京都サンガF.C.●0-1○ザスパ草津
21'遠藤敬佑
■試される総合力
サッカーの1試合は90分だが、1シーズンは(今年のJ2の場合)8ヶ月。その間に出場停止もあれば、怪我もある。調子のいい時もあれば、悪いこともある。シーズン通しての結果を左右するのは長期にわたるマネジメントなのだ。
そういう意味で、このチームの最も欠けざるピース・宮吉拓実と、それに準ずるピース・チョンウヨンを欠いてしまったこの試合は、チームの今シーズンの総合力を占う試金石になると思って、キックオフの時間を待った。実を言えば、割と期待していた。がしかし、その二人の存在の大きさを身につまされるのである。
前節に続き今節もまた、選手間の距離は遠かった。ただし、前節よりもさらに悪いことには、原一樹という「フェルナンド(=大木監督曰くの“点獲りマシーン”)」がいるがゆえ、前線に待機しながら一発を狙うフェルナンドめがけての一発狙いのパスに終始し、それがゆえにチームのバランスを崩してしまったことだ。ショートパスを連続させた場面(たとえば、工藤浩平→安藤淳の突破)とは異なり、原狙いになってしまうと、原が“最終兵器フェルナンド”ゆえに、その先はもうない。おまけに相方になっている長沢はほぼスルー状態だ。後半になって幾分長沢が絡むようになったが、監督は原を残して長沢を下げた。いや、長沢は下げられておかしくないほど機能していなかった。がしかし、それはチームとして長沢を歯車の一つとして機能させられず、原というちょっぴり特異な才能を持つフィニッシャー頼みになってしまったということでもある。
■球際で勝負しないことには
後半になって投入されたのは、駒井、伊藤という去年ユースから昇格した2人。この2人は、「このボールどっちかな?」というイーブンのルーズボールを激しく追い、相手より一瞬でも速くボールに触れて何とかしようという気概が見えた。逆に言えば、途中投入された2人以外はそういった「球際」の意識が欠けていたということになる。
もう、戦術云々ではない。中盤より前でしっかり球際で勝負にいく選手がいなければ、このサッカーは成り立たないのだ。宮吉がいる時は、宮吉がそれをやってくれていた。だけども今日は、イーブンな球際をモノにできないから、中盤で走り負けてセカンドボールを拾われ、主導権を握られる。その根源的な原因は選手間の距離の遠さかもしれないが、ごく単純に相手よりも一秒でも速く足を伸ばす意識なのだということを、駒井や伊藤、この日いなかった宮吉が教えてくれた。
高い位置でキープできない、ボールを持っても味方を追い越していく動きがすくないから、次の攻撃への選択肢が限られてミスパスを犯す…。全ては負のスパイラルから相手に主導権を握られただけ。攻撃の時間が短ければ、守りはそりゃ破綻するさ。きれいな青空の絵を描こうとする時に、絶対必要な青の絵の具がない時に、どうやって絵を描けばいいのか?大木監督は今、そういう岐路に立たされているのかもしれない。
〈京右衛門的採点〉
水谷 5.5 …それほど活躍の場はなかったが…。失点シーンの弾き方を責めるのは酷か。
安藤 5.5 …あまり前に出れなかったが、いいシュートもあった。
秋本 5.5 …大過はなく無難に対応したものの、一抹の物足りなさも。
バヤリッツァ 6.0 …終始落ち着いてはね返し、最後は攻撃にも出た。
福村 6.0 …守備に安定感あり、攻撃にも積極的だった。
中山 5.5 …アンカーとして奮闘するも、攻撃的な「良さ」はあまり出せなかった。
内藤 4.5 …ミスパスが目立った上に運動量も積極性も足りなかった。
工藤 5.5 …数少ないチャンスを演出したが、こちらも運動量が少なかった。
中村 5.0 …動きが少なく、追い越す場面もわずか。イチかバチかのパスだけでは…。
長沢 5.0 …前半はボールに関与できず、後半は絡みはじめたところで交代。存在感なし。
原 5.0 …独力でチャンスを生んでは潰す。その存在感はチーム全体を狂わせた。
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駒井 6.0 …ボールへの執念をみせ、局面を打開しようと「宮吉役」を演じてみせた。
伊藤 5.5 …チャレンジの姿勢は◎。ただし、草津は伊藤をしっかり対策していた。
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大木監督 4.5 …苦しい台所事情だが、目指すべきサッカーからブレているのでは?