歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

BRICsの次に来るもの

2007-01-24 23:53:32 | 海外ものづくり事情
BRICsという言葉は、すでに説明する必要がないまでに世間に定着したと思います。これから日米欧と肩を並べる巨大な経済グループになる、それがブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国なのだそうです。しかし単に人口規模が大きい国を並べただけのような気もします。10%近い経済成長を続ける中国と、3%程度に過ぎないブラジルや、WTOにも加盟できないでいるロシアを一緒にするのは、少々乱暴なグルーピングです。
とはいえ、BRICsという言葉が日米欧の投資家の心理を刺激し、これらの国々への直接投資が増え、住民の生活が豊かな方向に進むきっかけとなっているのであれば、この流行語を作ったアメリカの投資銀行ゴールドマン・サックスはこれらの国々の住民から感謝されてしかるべきでしょう。
また、BRICsという言葉は、コンサルタントやシンクタンクの業界にちょっとした特需をもたらしたという点でも、ゴールドマン・サックスの貢献は大きいと思います。書店の経済コーナーに行けば、コンサルタントやシンクタンクが著したBRICsという文字が表紙に踊る書籍が目立ちます。当然のことかもしれませんが、この手の書籍はBRICsの国々のネガティブな点についてあまり触れていないのが特徴です。

しかし、BRICsという言葉も広く行き渡り、新鮮味がなくなったためなのか、「BRICsの次」が売り出されています。それは「VISTA」なのだそうです。てっきりトヨタの車か、Windowsの新しいOSかと思ったら、ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン、の5カ国の頭文字をからとった言葉とのこと。これら5カ国が本当にこれからの投資先として有望なのかという議論はさておき、「VISTA」という言葉は英語で「眺望」という意味もあるそうで、なかなかうまいネーミングだな、と思いました。

それでは私も今からVISTAについて情報収集しよう、というのでは芸がないので、私も1つ「BRICsの次」を考えてみました。
それは「NICs」です。Newly Industriarized Countriesではありません。北朝鮮(North Korea)、イラン(Iran)、キューバ(Cuba)の3カ国のことです。なぜこの3カ国かというと、理由は、(1)これ以上は悪くなりようがない(変化があるとしたら良くなるしかない)、(2)とはいえ国内に深刻な民族紛争、宗教対立を抱えていない、(3)国民の知的水準が高い、(4)大きな経済圏に近い、または当該国自体の潜在的市場規模が大きい、(5)魅力的な資源がある、の5点です。

まず(1)ですが、北朝鮮、キューバは間違いなく該当するでしょう。アメリカとの戦争、という最悪のシナリオもないでもない、という見方もあるかもしれませんが、イラクで痛い目にあったアメリカが再び同じようなことを行うとは思えません。それと、産油国のイランについては原油高で潤っていることから、経済は「これ以上は悪くなりようがない」状況ではありませんが、人口が急増している中、効率の悪い国営企業中心の体制のままではいずれ経済は破綻すると思います。

(2)は3国のいずれも問題なさそうです。

(3)の知的水準ですが、北朝鮮、イランは核兵器を開発した(しようとしている)国ですし、キューバは医学、薬学の分野では世界から高い評価を得ています。超精巧な偽ドル札も作る北朝鮮は、ものづくりには向いているでしょうね。

(4)の条件については、日本、韓国、中国に隣接する北朝鮮、アメリカと目と鼻の先にあるキューバは合格です。イランは日米欧から遠いですが、人口規模が約7,000万人と大きく、また若年者が占める割合が高いので、潜在的な市場は大きいといえます。

(5)の魅力的な資源は、イランは言うまでもなく石油です。キューバはリゾートとしての豊かな観光資源がありますし、自然環境も豊かなのでバイオ産業の立地にも適しているかもしれません。また、意外に知られていませんが、特殊鋼の生産に不可欠なニッケルの埋蔵量も豊富です。例外は北朝鮮ですが、独裁者のために披露される一糸乱れぬマスゲームの映像をみると、国民を正しく訓練し直せば労働集約型の生産現場で非常に優秀な成績をあげる労働者になる気がします。あの国はそんな労働力こそが資源と言えます。

世界最悪の人権侵害国家を含む3国は、現状では問題があまりに多く、多くの企業にとって投資先として考えることは論外でしょう。政治体制や経済の仕組みが、世界と協調できるような形に変革されることが、投資の大前提であることは言うまでもありません。
ベルリンの壁が崩壊することを30年前に予見した人がどれほどいたでしょうか。ベルリンの壁を崩壊に導いたのはテレビの電波だと言われていますが、当時に比べると現在は遥かに情報化が進展しており、昔のように独裁者が国民を外部の情報から遮断することは難しくなっています。これら「悪の枢軸」と呼ばれる「NICs」の3国が変貌するのは意外に早いのではないか、という気がしますし、そうあって欲しいと考えます。

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2 コメント

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気候の違いは考慮したほうが (デハボ1000)
2007-01-25 00:43:11
>「VISTA」という言葉は英語で「眺望」という意味もあるそうで

与太ねたですが、近鉄の2階建て特急は「VISTA CAR」といいますが、眺望かもしれませんね。

北朝鮮だけは瓦解の匂いがしますな。
もう20年ほど前、会社の技術部長だった父の部下が北朝鮮にて石炭プラントのスーパーバイザーをしてきたそうで話を聞いたそうです。なんでもフランスの会社が元請だったが、買う機材が日本製が多かったためフランス経由で行ったそうです。
さて、驚いたこと
(1)各部屋(3人ごとだったそうですが)に親子の写真が・・・フランス人達がなんとかしてくれ、寝られんと文句をつけ、「外したのは内密に」ということで処置した。
(2)クレーンが足りないので困ったとなると、翌日から近所の学校がみな出てきて人海戦術。けどクレーンが相変わらず足りないのはこまったと思っていると、翌日現場の鉄道側線に蒸気クレーンと蒸気機関車(ボイラー代用)が止まっていた。(ちなみに近所の鉄道では定期列車を運休したらしい)
北朝鮮に関しては、他の国に比べて気候が寒冷という事情がありそれが国民性を固執化させてるという意見もあることから、同列には一寸論じられないなあという気もしますし、多分一元論から放たれた人々が代替わりするまでは、戦国の世になるのではと考えます。
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コメントありがとうございます (kunihiko_ouchi)
2007-01-27 00:43:57
デハボ1000さん、コメントありがとうございます。
近鉄ビスタカーは大阪に住んでいた頃、祖父母の住む名古屋に行くときによく利用しました。日本における二階建て列車の先駆け的な存在ですね。
さて同じ独裁体制でも、常夏のキューバは音楽は陽気ですし人々の表情も明るいような気がしますね。ご指摘のように気候の違いは確かに大きいと思います。
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