールを支配して誰が一番得をする?
オーストラリアと石油メジャーだ。

原油価格は、いずれ1バレル100ドルを越えるとも言われている。
いままで採算コストに見合わなかった北極圏でさえ、開発計画が始動した。
目の前のダーウィン沖に横たわる石油とガスの価値は日々上昇しているのだ。