京都サンガF.C.○2-1●大分トリニータ
38'為田大貴
(↑兵働昭弘)
60'伊藤優汰
(↑宮吉拓実)
76'大黒将志
(↑伊藤優汰)
[警告・退場]
・京都
20'内田恭兵(C2)
45+1'原川力(C1)
・大分
78'若狭大志(C1)
【全体の印象】
前半、大分は高い最終ラインを保ちコンパクトな陣形で京都の活動域を与えず、積極的な出足で主導権を握った。京都は高い位置で囲まれてから原川のパスミスを奪われ為田に運ばれて先制を許すなど、局面の勝負で負けがちだったが、後半、伊藤の同点ゴールから流れが一転。疲れの見える大分を尻目に、交代投入した大黒の逆転弾、フェホに訪れる決定機の山など、終盤は圧倒。終了間際でも走り勝っていた宮吉、駒井の運動量も目立った。
【雑感】
■はがせなかった前半
ここ何年かやたらよく聞くようになったサッカー用語に「はがす」というのがある。「相手を1枚はがす」というふうに使われ、意味合いとしては、マークに来た相手を「外す」「かわす」とだいたい同じ。相手のマークやプレスをはがせば瞬間的に数的優位が作れる訳で、算術的にも重要な問題だ。J1とJ2で一番差がある部分は、この「はがす」プレーかもしれない。
ゲームの前半、大分のプレスは積極果敢で、まるでピラニアのようにボールに食いついてきた。京都はそれを「はがす」ことができず。食いつかれると、そのまま食いちぎられたり、次のプレーが逃げのパスや不正確なパスとなってしまったり。食いつかれようとも、パスを通す先に味方が能動的に動けばはがしやすくなるのだが、その部分も物足りなかった。特に右サイド。為田・安川に押し込まれ伊藤・内田は前で受ける動きが乏しい上、単純ミスも多かった。相手のハイプレスをかいくぐれなかった東京V戦がそうだったように、この手の戦術と対峙した時には今後どうにかしたい課題である。
■ゲームマネジメントの階段
前半ピラニアのようだった大分のプレッシングは、後半、次第にドジョウのようになった。結果的に石丸監督のコメントの通り大分の足が止まり、逆に前半よりも走れるようになった京都が逆転勝ち。勝敗を分けたのは、90分通してのゲームプランニングに他ならない。とにかく石丸采配がズバリと当たった。
[1] 最初の選手交代⇒磐瀬を中に入れる、守4バック←→攻3バックを切り替る
[2] 攻撃時は両サイドを押し上げ、サイドの優位を作る。特に伊藤が息を吹き返す。
[3] 2枚目の交代⇒チャンスが作れている流れでの、フィニッシャー大黒の投入。
[4] 3枚目の交代⇒最後のカードのOUTは伊藤。残した宮吉のチェイシングが効いた。
とりわけ、相手の集中力が落ちたタイミングでの[3]の大黒投入は効果的だった。過去に何度か書いたことがあるが、ここ数年の京都の監督は「一番いい選手は、スタメンから使う」という考え方ばかりで、手札にジョーカーを置いていたのは大木監督時代の原一樹くらい。その点、石丸監督は「一番強いジョーカーは切り札として持っておく」というスタンスで、相手が苦しい時間に、もう一度エンジンを掛け直せる体力(駒井や宮吉)+ジョーカーで勝負をかける。
石丸体制になってからは「とりあえず大黒に」式の無意味にボールを集める悪癖も消え、大黒をすっ飛ばしてでも組織としていい形が作れるなら、大黒以外のルートから仕掛けることもできる。そうなると相手も大黒ばかりにマークを集中させる訳にもいかず、それが逆に大黒が使いたい隙を生じさせる結果に。個ありきのチームから、組織の中に個を上乗せして「快弾」を打ち込めるチームへ。その変化は「階段」を一段ずつ上がっていくようでもある。
もし監督が代わっていなかったらと思うとゾッとする。それが一番怖ろしい「怪談」だ。降格の亡霊は、送り火とともに送り返した!と思う。