クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

カール・マルクスは“図書館派”か? ―作家の秘密道具(9)―

2010年12月30日 | ブンガク部屋
学生の頃、勉強場所について図書館派と家派に分かれたが、
書き手にも前者の者がいる。
管見によれば、小説家よりも学者にその傾向が強いと思う。
資料となる本がたくさんあるし、
勉強もしやすい。

しかし、小説を書くのに図書館は思いのほかうるさい。
子どもや学生の話し声は聞こえてくるし、
席の後ろを何度も通られると、
気が散ってならない。
書き手のタイプにもよるけれど、
創造するのに図書館はあまり適さないように思う。

『資料論』の著者で知られる“カール・マルクス”は図書館派だった。
彼が通っていたのは“大英図書館”。
世界的知名度を持つ図書館である。

マルクスは毎日そこへ出勤。
むろん、職員ではない。
利用者の一人である。
そして、そこで9時から夜の7時まで資料の海を彷徨い、
筆を執った。

図書館で過ごすマルクスは裕福かと言えば、そうではない。
経済学を勉強しているのに、
自宅の経済は火の車だった。
それでも彼は図書館に通い詰め、
朝から晩まで勉強した。
そして彼は、彼にしかできない仕事を残したのである。

マルクスは図書館で集中力を乱されることはなかったのだろうか。
どんなふうに、休憩や食事をとっていたのだろう。

大英図書館に集結した“知”は、
海のように彼を包み込んでいたのかもしれない。
いわば、大英図書館は、
彼の学問の揺りかごになっていた。

そして、世界に影響力を及ぼす仕事を成し遂げる。
もし図書館がなかったら、その仕事はできただろうか。
これは想像でしかないけれど、
家人に原稿をぶん投げられていたかもしれない。
やせこけた子どもたちの前で……



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