報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

電通に頭の上がらないマスメディア

2005年11月29日 22時03分05秒 | ■メディア・リテラシー
僕は大学を出た直後の数年間、大阪で広告制作の仕事をしていた。たった二人の弱小事務所である。そこで、日がな一日、原稿用紙に向って広告文案や広告企画書を書いていた。広告界の末端に小指一本でぶら下がっていたわけだが、上を見上げると雲のかなたに垣間見えるのが広告代理店「電通」だった。

電通は、メディアの上に君臨する帝王である。電通は、日本全土のあらゆる広告媒体を支配していると言っても過言ではない。いや、広告だけではない。日本で開催されるオリンピックやサッカーのワールドカップ、各種博覧会、そして選挙まで取り仕切っている。電通は巨大な独占企業だ。

しかし、とりわけ重要なのは、本業の広告だ。電通は、日本の主要新聞、テレビ、雑誌に広告を配給することによって、全メディアの上に君臨している。電通のシェア自体は全体の25.7%だが、この数字以上の巨大な影響力を持っている。早い話が、電通の機嫌を損ねれば、メディアは広告をもらえなくなるのだ。広告というのは、メディアと広告主が直接に契約することはない。必ず広告代理店を経由しなければならない。

電通はシェアでは25.7%だが、たとえばテレビではゴールデンタイムなど主要な時間帯はすべて押さえている。新聞では五大紙すべて。そして主要な雑誌の広告スペースも電通がすべて掌握している。たとえば、どの新聞の何ページにどの企業の広告を載せるか、ということまで電通が事細かに決めている。もちろん、テレビCMも同じだ。メディアが、電通の提示する広告を拒否することは絶対にできない。広告スペースや時間帯は、電通の意のままなのだ。

電通は政界や官界、産業界とも深いつながりをもっている。電通の新卒採用というのは、ほとんどがコネ入社で、政官財の子息が毎年ぞくぞくと入社している。そのような電通の影響下にある日本のメディアが、産業界や企業の実態、政治家や官僚の実態を本気で暴くことはない。

新聞やテレビでは、スポンサー企業の不祥事が報道されることもまず考えられない。したがって、広告を頻繁に打てる大企業にとっては、広告はある種の保険とも言える。不祥事が起こっても、メディアは自主規制して守ってくれる。そんな事例は無数にある。ひとえに、電通から間断なく広告をまわしてもらうためだ。

日本のメディアというのは、このように広告収入を得るために、報道してもよいのはどこまでかを、とてもよくわきまえている。おまけに「記者クラブ」というギルドまで形成して、特権を享受しながら、強力な自主規制を布いている。メディアの公正中立、不偏不党というのは絵に描いた餅でしかない。

極端に言わせてもらえば、新聞など読む必要はないし、テレビ・ニュースを見る必要もない。そこにあるのは、どうでもよいことか、選別され、意図的に「加工」されたものばかりだ。もちろん、少しは役に立つものも、あるにはある。しかし、大衆紙や大衆雑誌の方が忌憚のないことを書いているかも知れない。

僕は、新聞も読まないし、テレビ・ニュースもほとんど見ない。ネットでざっと眺めるくらいだ。本当にわれわれに必要なニュースが毎日毎日あるわけがないのだ。





宣伝費でマスメディアを支配する影武者・電通の視えないタブー
http://mchd7w4hh.hp.infoseek.co.jp/html/dentsu_taboo.txt.htm

