歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

NHKスペシャル「灼熱アジア 第1回 タイ “脱日入亜”日本企業の試練」を見て

2010-08-24 01:03:53 | 海外ものづくり事情
 昨夜、NHKスペシャル「灼熱アジア 第1回 タイ “脱日入亜”日本企業の試練」を見ました。国内の政治的混乱にも関わらず中国、インドなどとのFTAを武器に輸出が絶好調であるという話は勉強になりましたし、取材先の日系金型部品メーカーが急ぎの仕事で焦っている最中に落雷による停電が起こり、マシニングにかけていた部品がすべてオシャカになってしまった模様は、南国での操業のリスクを実感させてくれるものでした。
 ただし、「もはやタイにおいて技術立国(モノ作り大国)日本の圧倒的な優位性は崩れてきている」という番組のメッセージには、タイの素形材業界を見て回ったことのある私にはちょっと納得がいきませんでした。確かにタイはASEANの中でも比較的厚みのある機械工業の集積が形成されている国ですが、その裾野は日本と比較すると実に狭いものです。また、番組で紹介された自動車部品のサミットグループのように世界でも通用するローカルメーカーも現れてはいますが、そもそもこのサミットグループは日本と関係の深い会社です(こちら)。タイの機械工業の技術レベルを牽引しているのは今でも間違いなく日系企業ですし、そこそこ優れた技術を持つローカルメーカーでは必ずといっていいほど日本人技術者が指導しているのは常識です。また、タイでは国境を越えたビジネスチャンスが広がる一方、コスト競争が厳しさを増しているのは事実ですが、日系企業の競争相手はローカルメーカーではなく同じ日系企業というパターンがほとんどではないでしょうか。
 タイ・サミットによるオギハラ(日本を代表する金型メーカー)の買収劇は確かに驚きでした。しかし、日系企業にとってのタイの戦略的重要性を高める上では、将来のパートナーとしてのタイのローカルメーカーの技術力の底上げに日本側がまだまだ協力していく必要があるように私は思います。