「余白の創作ことわざ」です。
見目を気にするより 表情に気を配れ みめをきにするより ひょうじょうにきをくばれ
<意味>
顔の印象を作り出しているのは、目鼻立ちや容貌(見目)より顔の表情によるところが大きい。顔の表情には無意識のうちに喜怒哀楽、自信や不安、心の構え、ときには人に対する好悪の情まで表れてしまう。顔立ちを気にするより、表情に気を配ったほうがよい。
<さらに一言>
先日の夕方、駅始発のバスに乗ろうとバス停に行くと、二人の女子高校生がすでに並んでいた。
見ると、二人ともおにぎりをほおばっている。家に帰って晩ごはんを食べるまでのつなぎなのであろう。バス停脇のコンビニで買ったようだ。
おもしろかったのは、二人ともわたしを見ると、等しくきまり悪そうな表情を浮かべたことである。
行儀の悪さを自覚した、恥じらいとも照れ笑いともつかぬ顔。それは、背格好も顔の造作も違う二人が、まったく同じ表情であった。
表情は顔の作りを超えるのである。
<もう一言>
このように、顔にはその人の心がそのまま映し出されてしまう。それだけに自分の心を日頃どう保つかが大切になる。
戦国武将・上杉謙信の残した家訓には、
一、心に誤りなき時は人を畏(おそ)れず (自分が正しければ堂々としていられる)
一、心に貪(むさぼ)りなき時は人に諂(へつら)うことなし (無欲であれば人におもねることもない)
一、心に我儘(わがまま)なき時は愛敬失わず (我をすっぱり捨て去れば気持ちも晴れる)
など、十六カ条にわたって心の持ち方を説いた文言がある。(「上杉謙信公 家訓十六カ条」、括弧内の訳は余白)
どれも現代を生きるわたしたちにも、そのまま役立ちそうなものばかりである。(ネットで検索できます)
また、精神科医であった大原健士郎氏は、「君が笑えばみんなが笑う。君が泣けば君一人で泣くのだ」という英国の女性詩人ヴァージニア・ウルフの言葉を引用して、このように述べている。
「・・立腹しても、泣きたいほど悲しくても、じっと我慢して笑顔で相手と接すると相手は安心して笑顔を作る。・・『君が笑えばみんなが笑う』ことを知れば、周囲の人たちにとって自分が、いかに重要な存在であるかが自覚できるはずである・・」(2004.2.29の日本経済新聞コラム「君が笑えば周りも」より)
笑顔には、周囲も自分も変えるほどの大きな力が秘められているのだ。
大原氏の文章に感銘を覚えたわたしは、この記事を切り抜いて今も手元に持っている。
<さらにもう一言>
「見目より心」(または「人は見目よりただ心」)ということわざがある。
ことわざ辞典の決定版で知恵の宝庫、『故事俗信 ことわざ大辞典・第二版』(北村孝一・監修/小学館)には、「人間は、顔かたちの美しさよりも、心の美しいことがたいせつである」とある。
つまり美しい心が根底にあれば、ちょっとした言葉にも、とっさの行動にも、そして顔の表情にも、本物の美しさが自然に表れ出るということなのだと思う。
2015.2.25