インスパイア

自然を通して心をみつめる。言葉をとおして人生を見つめる。

北鎌をやりました

2014-08-18 15:48:09 | Weblog
前から狙っていた北鎌を踏破することができました。
やるなら今年と、時機を見計らい、お盆決行を決めました。夜行バスも空席無しだったが何度かチェックするなかで空席をとることができた。
さわやか信州号は久しぶり、新宿の乗り場も駅前になっていた。でもやはり熟睡はできない。何度も寝ては醒めてはを繰り返し、朝、上高地に着くと雨。いきなり心が折れてしまう。

登山計画書には弱気のババ平泊、槍ヶ岳往復とつい書いてしまう。うだうだして出発も遅れ、モチベーションは上がらない。
雨はしとしと状態が続く。横尾から槍沢方面に進む。このコースは初めて。槍沢ロッジを過ぎる。
いろいんな選択肢を考えながら歩く。
できればとにかく北鎌沢出合に入り、明日の天候を見て決行か、あるいは水越乗越に戻って東鎌尾根を行く方法もある。
あるいは北鎌はやめて、今日は殺生ヒュッテまで行き、槍から穂高を縦走するとか、あるいは槍だけにするか。
帰りのバスチケットも購入済なので無駄にしないように時間も考えないといけない。

ババ平ではもうすでに多くのテントが張られている。前に進むつもりでいたのに、続々とテント場が埋まっていくのを見ると、もうここで泊ることにしよう、と瞬間的に妥協してしまう。雨も弱くなったのでいそいでテントを張り昼寝をする。

午後には雨はやみ、夕方から天候が回復している。
どうしようか、また悩む。北鎌をやるなら一日で槍を越えるのはぎりぎりだ。稜線上でビバーク地はたくさんあるから、行けるとこまで行くにしても、3日目のバスの時間に間に合うか?
テントをここに残して軽身で一周という手もあるが、あまりにリスクが高すぎる。

翌朝、空には星が見える。快晴、これは行くしかない! っと突入しました。
水俣乗越に6時着。数人が休んでいました。北鎌に行く人もいるのかなっ、でも乗越を降りていくのは自分だけのようでした。踏み出す瞬間、何とも言えぬ緊張感、周りの人の無言の視線を感じます。

ザレ、雪渓を過ぎると平坦な河原を行きます。砂には数人の足跡が。多分今朝ついたものでしょう。先行者がいるのが安心と励みになります。

出合で先行の3人パーティに会いました。出合もイメージとちょっと違います。手前に合流もあり、間違いそうになりました。

右俣分岐で水を汲み、3人Pを追い越して進みます。一旦枯れた水流もかなり上まで流れています。渓沿いに進めばさほど紛らわしいところはありません。最上部も中央の草付の踏み跡をたどると、あっけなくコルに着きました。

稜線上しばらくは踏み跡はしっかりしています。
独標が近づいてきました。前には二人パーティが二組と単独行者が見えます。

独標のかなり手前で右側に大きく下る巻道を進みます。これが今回の最大の失敗でした。
ルートは途中で消えてザレ場とハイマツ帯を無理やり進みます。引き返そうにもザレて戻れないでしょう。
前の方には先行者が見えますが、どういうルートを進んでいるのか不明です。
ルートなんてあって、無いようなもの、一つ間違えばザレ場を滑落、そのまま人知れず命を失うことでしょう。そう考えると、命を失うのはこんなに簡単なんだって、日常感覚と乖離した思いが湧きます。

とにかくハイマツにしがみついてよじ登り、稜線に戻りました。かなりの冷や汗ものでした。

独標もかなり大きく巻いてしまいました。女性2人Pが独標頂上にいるのが見えます。
でもピークはもういいやって感じです。

稜線を進みながらピークは右側に巻きます。今回は全般的に巻きすぎたようです。もっと稜線通しを心かけるべきでした。

稜線を進むと槍がだんだん大きくなっていくのが感動です。やや雲はありますが、天候はもってくれと祈る心境です。

巻き道で先行グループ(5人組)が立ち往生し引き返していました。ルートが消滅しているとのこと。
かすかですがルートはあり、自分はそこを進んでいきます。これで見えていた先行者を全員抜きました。

北鎌平までは巨岩の堆積地を高度を上げていきます。今朝からの行動時間は11時間になるが、気力体力は不思議に充実しています。

4時に北鎌平に到着。ここまでくれば一安心、大の字になって休憩しました。槍の穂先が見えます。穂先からこちらも見えているのでしょうか。

最後の登攀、所々あるスリングや鎖を手掛かりに上ります。ネットで見たチムニーとか、どこかわかりません。どこを登ってもOKです。

頂上の祠が見え、登り詰めます。午後5時でした。
頂上には10人くらい、でもほとんど自分には気が付かないようです。写真を撮ってた二人組と目があいましたが、北鎌を登ってきた偉業の意味をわかってない顔です。
拍手をかすかに期待していましたが、ちょっと残念です。

今回はピンポイント快晴という幸運と、なぜか体調が良くてうまくいきました。生きて帰れて良かったです。
静かな余韻に浸りながら次の目標を考えています。