京都サンガF.C.○4-1●カマタマーレ讃岐
19'大黒将志
(assist工藤浩平)
22'三平和司
(assist石櫃洋祐)
54'大黒将志
(PK)
59'三平和司
(assist――)
90+1'岡村和哉
■首途(かどで)
1週間で2試合を行うGW過密日程。J2の中でも選手層が飛び抜けて薄いカマタマーレ讃岐は、この試合5人をターンオーバー。この試合は捨てて、次節に必勝を期す…つまりまぁ、そんな相手だった。個人技術も連携面でもガクンと落ちる相手に、京都は前節の手痛い大敗を受けて、人も布陣も変革して出直しの構え。大きく変わった部分はジャイロ(アンカー)―中山博貴(セントラルMF)―工藤浩平(セントラルMF)という中盤のところで、このトライアングルの距離感は、おそらく中山や工藤がよく慣れているだろうコンパクトさがあり、奪う→球出しまでが実に順調だった。さらには相手のプレッシャーも弱いため、パス配球を吟味する余裕があった。この中盤を核として横谷繁や石櫃洋祐が絡みながら攻撃を組み立てて、最後のにフィニッシャーとして大黒将志と三平和司が待ち構えるというのが、サンガ変革バージョンの姿である。変革バージョンというより、昔よく観た形だなーと思える回帰バージョンかもしれない。
ただ、やはり相手が相手だっただけに、これが本当に芯のある相手にも有効なのかどうかは次節が試金石。新バージョンの首途の戦いとして、自信をたっぷり付けられる相手に巡り会えたのは幸運であった。
■戦術の犠牲力・横谷繁
新バージョンを語る上で欠かせないのが、チャラい風貌の彼だ。一見、周りに貢がせておいしい所をサクっとゲットする、そんな王様っぽさも漂わせるのだが、ピッチの上にいる横谷は、とにかく痛い思いをすることを好み、ユニフォームを泥だらけにすることを好む。敵が嫌がる場所に現れては、ボールを保持し、倒されるまで粘りつづける。横谷は他人のために身を捧げることが好きで好きでたまらないらしい。どんな組織であれ、こういった犠牲になれる者が一人いれば、周囲は随分楽になる。横谷が戦術のためにあえて潰されに行って橋頭堡を築くのは、去年の大木サッカーの屋台骨でもあった。
今までのバドゥサッカーでは横谷のような形で犠牲になれる者を構想外としており、攻めは単調化・偶発化していた。周囲の穴を埋めるために犠牲となっていたという意味では山瀬功治が戦術の犠牲者なのだが、意味合いはまったく逆。横谷は潰されれば潰されるほどチームが活性化し、ひいては自らの力を最大限に発揮できる。去年まで大きな武器だったこの横谷の犠牲力を活かす方向に切り替えたのが、選手たちの意見なのか、コーチなのか、監督の判断なのかはうかがい知れないが、ようやく「今いる選手の持ち味を活かす」という方向に変化したことはポジティブな変化。横谷自身思うところもたくさんあったのだと思うし、自負もあっただろう。その自負を全部吐きだしたようなゲームだった。
〈京右衛門的採点〉
オ 6.5 …シュートを未然に防ぐ抜群の飛び出し。チーム全体の気が抜けた時間帯に失点。
石櫃 6.0 …三平1点目のクロスは真骨頂の精度とスピード。守備面ではやや精彩を欠く面も。
酒井 6.5 …スピード勝負でアンドレアに負けず。急造のジャイロとのコンビも良かったが、最後タルんだ。
バヤリッツァ 6.0 …讃岐攻撃陣では歯が立たない壁となったが、一瞬の隙を作ってしまう場面も。
比嘉 6.5 …球際では競り負けることなく、終盤も続く運動量とスピード。いいクロスはなし。
ジャイロ 7.0 …散らしを含めたアンカーとして出色の出来の上、CBも本職相応の落ち着きと安定感。
工藤 6.5 …豊富な運動量でバランスを取り続ける。奪って即ラストパスの先制点アシストは去年を彷彿。
中山 6.5 …工藤と気心の知れたコンビネーションで中盤を支配。気の利いたプレーがアクセントになった。
三平 7.0 …点で合わせる強みをようやく発揮。右サイドから中に入り込むやり方はまさに水を得た魚。
大黒 7.0 …相手を手玉に取るような動き出しで讃岐DFを混乱の渦中に。1点目のループは感覚の成せる技。
横谷 7.0 …相手と競ることを厭わず、潰されながらチャンスを広げる献身性はチームを一歩前進させた。
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山瀬 5.5 …走るプレーはともかく、パスやシュートがイメージとは違う方向に飛ぶあたり、まだもう少し。
下畠 6.0 …守備では石櫃以上の粘り強さを見せたが、攻撃面ではあまりインパクトを残せず。
宮吉 5.5 …相手と競り合いながらチャンスを狙ったが、シュートを決めることはできず。
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バドゥ監督 6.0 …人も布陣も代えて大勝。相手関係が変わる次節に真価が問われる。