電通のシェアについて  投資家情報より
http://www.dentsu.co.jp/ir/kojin/dentsu2.html

書籍 『電通の正体』 週間金曜日刊
http://www.kinyobi.co.jp/MiscPages/syuppan

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
新聞などを読まなくなったこと。 (ナディヤ)
2005-11-30 00:31:48
私も10年以上前にパキスタン人と結婚してから、主人から聞く中東諸国やイスラーム、パレスチナ、テロ、その他様々なことがあまりにも日本での報道とかけ離れていることがだんだん分かり、新聞もテレビニュースもなんだか時間の無駄のような気がしてしまい、あまり見なくなってしまいました。
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メディアの信頼性 (Yegy)
2005-11-30 00:42:37
 信じられない話です。一企業がそこまでの力を持てるとは。メディアがそのように権力に歪められている可能性を僕は認めますが、しかし、僕は新聞やテレビをせいぜい70%は信頼したいと考えているのですが。
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ナディヤさんへ (中司)
2005-11-30 04:24:07
株でもニュースでも、たまーに見るくらいでちょうどいいと思っています。株もあまりにも毎日株価とにらめっこしているとわけが分からなくなると聞きます。ニュースも似たようなところがあるように思います。



あまりにも日々、とっぷり浸かりすぎていると、虚構が現実になり、現実が虚構になってしまうような、そんな危うさを感じます。



ある程度、距離を置いた方が、何事もよく見えるように思います。
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Yegyさんへ (中司)
2005-11-30 05:05:58
新聞やテレビで報じられていることが偽りというわけではないです。かといって、真実かというと、そうでもありません。

そのあたりがとても微妙なんです。ある意味、とても巧妙です。僕が「加工」という言葉を使うのはそのためです。



たとえて言えばスーパーの「和牛」と「国産牛肉」の違いのようなものです。どちらも日本の牛と勘違いしてしまいます。でも日本の牛は「和牛」だけです。「国産牛肉」とは、外国から連れてこられて、日本でお肉になった牛さんのことを言います。「国産」とは日本で加工されたという意味です。でも、明らかに消費者に勘違いさせるために、こうした言葉が使われています。そして、監督官庁もその言葉の使用を許しています。



こういうのはまだ、かわいい例ですが、期限切れの肉に、薬品をかけて赤みを付けるということまで行われています。スーパーの裏側は無法地帯です。

僕は、いまでは生協でしか買いものができないです。



ニュースもこれと似たようなことが日々行われていると思って間違いありません。裏側を知ると、もはやいっさい信用できません。スーパーの生鮮食品のように、見ただけでは見分けがつかないからです。



ですから、必要がない限り、僕は新聞を読みませんし、TV・ニュースもほとんど見ません。



そこにあるのは、「ウソ」ではありません。ただ、「加工」されてるんです。新聞、テレビの影響力はとても大きいです。ですから、国家としてはそれを好き勝手に運営させられないわけです。あらゆる国家は、メディアをコントロールします。コントロールしないと考える方が無理があります。本当に国民に必要な真実は、メディアでは絶対に報じられません。



でも、どこの社会でも、メディアというのは、一種の「権威」です。誰もが信用できるよりどころとして扱われます。ですから、「メディアを疑え」という僕の言葉にピンこない方は多いと思います。



しかし、「メディアを信じない」ということは、ものを考える上での大前提です。メディアに信用を置いている限り、正確な判断はできません。
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こんな記事がありました (コルシカ)
2005-12-02 16:21:17
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1519020/detail



数時間前までライブドアのアクセスランキングでも上位に来ていたのですが、今はトピックスにもランキングにものってないです。

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コルシカさんへ (中司)
2005-12-02 17:17:36
はじめまして。

タイムリーな情報をありがとうございます。



この記事中にもあるように、新聞やテレビというのは、非常に”不透明な組織”であるということです。自分たちに都合の悪いものはすべて非公開にしてしまう。そのくせ、他者には情報開示を求めるという、ダブルスタンダードの組織です。そのような組織は根本的に信用できません。



公取委が言うように、広告取引というのは「談合」です。新聞、テレビは土建業界の談合を糾弾する資格はないと言えます。



公取委がなぜ、この問題を取上げたのかというのは、非常に興味深いです。



いますぐには、何とも言えないですが、たいていの場合、日本で談合が問題にされるとき、そのあとに外国企業が入札に参入して来るようです。



将来的に、日本の広告業界に、外国企業が参入するための下地作りかもしれません。先の選挙では、民主党は外国の広告代理店に企画をまかせたようです。



わざわざご連絡をありがとうございました。
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