クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

岩瀬の古利根川で歌を詠む? ―岩瀬河畔砂丘―

2015年04月29日 | 利根川・荒川の部屋
羽生市岩瀬に河畔砂丘がある。
形態はゆるい湾曲状で、低地との比高は7.5m。

ここも砂丘の上に道があって、
景色を見下ろしながら通ることができる。
車ではあっという間に通りすぎてしまうから、
個人的には自転車か徒歩で砂丘を感じたい。

ところで、かつて岩瀬には、古歌に読まれた場所として考えられていた。
『夫木和歌抄』という鎌倉時代末に編まれた私撰和歌集に、
以下の歌が収録されている。

五月雨は(に)岩瀬の渡り浪こえて みやざき山に雲ぞかかれる(藤原基広)
山舟とむる岩瀬の渡り小夜(さよ)更けて みやざき山をいづる月かげ(加茂重敏)
あまそぎに雪ふりつめる舟を見て  渡りかたきは岩瀬なりけり(読人しらず)
風寒み冬は岩瀬の渡にて 遠く舟まつをとそ(ほどぞ)わりなき(読人しらず)

歌に見える「岩瀬」が、羽生市岩瀬なのではないかというわけだ。
決定打はない。
断言はできない。

ただ、古利根川沿いに位置し、河畔砂丘が発達する岩瀬において、
渡し場があったとしても何らおかしくはない。
「おりっと」「あがっと」の呼び名が残るのも、
かつての渡し場の名残とみられる。

その比定地は景観が全く変わっている。
しかし、かつては渡し場にふさわしい雰囲気のある場所だったらしい。
これからどんどん開発が進み、
景観が大きく変わる可能性は皆無ではない。
だとすれば、かつてそこに砂丘があったことすら、
嘘みたいな話になってしまうのかもしれない。

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