字母歌「あめつち」は源順(911年~983年)の家集『源順集』にのっている「あめ
つちの歌・四十八首」によって後世に伝えられたものである。
源順は字母歌「たゐに」を載せる『口遊』の著者・源為憲の師匠で、嵯峨天皇四世
の孫にあたる。
和漢の才にすぐれ『和名抄(和名類聚鈔)』ー平安時代の百科辞書ーを撰進し、ま
た古万葉集(万葉仮名といわれる漢字で書かれている)を読み解き選んだ、「梨壺
の五人」と呼ばれる学者の中心人物である。歌人としても三十六歌仙の一人に数え
られている。しかし、官人としての昇進は遅く、四十三歳で文章生、五十六歳で従
五位下・下総権師・和泉守・能登守の地方官として名をとどめている。
「あめつちの歌・四十八首」はその前書によれば、藤原有忠朝臣藤六が詠んだもの
に対する返しである。藤六は「あめつち」四十八文字を歌のはじめに置いただけだ
が、自分は歌の終りにもその文字を置き、全体を四季に分けて詠んだと順は自慢し
ている。
この前書きでは字母歌「あめつち」を冠にした四十八首を籐六が作り、源順に送ら
れたので、順は「あめつち」を冠と沓に据えた四十八首を藤六に返した。と言って
おり、字母歌「あめつち」そのものの作者が誰であるかは分らない。
私自身この「あめつち」は「秋の七草」に隠した暗号の存在を気付かせるために
とられた手段のひとつの誦文ではないかと思っている。
今回の「あめつち」も村上通典氏の著書『いろは歌の暗号』から「やまうへおくら
」を発見された五段書きの表を土台に解読をすすめていきます。
村上氏の指摘の通り、「あめつち」の五段書きにした図から「山上憶良」を拾って
いくと確かに「山」の形を意識せざるを得ない。
しかし、このままでは「やまうへぬくら」であり「おくら」とするには「ぬ」を
「お」に変えなければ暗号として不完全である。
しかも「いろは」「たゐに」「あめつち」でも「お」の問題が生じている。
「いろは」の場合
『金光明最勝音義』の大字<於>に対して小字がぬけている。
「たゐに」の場合
『口遊』の写本に載る「大為尓」のうたでは「いろは」と比べると「於」の一
字が抜けており、四句目の「阿佐利(於)比由久」と「於」を挿入する必要
がある。
「あめつち」の場合
「あめつち」では「ぬ」を取り「お」を挿入しなければ「おくら」の名になら
ない。
この件は後で考えるとして今は「やまうへぬくら」を正しい「やまうへおくら」に
直す方法を考え出さなければならない。
そのヒントは『中世なぞなぞ集』の中にあった。
『中世なぞなぞ集』鈴木棠三編より
なぞたて さるくりまハす 答 くすり
猿栗廻す 解き方 さる(去る)くり(の)間(は)す
つまり、「さるくりまはす」の「さる」は去るで消え、残りは「くりまはす」
「くり」のあいだ(間)は「す」で 「く(す)り」 となる。
謎立 十三 そのかみうせしうらしまかへる 答 ましら
その上失せし で 「う」 が消える。
「らしま」が返える で 「ましら」。
やののきのあやめ 答 あめ
屋の軒のあやめ(端午の節句)
「や」の「のき(去る、消える)」の「あ(や)め」で「あめ」。
これらの発想を取り入れれば「ぬ」を「お」に変えられる。
五行目の「いぬ(去る)」で「ぬ」が取れる。次の「うへ(上)すゑ(据え)
「ゆわざる(言わざる)<お>」と考えれば、無理なく変換できそうだ。
これで正しい暗号「やまうへおくら」とすることが出来ました。
つちの歌・四十八首」によって後世に伝えられたものである。
源順は字母歌「たゐに」を載せる『口遊』の著者・源為憲の師匠で、嵯峨天皇四世
の孫にあたる。
和漢の才にすぐれ『和名抄(和名類聚鈔)』ー平安時代の百科辞書ーを撰進し、ま
た古万葉集(万葉仮名といわれる漢字で書かれている)を読み解き選んだ、「梨壺
の五人」と呼ばれる学者の中心人物である。歌人としても三十六歌仙の一人に数え
られている。しかし、官人としての昇進は遅く、四十三歳で文章生、五十六歳で従
五位下・下総権師・和泉守・能登守の地方官として名をとどめている。
「あめつちの歌・四十八首」はその前書によれば、藤原有忠朝臣藤六が詠んだもの
に対する返しである。藤六は「あめつち」四十八文字を歌のはじめに置いただけだ
が、自分は歌の終りにもその文字を置き、全体を四季に分けて詠んだと順は自慢し
ている。
この前書きでは字母歌「あめつち」を冠にした四十八首を籐六が作り、源順に送ら
れたので、順は「あめつち」を冠と沓に据えた四十八首を藤六に返した。と言って
おり、字母歌「あめつち」そのものの作者が誰であるかは分らない。
私自身この「あめつち」は「秋の七草」に隠した暗号の存在を気付かせるために
とられた手段のひとつの誦文ではないかと思っている。
今回の「あめつち」も村上通典氏の著書『いろは歌の暗号』から「やまうへおくら
」を発見された五段書きの表を土台に解読をすすめていきます。
村上氏の指摘の通り、「あめつち」の五段書きにした図から「山上憶良」を拾って
いくと確かに「山」の形を意識せざるを得ない。
しかし、このままでは「やまうへぬくら」であり「おくら」とするには「ぬ」を
「お」に変えなければ暗号として不完全である。
しかも「いろは」「たゐに」「あめつち」でも「お」の問題が生じている。
「いろは」の場合
『金光明最勝音義』の大字<於>に対して小字がぬけている。
「たゐに」の場合
『口遊』の写本に載る「大為尓」のうたでは「いろは」と比べると「於」の一
字が抜けており、四句目の「阿佐利(於)比由久」と「於」を挿入する必要
がある。
「あめつち」の場合
「あめつち」では「ぬ」を取り「お」を挿入しなければ「おくら」の名になら
ない。
この件は後で考えるとして今は「やまうへぬくら」を正しい「やまうへおくら」に
直す方法を考え出さなければならない。
そのヒントは『中世なぞなぞ集』の中にあった。
『中世なぞなぞ集』鈴木棠三編より
なぞたて さるくりまハす 答 くすり
猿栗廻す 解き方 さる(去る)くり(の)間(は)す
つまり、「さるくりまはす」の「さる」は去るで消え、残りは「くりまはす」
「くり」のあいだ(間)は「す」で 「く(す)り」 となる。
謎立 十三 そのかみうせしうらしまかへる 答 ましら
その上失せし で 「う」 が消える。
「らしま」が返える で 「ましら」。
やののきのあやめ 答 あめ
屋の軒のあやめ(端午の節句)
「や」の「のき(去る、消える)」の「あ(や)め」で「あめ」。
これらの発想を取り入れれば「ぬ」を「お」に変えられる。
五行目の「いぬ(去る)」で「ぬ」が取れる。次の「うへ(上)すゑ(据え)
「ゆわざる(言わざる)<お>」と考えれば、無理なく変換できそうだ。
これで正しい暗号「やまうへおくら」とすることが出来ました。