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クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

中世、秋の“水海”で歌を詠んだのは? ―三嶋神社―

2025年03月26日 | 神社とお寺の部屋
三嶋神社は水海城址(茨城県古河市)の西側に鎮座している。
ここは、京都聖護院門跡の“道興准后”が訪れた社。
道興が東国を巡ったのは地方の熊野山伏を編成する目的があったとされ、
その旅をのちに『廻国雑記』として書物にまとめた。

文明18年(1486)に三嶋神社を訪れた道興は、ちょうど秋の到来を感じさせる季節だったらしい。
次のような歌を詠んでいる。

 富士のねの麓い月は影しろし空に冴たる秋のしら雲
 をくれゐて聞こそわふれ初かりの都にいそく夕暮の声
 のへの萩ちれはとやまの錦かな (『廻国雑記』より)

道興は三嶋神社の「別当の坊」にしばらく逗留し、数首の歌を詠んだ。
上記の歌はその一部で、
富士山、初雁の声、萩などを同地で実際に見聞きしたものをモチーフとしたらしい。

なお、道興は水海の三嶋神社について「大社ましましけり」と綴っている。
同社に寄せる人々の信仰の厚さを感じるとともに、荘厳な構えであったことを想像させる。
それを物語るかのように、同社の境内には「朝日宮」と「夕日宮」が祀られている。
水陸運の要衝地において、三嶋神社は地域を守ると共に人々に守られていたのだろう。

創建年代は定かではないが、伊豆の三嶋大社の神さまが光る石となって飛んできて、
銀杏の大木の上に留まっていたことに端を発するという。
そのような伝説も興味深い。

三嶋神社の再訪は、風のない穏やかな日だった。
参拝客は私ひとりしかおらず、とても静かだった。
では、春めく日差しを浴びた三嶋神社の前で一句……
と言いたいところだが、私にはその才がない。


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