二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2014 J2第39節 岡山vs京都

2014-11-01 | 蹴球

ファジアーノ岡山●2-3○京都サンガF.C.
            8'福村貴幸
            (assist大黒将志)
15'田所諒
33'押谷祐樹
            89'大黒将志
            (assist三平和司)
            90'+2大黒将志
            (assistドウグラス)

■終始背水の陣
 崖っぷちに追い込まれ、もはや1つの勝ち点すら落とせなくなった京都。しかも守備を支えていた酒井隆介と田森大己が出場停止。それならば、と背水の陣で「守りよりも攻め」をゲーム開始から貫いた。序盤岡山の動きが鈍かったこともあり、前から前から奪っては押し込み、大黒将志のヘディングシュートの跳ね返りを、その攻撃の起点になった福村貴幸が押し込んで先制。そのあとも攻めの姿勢を崩すことなく、攻勢をかけた。
 田所諒の同点弾は、内野貴志の足、石櫃洋祐の足に連続して当たってコースが変わるという京都にとってはアンラッキーなものだったが、その後岡山は適切な修正を施し、やたらと高い京都のディフェンスラインの裏に早くボールを入れて崩しにかかりはじめる。33分、福村の弱いクリアを拾った澤口雅彦が即座にラインの裏にクロスを送り込み、押谷祐樹が決めた形は狙い通り。ただ、ビハインドになっても京都はブレなかった。「点を奪うしかない、攻めるしかない」という背水の陣でラインを高く保ち続け、リスクを冒してでも攻勢に出続けるのだが、急ぎすぎて攻撃に緩急がなく一本調子でもあり、岡山からすればある意味凌ぎやすかったのかもしれない。

■不格好ながら
 後半から岡山は、今日の京都の出方をさらによく見極め、奪い所を定めて出足の速さを回復。球際を抑えることに成功する。即座に京都は伊藤優汰を投入し、ドウグラスと大黒の2トップに。これまで川勝監督は選手交代をしても布陣を変えることが少なかったため、少々意外な感じがしたが、結果的にこれはあまり効果的ではなかった。大黒の駆け引きするスペースにドウグラス目がけてロングボールを入れるもんだから、攻撃の組み立ては雑に。さらに立て続けに三平和司を入れて工藤浩平を中盤の底に下げたことで組み立てが長距離パス主体になり、攻撃の不格好さは際だった。
 それでも攻撃の姿勢を崩さなかったことに価値があった。内野・バヤリッツァは失点を恐れず高いラインを保つ。そこを衝かれて岡山に決定機を作られても致し方ないと割り切っていた。今までリスクを懸けることを極端に嫌っていた川勝サンガはリスクを抱えながらも虚仮の一念で不格好な攻撃を継続。たまらず岡山は自陣に引いたが、引きながらもカウンターを繰り出し、片山瑛一に2度3度と大きな決定機が訪れたり。
 そういうビビって怯みそうな展開でも京都は最終ラインを馬鹿みたいに高く保ち、どんな形でも良いから岡山ゴールへと迫った。同点弾は伊藤が奪ったCKから。一旦跳ね返されても工藤がとにかく中へと放り込み、三平が競って、大黒が決めた。守勢に回った岡山が逃げ切れるほど、サッカーは甘くなかった。

■劇的逆転ゴール
 アディショナルタイムの劇的逆転ゴールもやはりCKから。その前のCKを奪ったプレーは今季屈指のスピード感だった。石櫃がクリアしたボールを中盤で駒井が身体を上手く使って収めると、横谷との瞬間的なパス交換から前線を走る三平へ。三平がダイレクトで落としたボールは、駆け上がってきた伊藤がそのまま速いクロスへと変換し、三平が身体を投げ出すダイビングヘッド。これを岡山GK中林洋次が神がかり的なスーパーセーブで弾き出す。この一連のプレーには今年なかなか見ることのできなかった疾走感とスムーズな連携があり「奪い取る!攻め落とす!」という強い意志と、そのためのイメージの共有に満ちたものだった。それを左手一本で止めた中林も素晴らしい。ボールには絡まなかったが、一番前まで攻め上がっていた工藤も動きも秀逸だった。
 決着はそのプレーのCKから。この日終始競り勝っていたドウグラスが頭で落としたところを、獲物を狙って感覚を研ぎ澄ませていた大黒がゲット。このゲームで見せ続けてくれた青臭いまでの攻撃的な姿勢、気迫、リスクを恐れない勇気が、もう何試合か早く出せたならば、と思う。バランスを取りながら相手のミスを待つ安全運転で微笑むほど勝利の女神はお人好しじゃない。いずれにしろ、追いかける者は攻めるしかない。天運に見放されるまでは。


〈京右衛門的採点〉
オ  6.5 …2失点とも止めるのは難しい。クロスへの安定感があり、高いラインの裏もよくカバー。
石櫃 6.0 …とにかくクロスを上げ続ける。田所+押谷に負け気味だったが、どうにか奮闘。
内野 6.5 …高い位置で奪う、止める守備で一歩も退かず。細かいミスは帳消しにできる働き。
バヤリッツァ 6.5 …極端なまでに前で奪う守備を貫徹。裏は空けても長い足で何度もカット。
福村 6.0 …前への意識が先制点を生んだ。高い戦術眼を見せていたが、甘いクリアが失点に。
田中 5.5 …自重気味で動きは少なく穴は開けなかったが、凡ミスでのロストが目立った。
駒井 6.5 …CBのカバーからラストパス、敵陣での仕掛けまで攻守に大車輪の働き。挑む勇気はミスより尊し。
ドウグラス 6.5 …圧倒的な強さで制空権を握り、存在自体が脅威に。いびつな布陣で消えかけたが、最後に大仕事。
工藤 6.5 …運動量豊富なフリーランで攻撃の起点に。中盤の底に下がってもカバーにパスに存在感。
山瀬 6.0 …福村・工藤との連携でいい抜け出しを見せる。攻守に出来は悪くなく、交代は戦術的なもの。
大黒 7.0 …集中マークに遭って好機をモノにできなかったが、最後にわずかな隙を狙い撃つ2発。
---------
伊藤 6.0 …割と無理目のドリブルを仕掛けつつ、CKをたくさん奪う。CK奪った三平へのクロスは絶妙。
三平 6.5 …中に入って競るプレーを続け、1アシスト+逆転弾を生むダイビングヘッド。いい捨て石ぶり。
横谷 ――
---------
川勝監督 6.5 …終始攻勢を続けブレずに90分戦い通す。なりふり構わぬ布陣変更も、今までと別人のよう。