二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2015明治安田生命J2リーグ第27節 京都vs札幌

2015-08-02 | 蹴球

京都サンガF.C.○2-0●コンサドーレ札幌
57'宮吉拓実
(↑駒井善成)
62'有田光希
(↑宮吉拓実)


[警告・退場]
・京都
44'伊藤優汰(C1)

・札幌
54'前貴之(C2)


【全体の印象】
気温33.6℃は今季J1J2で最高(デーゲーム含めればJ3の相模原-山口が最高)。ちなみに18時の気温は36.2℃(京都地方気象台発表)。酷暑の前半は互いに動きは重く、特に札幌が長いパスを使ってボールを動かしてきたため京都は受けに回りがちだった。後半から京都は出足がよくなり、駒井・伊藤が中に絞ることでパスコースも増え、主導権を握った。石櫃のロングスローから生まれたチャンスから宮吉のヘッドで先制すると、菅沼のフィードを宮吉が競って有田がミドルレンジからスーパーゴールで追加点。酷暑の中さらに動きが鈍化した札幌に対し、京都は最後まで走りきって勝利をもぎ取った。


【雑感】
■不動の2トップ
 結果的にみれば、前半で体力をセーブしつつ、後半から運動量を上げて勝ちきった展開。ただ、監督のハーフタイムコメントなどを読めば、意図的にオーガナイズされた「自重」ではなかったのかもしれない。プレーする選手側には前節序盤から体力を消耗し走れなくなった反省もあっただろう。全体的に動きが重かった前半だったが、宮吉のチェイスはキレがあった。
 このゲームの宮吉がそうであったように、石丸監督のサッカーはFWが前線から追い込んでいく守備がカギになる。宮吉・有田がプレッシャーをかけ、相手が逃げのパスを出せば原川・田森のところで回収し、すぐさま伊藤・駒井の両サイドを使って反転攻勢に出る。ざっくりとした石丸サッカーの骨組みはこんな感じだろうか。
 2トップに注目すると、守備から攻撃へとフェーズが切り替わった瞬間に、彼らは「スペースへボールを引き出す」「シンプルに受ける体勢に入る」「相手DFを抑えて基点を確保する」「囮になってスペースを作る」…などなど、さまざまな選択肢を作ってチャンスメイクに入る。宮吉の働きぶりはオールマイティで、かつての「裏抜け狙い」一辺倒な姿はもうそこにはない。有田は動きながら基点を確保するのが得意なタイプで、「有田が競ってこぼれボールを駒井が拾ってシュート」というシーンがこの試合でも目に付いた。
 守備面での献身性と、攻撃時のチャンスメイクという石丸サッカーで求められる役割をしっかりこなす宮吉・有田の2トップは、もはや不動ともいえる存在感。あとはそこに、駒井や伊藤、佐々木、原川ら2~2.5列目がどう絡んで行けるか。駒井については既に2トップとの関係性もスムーズで、「あとは決めるだけ」の段階。2トップが自らが得点するだけでなく、2トップがお膳立てしたチャンスからサイドハーフが決められれば理想的である。


■脱大黒へ
 宮吉・有田の控えに甘んじている大黒について考えてみたい。昨年のJ2得点王が稀有な能力を持つ点取り屋であることはいまさら疑いはない。その能力は、相手DFのマークを無効化してしまうというとんでもないもので、一瞬にしてマークを外してシュートに入る動きの質は、日本人選手の中でも屈指。大黒はその能力を発揮するために、常に最終ラインとの駆け引きを怠らず、数センチ単位の感覚で何度も動き直しを重ねている。こうした下準備があるからこそ、一瞬でマークを外せる訳だ。
 一方で、この下準備の駆け引きと、前線からボールを追い回す守備的タスクの両立は難しい。石丸監督の基本戦術が「前線からの守備」である以上、大黒をファーストチョイスから外すのは必然のこと。もちろん、大黒は命令があればどんな仕事でもこなすプロフェッショナルなのだが、その真価が活きるのはどうしても1点が欲しい場面でのジョーカー役になるだろうか(前節東京V戦がまさにそういう状況だったが)。
 思えばこの1年半、チームは迷走し、監督は何人も代わったが、変わらないのは「大黒中心」のチーム作りだった。大黒の能力を最大限に発揮させたのは去年の川勝監督だろうか。ただし、川勝体制では大黒と活動域が重複するドウグラス、三平、横谷、宮吉(富山へレンタル)らはポテンシャルを発揮できず終いで、勝ち点も伸びなかった。もちろん、大黒個人が悪い訳ではないが、大黒を活かすために犠牲にしなければならない代償も大きい。それが走力であったり献身性であったり、今のJ2には欠かせないもの。J2をよく知る石丸監督にして、ようやくチームは「脱大黒」へと舵を切った。ここで一個の絶大な存在よりも全体でのハードワークを選択したことが良かったと思える1年後、2年後であることを期待したい。