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その2. スギ・ヒノキの変色被害解明へ

2008-04-30 | 森林と森づくり
その2. スギ・ヒノキの変色被害解明へ…森林総研
…森林総合研究所四国支所「四国情報」No.21 1999.2より…

ニホンキバチの
共生菌について
保護研究室 田端 雅進

近年、四国地方や中国地方などのスギ・ヒノキ林においてニホンキバチの共生菌(アミロステレウム属菌)による林木の変色被害(写真―1)が顕在化しています。これまで木材穿孔性昆虫の一種であるニホンキバチの生態や防除に関する研究が行われてきました。しかし、変色被害の原因となるアミロステレウム属菌の生態や変色機構などの研究は著しく遅れています。そこで私たちの研究では変色被害を起こす共生菌の種類やその培養的特性、およびスギ・ヒノキ生立木に対する共生菌の材変色性を明らかにすることを目的として、研究に取り組みました。
 どこにニホンキバチの成虫は共生菌を持っているのでしょうか?また、この菌の名前は何でしょうか?成虫の雄と雌を解剖して調べた結果、雌は必ず胞子貯蔵器官(マイカンギア、写真-2)内にカスガイ連結のある菌糸(写真-3)を保持していることが分かりました。マイカンギアから分離した培養菌株は菌叢の色、菌糸成長、菌糸型が同じで、菌糸にはすべてかすがい連結が認められました。培養菌株はポテトデキストロース寒天培地上で綿毛状、黄褐色で不快な臭いがしました。四国地方のスギ伐り捨て間伐林において菌類調査を行った結果、伐り捨て間伐の樹皮上にアミロステレウム属菌きのこが発生していることが発見されました。このきのこを分類学的に検討した結果、二ホンでは未記録のアミロステレウム・ラエビガートム(まだ和名がついていない)と同定されました。マイカンギア由来の菌ときのこ由来の菌は培養的特性がほとんど同じでした。マイカンギア由来の菌を滅菌したスギ丸太に接種した結果、アミロステレウム・ラエビガートムのきのこが6ヶ月後に形成されました。
 以上の結果から、四国地方のニホンキバチのマイカンギアから分離された菌はアミロステレウム・ラエビガートムであることが明らかになりました。また、これまでキバチ類と関係を持つアミロステレウム属菌は、世界的には2種が知られていましたが、本菌がキバチ類と共生関係にあることは今回初めて明らかにされました。
 マイカンギア由来の菌株は材変色性を持つことが確認されていますが、伐り捨て間伐木上に発生したきのこから分離した菌株は材変色性を持つのでしょうか?そこで、私たちはスギ・ヒノキ生立木に対するマイカンギア由来の菌株ときのこ由来の菌株の接種試験を行いました。その結果、接種木すべてに変色が認められました。変色は赤褐色~淡褐色、横断面では紡錘形で、スギよりもヒノキの方が薄かった。マイカンギア由来の菌株の接種による変色の形状および大きさと、きのこ由来菌株の接種による変色の形状および大きさは、ほとんど同じでした。接種した菌が接種木すべてから再分離され、コントロールから分離されなかったことから、きのこ由来の菌株もマイカンギア由来の菌株と同様の材変色性を持つことが明らかになりました。                    


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