興趣つきぬ日々

僅椒亭余白 (きんしょうてい よはく) の美酒・美味探訪 & 世相観察

湯と酒と人情を味わう旅・・福島県中通り2020 1

2020-11-03 | 散歩、時々旅

先週末、福島県の中通り南部、白河市、棚倉町、塙町、矢祭町へ、友人たちと一泊で行ってきました。

会津など福島県の「湯と酒と人情」を求めて巡る男ばかり4人の車旅。毎年秋に続けてきて、今年はなんと9年目になります。

今年はコロナ禍で、少しためらいましたが、過去8回の充実した旅の思い出に引きずられ、思い切って決行。
その心意気が天に通じたか、二日間とも絶好の秋日和に恵まれました。


友人の一人が運転する車で、浦和インターから東北道に入り、順調に白河インターに到着。
腹が減っては軍(いくさ)は出来ぬとばかりに、まずは白河市の「手打生蕎麦 花扇」で腹ごしらえ。(上の写真)

そのあと古代の関所、白河関跡(しらかわのせきあと)へ向かいました。

 

 

 

 

ここから入ったところが白河関跡。

白河関は、奈良時代、蝦夷(えみし)対策のため勿来(なこそ)関、念珠(ねず)関とともに奥羽の三大関門として設置されました。

古代、大和政権から異民族視されていた北の人々(蝦夷)の入りを、ここでチェックしていたのですね。

 

 


 

中に入ると、そこは背の高い木々におおわれた、ゆるやかな起伏の丘陵地でした。

上の写真は、「古関蹟の碑」。
江戸時代、西暦1800年、そのとき白河藩主だった松平定信が、ここが白河関のあった場所であることを正式に認定した、と書かれています。

 

 

 

従二位の杉。
鎌倉時代に植えられた推定樹齢800年、周囲約5メートルの巨木です。

木々の先からは周囲の平地を見晴らすことができます。展望が利くこと、それがここに関所を設けた理由だったのでしょうか。

ついでながら、白河関は平安後期以降は有名無実となり、「白河関」という言葉が歌枕(和歌に読み込まれる名所・旧跡)として残りました。

 

 

 

このあと中通り最南端の矢祭町まで行き、ここにある矢澤酒造店(清酒「南郷」の蔵元)を訪れました。
創業天保四年(1833年)の歴史のある蔵元です。

工場のわきにある事務所兼売店には、年配の品のいい男性と若い女性がいて、われわれの応対をしてくれました。

実は最近わたしは、ふだんの晩酌には「純米」でも「吟醸」でも「大吟醸」でもなく、普通の酒が最適なのではと思うにいたりました。
本醸造酒や普通酒には、飲み飽きしない美味しい酒が結構多いことを知るようになったからです。

そこで、ここ矢澤商店でも本醸造酒を注文し、上記の ‘ふだん酒談義’ をその男性の方にしてみたのです。

するとその方は「わが意を得たり!」とばかりに、「それならうちでは『佳撰(かせん)』がいいですよ」と言い、売店になかった本醸造酒を工場に取りに向かった女性を呼び戻し、本醸造酒でなく普通酒の「佳撰」を持ってくるように伝えました。

 

 

 

    

これがその「南郷」の普通酒「佳撰」(4合瓶)です。(帰宅後撮影)

値段は税込みで800円ほど。「南郷」銘柄の各種の酒のなかでいちばん安く、それでいて美味しく、地元の人々に最も愛されている酒なのだそうです。

「どんな蔵元の酒でも、その蔵の基本となる普通酒を飲んで、それが美味しければ、その蔵は本物なのですよ」
とその方は付けくわえました。

あとで知ったのですが、この方はこの蔵の前社長とのこと。少しでも高い酒を売りつけようというのでなく、醸造家としての哲学と誠意を語ってくれているのを感じました。

この「佳撰」まだ飲んでいませんが、開けるのが楽しみです。

 

 

 

 

次に向かったのは塙町の湯岐(ゆじまた)温泉、山形屋。ここの岩風呂に入るためです。

岩風呂は本棟とは別の、専用の建物の中にありました。(上の写真)
地元の日帰り入浴客も多いようです。

 

 

大きな岩の一部を湯船に取り込んでいます。そのそばの湯底が大きくくびれ、岩肌を足でなぞることができる。
遊び心のある、おもしろい作りです。

湯はやや温めながら、一時間でもゆっくり入っていたい気分にさせられる素朴な岩風呂でした。

 

 

    

このあと向かったのが今回の旅の宿、塙町の「谷川の湯(やかわのゆ)」。

ここはテレビの「ポツンと一軒家」で取り上げられたところです。里の集落から離れていて、車で行くのがほんとうに大変でした。

途中、狭い登り道が続き、下手をするとタイヤを踏み外して、ゴロっと谷側に車ごと落ちてしまいそう。
高い木々の重なっているところに来ると、まだ4時前なのに薄暗くなってしまいます。(後部座席から撮った写真がブレてしまっている)

でこぼこ道で車は大きくゆれる。道に落ちていた枯れ枝か、ガタンゴトンとときどき車の床に下からぶつかる音がする。

落ち葉が降り積もったところでは、ズルズルと車輪が空回りし、前に進まない。やっと動いたと思ったらまたすぐに空回り。

運転の友人は運転歴の長いベテランで、いわば運転の名人ですが、チラッと顔をうかがうと、これまで見たことがないほど真剣な表情です。

さて、このあとどうなったか。はたして無事宿にたどりつけたのか、この続きは後日アップする後半「湯と酒と人情を味わう旅・・福島県中通り2020 2」で・・・。

*写真協力 Y.T.氏