二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2012 J2第17節 富山vs京都

2012-06-02 | 蹴球

カターレ富山△1-1△京都サンガF.C.
10'黒部光昭
         43'中村充孝(P)

■似たもの同士
 大木武と安間貴義。ヴァンフォーレ甲府時代に監督とコーチという師弟関係であり、どちらもマルセロ・ビエルサの“マニア”だという似たもの同士。志向するサッカーも相通ずるものがあり、フォーメーションの配置こそ違うが、ボールサイドに密集して、人数をかけてボールを囲み、奪ったら即攻撃に転じるという哲学はまったく同じ。この試合の前半、その「囲い込み」で優位に立ったのは安間の方だった。
 ところで安間氏、甲府時代は大木監督の下でスカウティングを担当していた。2005年の最終節で、京都のリカルドのボールの持ち方を暴き、リカルドからボールを奪いまくり、まんまと当時J2最強だった柱谷京都をハメてしまって入替戦に進出したのを思い出す。今回、安間が導き出したのは“福村封じ”。ここ最近の京都の連勝の隠れた立役者になっていた福村貴幸が上がろうすれば囲い込み、その推進力を寸断する。右の安藤淳についても同様で、サイド側からのプレスは特に入念に、京都の攻め手を奪ってみせた。結果、プレスは富山が常に先手を打ち、黒部光昭がミスを逃さず先制点を奪い、終始富山ペースかと思われた前半。最後の最後に、その流れを断ち切ったのは右の安藤淳だった。

■サッカーに判定はない
 ずっと後手を踏んでいた右サイド・安藤淳が相手の前に出るや、局面は一気に打開した。安藤の攻め上がりから“違いをつくる男”中村充孝のPK獲得を生み、後半になると終始右を崩し、右から攻め、右からチャンスを生んだ。後半になるとあれだけ機能していた富山の「密集しての囲み」も効かなくなってしまい、もはや彼我の差は歴然といった具合。もしもサッカーが判定競技なら、京都のTKO勝ちだ。しかし、最後に決めきれない。ゲームの流れを手にし、ボールをポゼッションし、シュートまで容易に持ち込める。それでも決まらない。こぼれ球をひろって再度攻撃に入れる。それでも決まらない…。サッカーに判定の要素はないのだから、ゴールが決まらないならばもう仕方ない。富山がそれだけ最後のところで踏ん張ったとも言えるし、京都の決定力不足とも言える。
 負傷によりサヌがどうやら戦線離脱濃厚になってしまった今、最後にゴールを決めきる人の出現が待たれる。例えばそれを、不調をかこっている18歳の若者に託すのは少し酷かもしれない。「だったら俺が決めてやる」って長身FWが名乗り出てもいい。苦しい時に救世主を生み出す土壌があるかどうかは、チームの総合力だ。決して運ではない。

〈京右衛門的採点〉
水谷 6.5 …終了間際の富山決定的場面を抑えるプレーは神降臨モード。
安藤 6.0 …押し込まれていたが、果敢に上がって形勢逆転。ゲームのキーマンになった。
秋本 5.0 …安易なパスが失点の起点に。不安定なプレーが多かった。
バヤリツァ 7.0 …どれだけ入れられても安心安全の鉄壁っぷり。
福村 5.5 …サイドで後手を踏み、攻撃に参加する場面少なく持ち味発揮できず。
倉貫 5.5 …失点につながるミス。ウヨンとのコンビもイマイチで軽い碇になってしまった。
チョンウヨン 5.5 …ボールは持てるのに相手に脅威なプレーできず。プレスキックの精度も×。
工藤 6.5 …陰に日向に走って、後半は猛攻の発火点となる働きぶり。
中村 6.5 …独自のリズムがいい意味での異分子に。彼のキレの良さをもっと生かしたかった。
サヌ 5.5 …終始持ち味が消され気味な中、孤軍奮闘したが、負傷交代…。無念。
宮吉 5.0 …チャンスの場面でミスを連発。肝心な所でブレーキになってしまった。
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 原 6.0 …思い切りの良さでゴールを脅かす。単騎突破の怖さはあった。
駒井 5.5 …期待された宮吉の役割は果たせず。惜しいシュートもあったが。
内藤 6.0 …短い時間でも持ち味を出し、チャンスを生み出した。もっと長く見たかった。

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大木監督 5.5 …ゲーム全体の出来は悪くなかったが、勝ち点があと2つ足りなかった結果が全て。