松本山雅FC○2-0●京都サンガF.C.
5'パウリーニョ
(↑工藤浩平)
87'工藤浩平
(↑山本大貴)
[警告・退場]
・松本
なし
・京都
20'ダニエルロビーニョ(C2ラフプレー)
26'吉野恭平(C2ラフプレー)
34'岩沼俊介(C1反スポーツ的行為)
60'アンドレイ(C4繰り返しの違反)
【全体の印象】
両者怪我人や出場停止でレギュラークラスを欠く手負いの上位直接対決。立ち上がり京都はFKから吉野がゴールを決めるも混戦のファウルでノーゴール。逆に松本はFKからサインプレーが決まって先制。その後マッチアップするあらゆる局面で松本が先手を奪い、ゲームを掌握。京都は松本の決定機逸にも助けられた。後半、京都はポジションを動かして修正をはかりペースは掴んだが、松本も防備モードにシフト。キロス投入で放り込みサッカーを敢行した京都だったが、戦術習熟度は低く、ポジションのバランスも悪くなり、逆に松本に隙を衝かれてダメ押されの失点。勝負所を掴みきれず完敗を喫した。
【雑感】
■力負け。完敗
相手の布陣に形を合わせに行き、鏡合わせのように1vs1のマッチアップを作ってマークのズレを防ぐミラーゲーム。札幌戦では機能したが、このゲームでは裏目に出て、1vs1の局面で遅れを取る場面が多発。特に本職とは逆サイドに配置した岩沼が石原に何度も突破を許し、この側面からの砲撃を浴び、後手後手の守備を強いられた。
さらなる誤算は、山瀬が「攻撃のところのリズムの悪さが守備にも悪影響があったのかな」と語っている通り前線の不出来。一手一手先回りされるようにして松本にプレスをかけられると、ボールを繋ぐ自由は奪われ、ダニエルロビーニョに預けてもあっさりロスト。そんな状態なのに、最後尾から前線に長いボールを蹴ったのは明らかな戦術ミスで、高さも強さもない手駒しか並べられなかった前線に収まるはずもなく、ロングボール→敵に渡すの繰り返し。ただ一人、堀米だけは地上戦から突破口を開こうとしたが、周囲は守備のことで手一杯で、呼応することもままならず。前線の機能不全が守備を苦しくし、苦しい守備のため攻撃に出られないという悪循環だった。
後半、吉野を右WB、岩沼を左WBという修正でマッチアップの部分は改善した。がしかし、リードする松本はゲームプランとしてあまり前に出すぎず、守備に重心を移したとも思え、「持たされた」という感も否めない。キロス投入後はなりふり構わずボールを前に運んだが、結果的に高さを使って相手GKを慌てさせたシュートはゼロ。一見攻めているように見えたが、「大事な所はやらせない」と要所を締める戦巧者・反町山雅の前に、付け焼き刃の戦術は無力だった。あらゆる面で力負け。完敗だ。
■奪われた天王山
1シーズンをトータルに考えた時、「勝ちに行かなければならない」という勝負所がある。しばしばそれは「天王山」と呼ばれる。天正10年(1582)6月、羽柴秀吉が大山崎から乙訓かけての街道や淀川を見渡す天王山を明智軍から奪い、圧倒的優位に立った故事にちなむ。今季の自動昇格を考えた時、京都が是が非でも奪わなければならない「天王山」はこの松本戦だった。主力数名を欠いて戦いに臨まざるをえなかったというツキの無さを差し引いても、そんな重要な一戦に「相手に合わせにいく」「受け身の戦術」「守備優先で起用」でチームを動かしてしまったのは、石丸監督痛恨の失策と言わざるをえない。チームの基礎構築面については個人的に高く評価しているが、勝負の勘所を見極める戦略家としての面では限界を感じる。
天王山で敗れ去った今、「残り11試合全勝」など建前や夢物語で非現実的な目標を掲げるより、もっと冷静な視野を持ってプレーオフを勝ち抜くチームを作る方がベターな選択かと考える。まずはプレーオフ圏内を死守すること。もちろん1つでも順位は上げたい。さらにはプレーオフでは重要になる「得点を奪う」ための戦術の再整備。クライマックスに向けて闘争心を高めていくことも忘れてはいけない。やるべきことは山ほどある。そうそう、プレーオフで最も大事なのは「勢い」だ。勢いを付けるためにも、堅実な守備路線からある程度攻撃的なチームへとシフトチェンジする必要がある(前線の台所事情は苦しいが)。残念ながら得点王争いをするような個の攻撃力を持ちあわせていない。だがそれを複数でカバーし、パスワークで崩していく素地・土台みたいなものはできている。まだ伸びしろもある。さて、間に合うかどうか。