歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

容易ではない技能のデジタル化

2007-01-30 23:54:34 | ものづくり・素形材
「ものづくり・IT融合化推進技術(デジタル・マイスタープロジェクト)」という国のプロジェクトが平成13年度から4年間かけて実施され、昨年度に終了しました。プロジェクトの概要は以下の通りです。

(以下引用)
これまで日本の製造業は、熟練技能者の技能を活用することで、国際競争力を維持してきました。しかしその技能は体系化がなされていないため、技能者の高齢化の進展に伴い技能が喪失し、国際競争力の大幅な低下につながると危惧されています。そこで、情報技術(IT)を活用して個人に特化した「技能」の客観化を図るとともに、IT により再現性ある「デジタル技術」に可能な限り置き換えることによって、日本の製造業の根幹となる中小製造業の支援を目的に加工全般にわたる技能の技術化に関する研究開発、設計・製造アプリケーションのためのプラットフォームの研究開発を行います。また、その成果の公開を目指します。
(引用終わり)

このプロジェクトに参加した、ある金属プレスメーカーの社長のお話をうかがいました。この会社ではベテランの技能を9割近くもデジタル化することができ、これにより若手の教育に必要な時間は大幅に短縮され、ベテランもデジタル化できない技能の伝承に専念できるようになったそうです。
これはデジタル・マイスタープロジェクトの成功例だなあ、と思ったのですが、お話を聞いているうちに実際はそう単純ではないことがわかりました。鋼板、金型、プレス機械に係る技術はどんどん進歩しており、データベース化した熟練技能をうまく機能させるために、その都度この金属プレスメーカーではパラメーターを修正しなければなりません。そのための体力がかなりかかる、と社長はおっしゃいました。

何百年にもわたって同じ材料、同じ製法にこだわる伝統工芸品とは異なり、大量生産の工業製品に係る技術は日々進歩しています。経営環境の変化に対応し続けなければならない、大量生産品のものづくりの技能のデジタル化は、思ったよりも難しいということを実感しました。