常滑・多治見の旅の最後に、多治見の山間に佇むギャルリ百草に訪れた。名古屋市内にあった取り壊し寸前の古民家を、人気陶芸作家 安藤雅信氏が、多治見の山間に移築し、ギャラリーとして活用している。
すっきりした数寄屋風の古民家は、素朴の美が漂う。
建物の周りをぐるりと囲む緑も、四季の移り変わりが伝わる。
ガラスの戸越しに差し込む光。
ここなら、一日の中にある光の変化も、容易に愉しめるのではないでしょうか。
庭に、企画展開催中の森北伸さんのユニークな彫刻。
伝統日本家屋の扉を開けると、土間になる。
そこで靴を脱ぎ、敷居に上がってからの観覧は、
忘れかけていた何かにふと気が付く。
ほかのギャラリーでは味わえない暮らしのなかの東洋文化は、
ここにはある。
普通のギャラリーにありがちの棚や照明は、ここにはない。
畳の床や仏間を使っての展示が、逆に新鮮で印象に残る。
一見簡素にみえる百草だけれども、
そこに、暮らしと芸術を垣根なく問う空間であった。
二階に展示された安藤さんの作品は、日常生活で使い込み、愛着がついていく生活食器がずらり。
ギャルリー百草の建物に通じた美学が感じ取れる。
暮らしに美を取り入れるのではなく、暮らしに本来ある美を見いだしてほしい。
そんなメッセージを受け取れた訪問だった。