クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

“フランツ・カフカ”が小説を書いた道具とは? ―作家の秘密道具(4)―

2010年12月14日 | ブンガク部屋
執筆という行為を「文字を引っかく」と表現したのは、
“フランツ・カフカ”だったと思う。
『変身』や『城』、『判決』の代表作で知られ、
ドイツ文学史に燦然とその名を刻んでいる。
(認められたのは死後だったが……)

カフカは何に文字を引っかいていたのだろう。
日本人作家は原稿用紙、
外国人作家はタイプライターのイメージを持つ人もいると思う。

カフカはタイプライターが嫌いだった。
ペン好きで、万年筆を愛用した。
そんな彼が用いたのは“ノート”である。
長編は「八つ折判のノート」、
短篇は「四つ折判のノート」を使って書いていた。

その直筆原稿を見ると、かなり流麗である。
言葉は澱むことなく湧き出てきて、
それをそのまま書いているといった感じだ。

ただ、ノートが終わりに近付くと、
その流麗な原稿は突如乱れ始めたらしい。
ノートの終焉は、世界の断絶を意味していたのかもしれない。

カフカが作品を書くとき、
部屋にはどんな音がしていたのだろう。
ノートの上に流れるように走る万年筆。
発表のあてもないまま引っかかれた文字だったが、
いまや世界中で読まれている。

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