葉桜の道を通り過ぎて森へ行く。
桜の道の反対側に孟宗竹と小参竹・真竹などが入り混じり、雑木が混雑して鬱蒼と繁る森があり、一件の民家が埋もれている。この建物は、石井記念友愛社の子供たちが暮らし、戦後復興の拠点の一つとなった施設である。一時空家となり、その後近年まで環境研究家が住んでいたが、家の周囲の樹木や竹を手入れせず、およそ20年間にわたって放置状態(本人いわく自然のままの状態で残す)だったため、伸び放題に成長した植物が、ついに建物を侵食し、傷めはじめているのだ。その住人の転出を機に、私どもに「再生」の要望が出された。それが、
【森の木樵<KIKORI>プロジェクト】
『「友愛の森」に入り、森を歩き、森の木を伐り、伐り出した木を「オブジェ」として組み上げてストックする。焚き火と薪割りもする。保存された木材は、参加した人が建築資材やARTの素材、焚き火の薪などに随時運びだし、利用できる「友愛の森ウッドストック」とする。山を造り、森と里山を保全する基本の技術を学ぶ機会ともなるプロジェクト。』
の起点である。
3月28日から4月1日まで開催された「春の森アートウィーク」のプログラムの一環として実行された。
一日目(3月28日)は、建物へと続く道を整備。暗い森に光が入り、明るくなった。
二日目(4月1日)、宮崎市内の施設の子供たち9人と先生3人が参加。にぎやかな竹藪伐りの一日となった。普段、森で過ごす機会のない子たちは大張り切り。筍も見つかって、竹林を探しまわり、掘り集めるハンターとなる。
雑木と竹林に埋もれていた遊具と建物の一部が、およそ四半世紀ぶりに姿を現した。この風化のレベルは、現代アートの素材として提案できる。ペイントしたり、木や竹と古い遊具を組み合わせたり。空家は改装して移住者のシェアハウスとして利用できるだろう。アートの表現領域と環境問題と社会性とがリンクし、新しい作品を生み出す。それこそが、現代アートが獲得した新たな価値観である。
立木を切り倒し、組み上げる。小切りにした木は積み上げておく。これが「木樵<KIKORI>アート」の初発であり「友愛の森ウッドストック」の出発点である。