歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

金型図面の流出がもたらしたしっぺ返し

2007-01-27 23:33:46 | ものづくり・素形材
あるCADソフトベンダーの方のお話を聞く機会がありました。

大量生産のための工具である金型。精度の高い金型を作るには高度なノウハウが必要であり、そのための設計図面はノウハウの塊です。
金型メーカーがユーザーに金型を納品すると、メンテナンスに必要だからとユーザーは金型図面の提供を要求する。言われるがままに提供すると、ユーザーはその図面を中国メーカーに渡し、2台目以降の金型を安く作らせる。貴重なノウハウをライバルに譲り渡されてしまった下請けの金型メーカーは、ユーザーに文句を言えずに泣き寝入り。。。
という、実に不適切な商取引は、今年に入ってからマスコミでも大きく取り上げられたこともあり、かなり減少したようです。しかし、まだそういった事例は少なくないのだそうです。

こうした金型図面の流出に手を染めていた大企業の中に、ある有名なOA機器メーカーがありました。この会社は、コピー機のトナーケースを成形する金型の図面を、日本の金型メーカーから召し上げ、それを中国メーカーに渡して2台目以降の金型製作のコストダウンを図りました。
しかし、日本の金型メーカーの図面を中国メーカーに渡したことで、OA機器メーカーは思わぬ出来事に直面します。ケースは本物そのもの、中身の粉は粗悪品、という偽トナーが中国市場に大量に出回り、本物だと思って購入したユーザーからクレームが殺到したのだそうです。

金型図面の流出は、金型業界に大きな不利益をもたらすだけでなく、自らもいずれしっぺ返しを受けかねない、ということをユーザーは認識すべきですし、経団連に所属する大企業は、率先して中小企業との不適切な取引慣行の見直しを進めるべきでしょう。