二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

第95回天皇杯全日本サッカー選手権大会 1回戦[32]京都vs立命館大

2015-08-31 | 蹴球

京都サンガF.C.△2(*5PK3)2△立命館大学
9'佐々木勇人
(―――)
           79'國分伸太郎
            (↑こぼれ←加藤臣哉)
           96'佐々木宏太
            (↑加藤臣哉)
111'フェホ
(↑荻野広大)

[PK戦]
・京都
大黒○-フェホ○-駒井○-菅沼○-石櫃○
・立命
加藤○-茂×-國分○-佐々木○

[警告・退場]
・京都
90+3'フェホ(C2)
・立命
なし


【全体の印象】
 京都は序盤ふわっとした入りだったが、佐々木が中盤で奪ってすぐさま40m近いロングループシュートを蹴り込んで先制。これで気も緩んだか、前線からのプレスがまるでかからず、終始立命大がボールを保持。後半も立命大がサイドからのクロスやFWへのクサビを連発し攻め立てる。京都は攻め急いでは奪われてカウンターを浴びながらも菅沼・下畠の個の力で防いでいたが、79分左サイドを茂に崩され、加藤のシュート&再アタックのラッシュを浴びた末にこぼれ球を國分に詰められ失点。延長前半にはCKからフェホが空振りしたところを奪われ、守2vs攻4になるカウンターを浴びあっさり陥落。京都は高校生・荻野投入で中盤が安定し、ボールを奪えるようになると、その荻野のクロスからフェホが決めて辛くも同点に。PK戦では京都に軍配が上がったが、立命大の大健闘が天皇杯のマモノを西京極の噴水まで呼び寄せた。


【雑感】
■苦戦の理由
「わざとボールを立命に持たせているの?」と思うほどに、立命館大がボールを支配したこのゲーム。それもそのはず、京都はボールホルダーに対して高い位置からプレスをかけに行かない。リーグ戦で宮吉・有田が散々汗をかいていた仕事は大黒には免除されていただろうか、立命は易々とボールを動かせた。さらにそのボールの動かし方も素晴らしかった。速いボールをスペースに向けて思い切りよく送り込む。走力勝負に持ち込めば、プロ相手でも互角以上に戦えるし、長いパスならばプレスをかいくぐることもできて一石二鳥。立命のゲームの組み立ては方は、勇敢かつクレバーだった。
 一方の京都。問題は前線からのプレスだけではなかった。序盤から立命の2トップ(谷口・高野)へのクサビの縦パスをズバリズバリと入れられていたのは、最終ラインの前のところでの「フィルター」がまったく機能していなかったということ。ボランチは黄大城+原川だったのを途中から原川+永島に代えたが、フィルター役としては大差はなく、相手を遅らせることすらできなかった。
 プレス戦術は極端な話、1枚でもサボっているとすぐに綻ぶ。その上気持ちの入っていないプレーをする選手、イージーミスを重ねる選手も散見されるようでは、勇敢なる弱者が勢いづく流れになるのは致し方ないこと。むしろ“疎漏なく全体が連動しながらプレスをかけられている”リーグ戦のレギュラー達が、なぜこのチームの主戦力であるかを、誰もが再認識できたことだろう。

■収穫
 石丸監督が電撃的にチームを引き継いだのは、本格的な夏が始まった7月10日のことだった。チームをじっくり作り込む時間もなく、とりあえずは“走るサッカー”を掲げ、ハードワークできる11人+αを中心に、戦いながらチームを作ってきた。主力たりえる選手の層は薄く、しかも真夏での戦い。そういう意味では、今まで酷使してきた主力を休ませ、現時点での骨格に肉付けしていく「テスト」を行うにはうってつけのタイミングだった。本来ならシーズン前のキャンプでやるべきこと。だけども途中で監督が代わったんだから仕方がない。最も大事なリーグ戦残り12試合のために、やっておくべきテストモードだった。
 ということで主力7人を休ませて、布陣はリーグ戦と同じ。おそらく戦術も同じだったはず。ところが人を代えるとここまで機能不全に陥るのかというくらいに、主力とはかけ離れた動きしか発揮できなかった。レギュラーの代えになりうると思えたのは、せいぜい右サイドでの佐々木と、GKの杉本くらい。あとは既にCBでの実力証明済の下畠。そういう意味ではテストから得たものは少なかった。がしかし、「今(リーグ戦で)やっているサッカーが正しい」と確信できたのは、十分な収穫だ。
 石丸監督が「しいて言えば」と収穫に挙げたのが、延長後半から投入された2種登録の荻野広大。相手の運動量も落ちている時間帯というのを差し引いても、大きな体格で中盤にどっしり構え、球際に激しく当たりに行き、機を見て右にも左にも飛び出し、緩いクロス・高速クロスを蹴り分けたプレーぶりには大器の片鱗をうかがわせた。何よりも彼は、「他人任せにしない」という責任感あるプレーができていた。実は立命館の選手たちも皆、他人任せなプレーをしなかった。日本トップクラスの技術を持つ個よりも、アマチュアのひたむきなプレーの集合体の方がストロングなことを思い知ったことこそ、この「テスト」から得られた最大の収穫ではなかろうか。