クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

10年前から仕組まれていたうどんの味は?

2014年08月23日 | グルメ部屋
機会あって同期と食べた加須のうどん。
冷汁うどんセットである。
窓の向こうにはお寺が見える。
その昔、鬼島にいる白竜を退治したがゆえに創建されたとの伝説がある。

写真を撮るつもりはなかったが、
ついカメラを向けてパチリ。
約10年ぶりに食べるその店のうどんだ。
ちょっとだけ感慨深い。

透き通るような白いうどんの向こうに、
10年前がかすんで見える。
目を細めれば、これから先の10年が見えるだろうか。

過去と比べて環境が変わっているように、
10年後にはいまは知らない誰かがそばにいるのかもしれない。
月日の流れは年を追うごとに早くなっていく。
否応なく変わっていくのは、
何も環境だけではないだろう。

うどんはツルツル入って、のど越しがおいしい。
天ぷらもサクサクだ。
隣の男子はカレーうどんに唐辛子をかけていた。
なるほど、夏らしい。
今後はカレーうどんを食べてみようかな、と
お新香を頬張りながら思う。

店内は客で賑わっていた。
常連がほとんどかもしれない。
部活帰りとおぼしき高校生が入ってくる。
入れ違うようにぼくらは席を立つ。
テレビは甲子園の試合を映し出していた。

夏の終わり、同期、10年ぶりに食べるうどん、唐辛子、甲子園……。
何の脈絡もなく見えるパズルが組み合わさって1つの絵を描く。
この瞬間に組み合わさることは、
10年前から決まっていたのかもしれない。
推理小説に仕組まれた伏線が、やがて意味を持つように。

外へ出れば容赦ない日射しが照りつける。
道路向こうの境内を見ても、
かつて鬼島のあった頃の面影はない。
いま白竜が現れたら、
その目に夏空はどう映るのだろう。

誰かに呼ばれた気がして振り向く。
でも、そこには誰もいない。
セミの声が10年前と同じように響いていた。

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