京都サンガF.C.○2-0●V・ファーレン長崎
46'三平和司
(assist――)
85'大黒将志
(PK)
■速さに後手
火山灰混じりの強風の風下という悪条件の前半、京都はまったくいいところがなかった。天候以上に苦しめられたのが長崎の好守の切り替えの速さ。ボールを奪えばよどみなく速く展開されるがままになってしまうのは、ちょうど10節の湘南戦と同じ構図。速い相手に対して主導権を簡単に渡してしまうのは理由があって、そこはスピードやアジリティに欠けるジャイロに原因があるとしか言いようがない。ジャイロがどうしても遅れを取るところをフォローしようと工藤浩平や中山博貴が守備に引っ張られがちになり、中盤の攻撃面で圧倒的に人数が足りなくなっている。なおかつ中盤に落ちてきて攻撃を繋ぐはずの横谷繁もスピードはなく、長崎にいいように回された一因に。今の陣形は非常にバランスはいいのだが、相手にガチャガチャとした速い展開を仕掛けられると、どうしても後手を踏んでしまう。これは今後の大きな課題。ただ、湘南戦のことを思えば、速いサッカーに対して何とか踏ん張りが利くようになったところに、成長は見て取れる。対策としてはジャイロより速いアンカーを見つけることだが…そういえばシーズン前は伊藤優汰のボランチとか試してたっけ?
■機転で先手
前節第12節のトリックFKを決めた男として、ユナイテッドキングダムを始め全世界から注目された男・石櫃洋祐。後半立ち上がりに猛然とボールを奪い取ってからスピードに乗ったままのアーリークロスを入れ、三平和司の先制点に繋げたプレーがこのゲームを決めたと言っても過言ではない。重要なのは相手の陣形が整う前に速いクロスを放り込んだことであり、そういった先手を討つ一撃が相手を慌てさせ、堅守・長崎を突き崩した。同じように相手が陣形を固める前に前線にボールを送ることを意識していたのが中山博貴で、跳ね返されたものの、65分に速くエリア内に配球したシーンなどは相手を慌てさせるのに十分だった。結局、対陣ゲームにおいては相手の陣形が整う前に何かアクションを起こすことが重要で、それは時に雑な攻めになってしまうが、この日は石櫃、中山、そして途中出場の山瀬功治などベテラン勢が前に速い機転あふれる揺さぶりを繰り出した。極めつけは工藤浩平から大黒将志への84分の縦ポン。割と繋いで崩そうとしていた接近戦を見せつつ、一発長い攻撃を繰り出した緩急の差が大黒のPK奪取に繋がった。もちろんこの場面では大黒の個の上手さも際立っていたのだが、長崎が散々縦ポンを繰り返しながらもアイデアを欠き、京都CB陣が上手く守っていたのとは、あまりにも対照的だった。
開幕前にバドゥ監督がインタビューで語っていた“チョット速ク”が、ようやく表現できるようになった感がある。ベテラン勢がチョット機転の利かせて、劣勢からでも先手を奪える術(すべ)を手にいれつつある。
〈京右衛門的採点〉
オ 7.0 …抜群の安定感でクロスをことごとくキャッチ。長崎のロングボール作戦を封じた。
石櫃 7.0 …奪い取って鋭いクロスから先制点の御膳立て。攻めの糸口を生み出した功績は大。
酒井 6.5 …縦に速い長崎の攻撃をよくパトロール。クロスへの対応もよく身体を張った。
バヤリッツァ 7.0 …灰が降っても集中力を切らすことなく水際で防ぐプレーを連発。
比嘉 6.5 …試合を追うごとに守備へのバランスが良くなった。後半危ないシーンによく対応。
ジャイロ 5.5 …前半は長崎のスピードに対応できず。局面での守備は良いが、ミスパスが目立ちすぎ。
工藤 6.0 …前半はプレスがかからず。相手が間延びするや効果的なパスを入れ、大黒のPK奪取を演出。
中山 6.5 …守備面で球際によく顔を出したファイター。後半は攻撃にもよく参加できるようになった。
三平 6.5 …見事な先制ボレー。大黒の衛星役+好守の繋ぎ役の働きも地味ながら良。
大黒 6.5 …苦しい時間帯も単独で駆け引きしながら攻撃の起点に。山瀬からのどフリー外した後にPK奪取。
横谷 5.5 …前半は運動力の乏しさが目立つ。後半は起点になりかけたが、細かいミス目立つ。
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山瀬 6.0 …長崎が間延びしたスペースを上手く使う。球捌きにもキレがあり、途中投入に活路あり。
駒井 ――
有田 ――
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バドゥ監督 6.0 …前半は押しまくられたが、後半から目に見えて良化。横谷→山瀬の交代は適切。