京都サンガF.C.△2-2△モンテディオ山形
09'宮吉拓実
45'中島裕希
56'宮吉拓実
88'石川竜也
■右を制圧してたものの
ザックジャパンの最終予選にユーロ2012開幕…代表戦花盛りでもJ2に中断はない。そして推定1億3千万人が大注目したとの噂もあるJ2首位攻防戦。“サイドを使いたい”首位山形と“逆サイドを使わせたくない”2位京都。握りたい主導権の在処が対照的な両チームの対決だったが、序盤は京都の方がペースを掴めていた。イニシアチブを生んだのは右サイドの安藤淳で、前に前に圧力をかけることで右を攻撃の足がかりにした。
となると、当然京都の左は手薄になる。宮吉拓実の珍しいヘディングゴールで先制を許した山形が狙う「オイシイ場所」はここだった。長いボールを最終ラインの左裏めがけて放り込み、右に体重を乗せている京都をスコンと足払いして倒しにかかる。おまけに左SB黄大城の対応も不安定。これは左から崩れちゃいそう…という雰囲気に漂う前半終了間際、崩れたのは左でなく右からだった。何人かが横断歩道を渡る園児のようにオフサイドをアピールして手を挙げた隙を衝くかのように山形の「人が沸き出す」ボールへの連続アタック。首位にいるチームの執念と2位に甘んじるチームの脆さを見た。
■生死を分ける場面
風雲急を告げるように、あがっていた雨が再び降り注ぎ始めた後半は、両チームが主導権を激しく争い攻守を目まぐるしく入れ替える激戦になった。お互いに隙あらば相手の懐に入って刃を突きつけていくようなスリリングな展開。宮吉が“忍び”のようにスルスルっと裏を抜けて追加点を決めたものの、京都は「ゲーム」を自分たちの手中に収めることができなかった。勝ち越しによって攻撃への積極性を失われ、相手を受ける側に回ってしまい、このゲームのバランスを大きく変えてしまったのだ。山形のチャンスはギリギリの所で守護神・水谷雄一やCB福村貴幸が食い止めていたが、こういう情況で“やるかやられるか”というのが、生死を分けるものなのだろう。
セットプレーからの一刺し。いつか見た、いや、いつも見てきたその風景。精神的にも肉体的にもギリギリの状態にありながら、リフレクトしたボールをしっかり足にミートした山形の石川竜也を褒めるべきだろう。あれは並の選手なら力んで枠を外していたに違いない。山形が首位にいる理由がよくわかるシーンだった。
勝ち越しても一歩も引かず、攻撃的な姿勢を保ち続けられなければ、勝利の美酒にはありつけない。これが、W杯アジア最終予選やユーロよりも厳しく辛いと噂されるイバラのJ2戦線なのだ。立ち止まっては、ならない。
〈京右衛門的採点〉
水谷 6.0 …大ピンチを救うセーブを連発。最終ラインとの連携は課題。
安藤 6.0 …攻守によく効き、右サイドを京都の主戦場にした。
秋本 5.0 …セルフジャッジで足を止めたり、あっさり裏を取られたり…。
福村 6.0 …左サイドまで含めて、カバーリングを引き受けた。
黄 4.5 …終始左を破り続けられ、ボールへの寄せも甘かった。
チョンウヨン 5.5 …アシストや絶妙なカットなど躍動するも、ズルズル下がる場面も。
駒井 5.5 …とにかくよくボールを追い回し、チャレンジする姿勢は見せたが。
工藤 5.5 …劣勢の左で守備に追われ気味だったが、ボールに絡めばチャンスを生んだ。
中村 5.5 …前へボールを運んだものの、残念なパスミスも目立つ。
久保 5.5 …チャンスは多く作れた。あとは決定機をモノにできるかどうか。
宮吉 6.5 …終始闘志を見せ、2得点に顔面ブロックに大活躍。
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内藤 5.5 …よく走ってボールを拾ったが、その先につながらなかった。
長沢 5.0 …ボールを収めきれず、ゲームに上手く入れなかった。
原 ――
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大木監督 5.0 …長沢の投入→交代など采配は迷走。戦局の掌握に失敗した。