孟子は性善説の儒家だった。
「人にはみな、人に忍びざるの心あり」とした。
小児が井戸に落ちたら、人はみな、これを助けるであろう。
それは、小児の両親と交際があるからでもなく、人々に褒められたいからでもなく、
見殺しにしたという悪評を怖れるからでもない。
人の不幸を見過ごすことのできない惻隠の心があるから。
一国を統治する王も、人に忍びざるの心をもって、忍びざるの政治を行われれば、
天下を治めること、掌上にめぐらすべし、と説いた。
現下のウクライナ情勢を見るとき、孟子の言葉が浮かんだ。
ロシアは占領したウクライナの南部地域で、ロシアのパスポートを支給し始めた。
明らかな国際法違反で、占領地の既成事実化である。
こんな暴挙が罷り通れば、国際社会で弱小国は主権国家として成り立たない。
シンガポールでの『アジア安保会議』に、ウクライナのゼレンスキーがオンライン参加。
「大きな魚が小さい魚を食べ、小さい魚がエビを食べる」と言う、
シンガポールの故リー・クァンユー元首相の言葉を引用して、国際法保護を訴えた。
他方で、ロシアのプーチンは、18世紀、ピョートル大帝の北方戦争にふれ、
スゥエーデンに勝ったことを「奪ったのではなく、奪還して強国にした」とし、
帝政ロシアの復活が任務だとする。
国際社会は、ウクライナに対し、物心両面での一層の支援が要請される。