
宮崎神宮の北方に位置し、神武天皇ゆかりの伝承もある古社「奈古神社」の横を通り過ぎる道で、大きな紫の光が降り注ぐような光景に出会った。農家の庭先に咲く「ジャカランダ」のであった。奈古神社には古式の御田植え祭りや神楽が伝わっている。

ジャカランダは中南米原産の花木で、初夏に開花する。樹高は15メートルに達する。花房が垂れ下がって咲く様は藤に似ている。葉はねむの木にそっくりである。開花期には紫の雲がたなびくように見えることから紫雲木の和名がある。

車を急停車してその農家を訪ねると、野菜の集荷中だったその家の主婦が姉さんかぶりの手ぬぐいを取り、手を拭きながら出てきて、快く応じてくれた。20年ほど前に植えたこの木が、今年やっと花を咲かせると、それはそれは見事な咲きぶりで、近隣の人たちが集まってくれたほどであるという。花期は少し過ぎていたが、一枝所望すると、三枝ほど手折り、渡してくれた。
この三枝のジャカランダでシルクストールを染めてみる。少し調べたが、ジャカランダ染めのデータは見当たらなかった。手順は他の草木染めと同じ木灰のアク媒染。
染め上がった布は、なんと、薄い緑色がかった梅雨明けの空のような色であった。色の古名で「翡翠色」という。思いがけない色が得られて、愉快な一日。次の機会には、時期や布や媒染材を変えて染めてみることにしよう。



*実際はもう少し透明感のある薄緑色。
宮崎県日南市南郷の道の駅の背後の山にはジャカランダの群生があり、多くの客が訪れるという。長年の植栽と手入れが実った結果だという。世界三大花木といわれ多くの人に愛好されるジャカランダには南国の海がよく似合う。下の三点の写真は南郷道の駅のホームページから転載。


