大黒さんの金魚鉢

黒金町の住人の独り言は“One”

One voice , one mission , one family

奨学金問題の背景

2015年09月28日 | 労働者福祉
かつて2割程度だった奨学金利用者は、今や177万人となり、大学生の2人に1人がなんらかの奨学金を利用しているといいます。
私たちの世代からみますと、奨学金とは一部の優秀な学生に無償や無利子で与えられるものだという感覚でしたが、どうもそうではない模様です。
その多くが利息のつく「奨学金」という名のローンに変化しており、卒業しても十分な収入が得られず返済に苦しむ若者が増えて延滞者は33万人にも及び、延滞金(年5%)も課されています。

大きな社会問題になりつつある奨学金問題の解決を求めて、中央労福協は現在「署名活動」を推進しています。
政府に求めている内容は「給付型奨学金制度の導入と無理のない返済制度への改善」です。
先週の県労福協理事会&幹事会でこの署名活動について要請を行いました。
なぜこのような問題が発生したのでしょうか。
その背景には様々な問題があります。
最大の問題は日本型雇用社会の崩壊です。
そしてバブルの崩壊と、労働者派遣法の問題もリンクしています。

私は1970年に高校卒業後就職をしましたが、当時の求人倍率はなんと5.1倍でした。
ですから大学へ進学する者は、頭のいい奴や、勉強の好きな人や、裕福な家庭に生まれた人たちでした。
求人者数の推移は下表のグラフで一目瞭然です。
71年には250万人の求人がありましたが、2010年には20万人を切りました。

署名活動について意見を求めると「お金がなければ大学なんていかなくてもいいじゃないか」という声がいつも出てきます。
「大学進学だけがすべてではない」とも言いますが、それは60年代・70年代の時代の感覚かもしれませんね。
高卒求人が少ない時代に社会に出た子どもたちは今どこにいるのかを考えてみましょう。
私の息子や娘の同級生の現状を知るととても無責任にはなれません。

高卒求人者の激減により、家計が苦しくても、可愛いわが子をいい会社に就職させるためには、大学に進学させざるを得なくなります。

それでも終身雇用と年功序列に守られていた親世代は苦労しながらも子どもを育て上げていきました。
しかし「バブル崩壊」とその後に経団連が決定した「新日本型経営システム」により労働者の雇用環境は一変します。
そのうえに「労働者派遣法」の改悪によって若者を中心とした雇用環境は悪化の一路を辿りました。
大学を卒業したからといって決してハッピーな暮らしはできません。
正規社員になってもなかなか賃金は上がらず、非正規社員や無業の大卒者も大勢発生しました。

この問題もやはり私たち世代の責任です。
覚悟を決めて政府や経営側と向き合ってこなかったツケがここに現れています。
せめて顕在化した問題の改善は貫き通さなければなりません。