財務分析に使う時間として、私は1社当たり1分以内と言う目標を持っている。
勿論、財務諸表をそのまま分析する訳ではない。そんなの、1分以内なんて夢の話。30分あっても足りない。でも、生でなければどうだろうか?単なる数字の羅列ではなく、整然とした指標群だったらもっと分かりやすいんじゃないだろうか。
私の場合はエクセルをベースにマクロと関数で5年間分の財務情報を全部グラフ化している。コード入れれば勝手にグラフが出るようにして生産性を高めている。
飛行機コクピットの計器を想像してほしい。機長は機の状態が計器を通して一目でわかる。何か知りたい情報があれば、関連する計器を目で追う事で把握出来る。何故計器に落とし込まれているのか、それは、一目でわかるからだ。もし計器がなかったら機長は運行どころではなくなる。分厚い資料や機器を直接視認して現状を電卓で計算しなければなくなる。多大な時間が無駄になる。でも、そんな事はない。一目でわかる工夫が随所に張り巡らされているからだ。
一方、投資家は、いまだ財務諸表と言う旧式のシート形式に縛られている。一部ではこれらをグラフ化して表示するサイトもある事はあるが、質、量の面においてまだ不十分だ。飛行機を操縦するのにスピード計とガス残量計しかないようなものだ。他にも知らなければいけない情報がたくさんあるのに、至極単純な形でしか提供されていない、ユーザーフレンドリーじゃない。でも、使えるだけでもありがたいけど。
生の情報をそのままグラフにした所で得られる情報は少ない。本当に大事なのは絶対的な額の情報ではなく、相対率の情報であると言える。投資においては様々な経営指標や投資指標がある。これらをグラフ化出来ればかなりスムーズに分析が進む。経営指標だって無限にあるわけじゃない。せいぜい100指標位じゃないだろうか。良く使うものに限れば30指標程度まで落とせると思う。1グラフの内容を把握するのに2秒もかからないから、全体を把握するのに1分もいらなくなるだろう。1分以内であれば短期記憶の範疇だから全部頭に入れたまま思考出来る。仮に忘れても一瞬で再度把握できるから効率的に分析作業を進められる。だから1分。これ以上の時間はある種のロスだと言える。
視覚から得られる情報量は圧倒的だ。投資に際して必要な情報を目で追うだけで確認できれば、かなり短時間で包括的な分析ができる。それも、比較的長期にわたる財務情報であったらその移り変わりも確認できる。極力、脳みそを効率よく使う事を心がける。面倒な事、単純作業はCPUにやらせればいい。脳に負担の少ない仕組みで大量に情報を処理させる事がこれからの投資には必要ではないか。と言うか、意図せずとも、時代はその方向に流れていくんじゃないかと思う。
勿論、この分析はスクリーニング後に残った銘柄を再度細かくふるい落とす為のモノであって、この分析で残った企業をさらに定常分析で深く分析していく事になる。私はこの定常分析がすこぶる苦手なのでこの点が今後数年間の課題になりそうだ。。