京都サンガF.C.○1-0●東京ヴェルディ
81'原一樹
■守備のチーム
今節開始時点で3位vs2位の上位対決、かつ、昇格ライバル同士の戦いとなった注目の一戦。お互い球際への寄せが速く、軽率なミスをすることもなく、“鍔迫り合い”のように非常に締まったゲームが進行していった。こういうタイトなゲームは、お互いの頑張りにより派手なゴール前のシーンにつながらず、シュート数とかCK数とか、「地味」なスタッツを弾き出してしまう。けれども、危機に至るまでにきっちり手を打っているって意味で守備目線から見れば、随分といいサッカーをしているってことなのだ。テクニシャン揃いのヴェルディ攻撃陣がボールを持てば、CBの染谷悠太や福村貴幸が早めに潰しに行く。留守になったところをチョンウヨンが埋める…。流動的かつ能動的な守備は東京Vを自由にさせなかった。それでも人間はミスをする。染谷も福村もウヨンも、ミスはあった。ミスをしたなら、誰かがカバーすればいい。どうしようもない時は、最後の砦は守護神・水谷。そういえば今年のサンガ、流れの中から崩されて失点するシーンが少ない。意外なことに守備が安心して見れるチームになっている。セットプレー以外は…。
■カギは右翼
西京極の北スタンドの背後は、毎年桜が素晴らしい。ちょうど桜が咲くタイミングでホームゲームというのも滅多にないが、今年は15日に至ってもまだ咲き誇り、メインスタンドからの眺めは非常に美しかった。しかしゲームの方は陽気に花見気分…ともいかず。相手のごく小さな綻びを見つけては、少しずつこじ開けていくしかないような展開だった。
ゲームが進むにつれ、「あること」が目立ちはじめた。お互い右翼が押し込み、左翼が押されているのだ。ヴェルディは右サイドの西紀寛・森勇介が優位で、京都の左、黄大城も工藤浩平も守備に追われる時間が長くなっていた。一方、京都も右の安藤淳が前線によく顔を出すようになり、何度かクロスを上げるが精度を欠いた。右翼の攻勢、左翼の劣勢。ここで大木監督は「左翼の劣勢を立て直す」のではなく、「右翼の攻勢を強める」というメッセージを込め、伊藤優汰を送り出す。采配が勝負の分岐点になった。右の攻勢からゲームの流れは京都に傾き、“ショートタイムゴーラー”原一樹の一撃を生み、相変わらず粘り強い守備で虎の子を守りきる。うーん玄人好みだ。玄人好みのサッカーを見せてくれた。派手に点が動くゲームは無条件に面白いが、こういうシビアな戦いに酔いしれるのもまた、いいものだ。
〈京右衛門的採点〉
水谷 7.0 …神がかりセーブと鼓舞で無失点に大きく貢献。神。
安藤 6.0 …積極的に上がり、右サイドで優位を生む。クロスが…。
染谷 6.5 …適切で冷静な対応でほぼ安心の出来。バックパスが危なかったけど。
福村 7.0 …クイックネスを堅守に生かし、大きな相手も自由にさせなかった。
黄 6.0 …西の攻勢に手を焼き守備に追われたが、よく守り抜いた。
チョンウヨン 6.5 …動きが良く、危険な場所、いてほしい場所に顔を出す。
中村 5.5 …テクニックの上手さは見せたが、パスミスが目立ち、決定的な仕事できず。
工藤 5.5 …守備に追われるが、シュートに絡んだが精度も欠く。終盤に良くなった。
中山 6.0 …攻撃面でいい絡みはなかったが、速いプレスをかけ続けた。ボランチもOK。
長沢 6.0 …前線で身体を張って、ボールを収め続けた。実を結ばなかったが、大事な事。
宮吉 6.0 …右に左に表に裏に走り回って相手を攪乱。アシストを含め、キレはあった。
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伊藤 6.5 …思い切った仕掛けとドリブルで相手左翼をパニックに陥れた。
原 7.0 …チャンスを確実にモノにする決定力に、スタジアムは心は鷲づかみ。
駒井 ――
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大木監督 6.0 …メッセージが伝わった選手交代。強豪を自由にさせなかった。