二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2016明治安田生命J2リーグ第1節 京都vs水戸

2016-02-29 | 蹴球

京都サンガF.C.1-1△水戸ホーリーホック
53'有田光希
(↑こぼれ)
           73'三島康平
           (↑兵働昭弘)

[警告・退場]
・京都
16'佐藤健太郎(C1反スポーツ的行為)
59'イヨンジェ(C2ラフプレー)
・水戸
75'宋株熏(C5遅延行為)
90'萬代宏樹(C3異議)


【全体の印象】
序盤から追い風を利して京都が押し込むが、水戸も納豆のように粘り強く守る。京都の攻撃は佐藤健太郎や山瀬功治が絡むとボールが回ったが、攻撃の8割は石櫃頼み。後半セットプレーの流れから有田の一撃で先制するも、水戸は割り切ってロングボールを放り込む三島大作戦を発動。三島に当てたセカンドボールの対応にバタついて失点。それでも全体的に守備は安定していた。終盤エスクデロを投入後にようやく牙を剥いてみせたが、攻撃面は京料理のように淡泊だった。

【雑感】
■はんなりサッカー
 開幕前、攻守にアグレッシブであることを掲げたものの、蓋を開けてみればずいぶん大人しいサッカーだった。まず最終ラインの守備がかなりの安全運転。染谷悠太は周囲によく目を配り、裏狙いの長いボールをケア。ラインはそれなりに高く保っていたものの、当然後ろ重心になる。やんちゃな菅沼駿哉も自重気味。ひとたび敵にボールが渡ると帰陣も早かった。そうしてラインを下げると、攻撃的な駒である石田雅俊あたりも自陣に引く。すると今度は攻撃に転じる時、パスコースが限られる。パス出しで迷う。基本水戸が引き気味だったこともあるが、守→攻の切り替えは総じて遅かった。ゲーム運びに落ち着きがあって悪くはないんだけど、どうにも煮え切らない。ああこれが去年金沢の実況アナウンサーが言ってた「はんなりサッカー」か――。ところで「はんなり」は大人しくておっとりしているという意味ではない。語源は「華あり」。できれば華があってパッと明るくなるような「はんなりサッカー」を目指したい。

■攻撃の駒不足
 攻撃面はちと苦しい。何が苦しいかって、控えメンバーを見渡しても純然たるアタッカーがエスクデロ競飛王しかいなかった点。怪我やコンディション不良による駒不足なのだが、開幕早々手詰まり感あふれていた。思い返すと去年は両翼に単騎でボールを運べる駒井善成、伊藤優汰を置いていた。同じような役割を考えていたであろう堀米勇輝や田村亮介、アタッカーのダニエルロビーニョが使えないのは石丸監督には大きな誤算だったか。ただ、エスクデロは間違いなく「敵陣にボールを運べる選手」。プレーを見て真っ先に思い浮かんだのはセルジオ・ドゥトラ・ジュニオールで、ドゥトラのように切り込み隊長として敵陣に穴を開け、二の矢、三の矢で敵陣に雪崩込むようなやり方も不可能ではない。とは言え敵陣まで雪崩込むにはまだまだ走力不足、積極性不足。前述したように守攻の切り替えのスピードも遅い。連携不足を怖れるあまりセーフティーに行きたい気持ちは痛いほどわかるが、多少リスクを懸けて前に出ていかないと、「このクラブはどうしてチョウキジェ監督招聘に動いたのか?」というビジョンにも疑問符が付いてしまう。機を見て前線に飛び出していた佐藤のようなプレーを、もっと全体として増やしていきたい。

■新しいビジョン
 開幕戦は「42分の1以上の価値のある大事な一戦」と言われる。だがしかし1年前のことを思いだしてみよう。去年の開幕戦、京都は3-1で快勝、首位発進だった。後から振り返れば、それは相手チームの不出来ゆえのラッキーパンチだったに過ぎない。京都に苦杯を舐めさせられた相手・アビスパ福岡は、その後もしばらく苦しんだ。布陣変更など戦術面の問題点に向き合い、やがて全員が同じ方向を向いて戦う集団へと変貌。尻上がりに調子を上げて最終的に3位で昇格を果たしたことは揺るぎなき事実だ。ラッキーパンチで開幕勝利した京都が辿った末路とはあまりに対称的である。開幕戦はもちろん重要だが、人生万事塞翁が馬。何がどう転んでいくかわからない。目先の1勝、勝ち点3を求めすぎて場当たり的になってしまうより、42節トータルに戦い抜くための基盤を作りたい。
 例えばこの試合の終盤、高橋祐治を投入して3バックに変更して両翼から攻勢に出る構えを見せた。単に勝ち点3を狙うだけならば、背の高い選手を前線に上げて電柱を立てるやり方もあったかもしれない。けれど、3バックに変えるやり方は、長い目で見ると武器になるかもしれない。そこからまた違ったオプションや起用法が生まれるかもしれない。満足な結果は伴わなかったが、新たに生まれ変わるための「ビジョン」はあったような気がする。新しいビジョンはいいぞ。