川沿いには沢山の有名施設があり陸から見る風景は市内観光で観ている。それを川側から眺められる、それも夜景
の中を食事しながら眺めるのだからリッチな気分になる。
ホテルで待っているとガイドがやって来て、クルーズに参加する他の人をピックアップするためホテルに寄ってか
ら船着き場に向かう。政変騒動の余波を受け、こうしたツアー客も激減しており、この日ガイドが担当した日本人
は私たちを含めて4人だけだった。
有名な観光地に出かけても、以前はもっと大きなグループの日本人や個人客で溢れていたろうに、余りで会わない
から私たちは異国情緒を味わうのにはいい条件だった。
船着き場に着くが出航まで十分な時間があったので、近くにあった小さな土産物屋のような所に出たりは入ったり
して暇つぶしをしている内に、大雨が降り出し、身動きがとれなくなり暇つぶしの延長はこの建屋内だけに限定さ
れてしまう。早い話が軟禁状態のようなもの。
南の雨はザーッと降り直ぐに止むから少しだけ涼しさを運んでくれる。時間が来た時には小降りで出航には何の支
障もなくなっていた。クルーズの客は欧米からの人で、この船は日本人にとって完全にaway状態だった。船に乗
り込み1つのテーブルに妻と座り周りを見回すが、待合所の様子と同じで、私たちから見れば外人さんばかり。
こうしたディナークルーズは大衆観光客向けのものだから、決してゴージャスな料理は準備されず定番のバイキン
グ料理が殆んどだ。
中華料理なのかタイ料理なのか区別のつかない炒め物、スープ風のもの、種類は多く出ているものの、お客が一巡
する頃にはハイエナが餌を漁った跡のような寂しい状態になってしまう。
だが、クルーズも食事時間も長いからお客の胃袋を満足させるために、適当な時間を見計らって料理の追加が成さ
れるから、割り勘勝ち出来る人には見逃してはならない。私たち日本人は食事をしながら話をする習慣はないから、
このような場面では外の景色を眺めて時折『きれいな景色』と呟く程度のもの。
それに比べると外人さんはペチャクチャと話が盛り上がり、そんな所にライトアップされた綺麗な景色でも目に入
れば『Excellent』などと更に盛り上がる。黙々と食事をする日本人夫婦をそんな外人ばかりが囲み、船は静かに
聖なるチャオプラヤー川を遡上して行く。
昼間に見た寺院は光で浮かび上がらされて、別の光景を見ているように綺麗だった。