半ぐれ行政書士の徒然日記-Ⅱ

信州は小諸の半ぐれ行政書士
仕事のこと、地域のこと、様々な出来事を徒然なるままに書き記します

相続のエトセトラ~“タワケモノ”の話

2005年09月18日 | 行政書士の仕事
 相続の相談を受けているとそれぞれの家庭の様子や人間模様が伺える。その中でそれほど頻繁ではないものの偶に出くわすちょっと変わった相談について今日は書きたいと思う。
 
 ある時、Åさんが事務所に相続の相談に来られた。Åさんのお父さんが1年間に亡くなられ、跡取りであるBさん、次男であるÅさん、三男のCさんが遺産分割協議による相続を開始することになったのだという。
 以下は私とÅさんの会話。
 
 Åさん「兄(B)が『親父の遺産を兄弟3人で全て平等に分ける。』というのですよ。」
 半ぐれ「(この田舎では)普通跡取りとなっているBさんが、他の兄弟より余分に遺産が欲しいといって問題になることが多いのに、その提案は大変素晴らしいじゃないですか。何が問題なのですか?」
 Åさん「いや。その“全て平等”というのが問題でCと共に困っているのですよ。実は兄は、自宅である土地も、街場にある農地も、山部にある農地も全て面積を同じにして分けようとしているのです。」
 半ぐれ「同じ面積ですか?それぞれの土地が有する価値で平等に分けるのではないのですか。」
 Åさん「兄は、『それが真の平等というものだ。それが普通なのだ。』と云って頑として譲らないのですよ。」

 Åさんにさらに詳しく聞いたBさんの提案内容は次の通り。
 Bさんは自分が相続する自宅の土地面積(500㎡)を基準にして、街場の国道沿いにある面積530㎡の甲農地について500㎡をBに、残り30㎡を15㎡ずつÅとCで分ける、また交通の不便な山間地にある面積510㎡の乙農地について500㎡をCに、残り10㎡を5㎡ずつÅとBで分ける、というものであり、既に測量を終え、分筆予定線の入った測量図面まで示された。
 それぞれ分けられた500㎡の土地は使用できるものの、僅か残され分割された土地はどう考えても何にも使えない土地になってしまうことは明らかであった。
 嫌がらせや跡取りの裁量(!?)といった不条理な理由でこれまでも似たような案件に出会ったことがあったが、ここまで徹底(!?)した平等主義は聞いたことがなかったので私も唖然とした。聞いてみるとBさんは、極めて冷静に、真面目にこれを提案したという。跡取りであるBさんの家は、その地区でも有数の名家で、“相続争い(争族)”でご近所から笑われることを過度に嫌ったため、このような提案をしたのではないかとÅさんは分析していた。
 そこで、私はÅさんに次のような話をしてBさんを説得するよう提案した。
 “タワケモノ”という言葉があるが、これは「戯け者」と書き、「ばかもの」という意味である。
 しかし、私は使い方が正しくないことを承知しつつ、このような遺産分割協議の相談を受けた際に、その馬鹿さ加減を理解してもらうために使う言葉がある。それは「田分(タワケ)者」という言葉である。
 「田分」とは本来、「田地を分け与えて分家を出す」意味である。しかし、私は敢えてこの「田分」を「そのまま使えば収穫量が上がる優良な田地を無計画に分割し、収穫量を落としたり、使い勝手の悪い田地にすること」、そのようにする「ばかもの」を『田分者』と呼んでいると。
 Bさんの提案こそは、まさしく『田分者』の提案であり、それこそご近所の笑いものになってしまうとBさんに伝えるようにÅさんに話をした。そして、Bさんがあくまで平等に拘るのであれば、それぞれの土地“価値”で評価し、そのままの形で分割し、不平等分を金銭で補う方式(代償分割方式)を採るべきであるとアドバイスをした。



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