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針広混交林のすすめ(効用)、

2008-04-30 | 森林と森づくり
針広混交林のすすめ(効用)、
―森林総合研究所四国支所の承認を得て、そのまま掲載しました―
その1.  堆積有機物層の地表保護効果(林床の被覆度検証)…森林総研
…森林総合研究所四国支所「四国情報」No.20 1998.7より…(掲載許可済)
豊かな森林は地表の保護から
-堆積有機物層の地表保護効果-
                         林地保全研究室 三浦 覚
 森林の地表では多くの物質が意外なほどダイナミックに動いています。林内に落ちた葉は、一見ひとところに留まっているようにも見えますが、分解され腐植となって土壌中に浸透したり、一部は養分として樹木に再吸収されたりしています。またあるものは降雨がもたらす水の力によって、土砂とともに斜面に沿って流されてしまいます。        このような地表での物質の動きのバランスが取れているとき、森林は多様な機能を効率的に発揮しながら順調に成長していくことが期待されます。 ところが、近年、針葉樹人工林では間伐遅れなどで林地の管理がおろそかになり、環境保全機能や木材生産力の低下が懸念されています。このような林地の荒廃化は、直接的には林内雨による雨滴衝撃や表面流の発生によって土壌が浸食されるためであると考えられます。土壌の浸食を防ぐためには、堆積有機物層や林床植生などの地表を保護する被覆の存在が不可欠です。そこで私たちの研究室では、堆積有機物層に注目し、その地表保護効果を明らかにすることを目的として研究に取り組みました。 森林の地表の様子は、樹種によってどのくらい異なるでしょうか。地表の被覆状態の違いを明らかにするために、間伐遅れのヒノキ林、間伐遅れのスギ林、壮齢アカマツ林、落葉広葉樹二次林の4種類の林冠が閉鎖した林分において、地表の様子を観察し被覆度の季節変動を調査しました。写真に見られるように、落葉落枝がかさ高く積み重なったスギ林、松葉の厚いマットに覆われたアカマツ林、落葉が敷きつめられたような落葉広葉樹林、これらと対照的に地表の被覆を失って荒れ果てたヒノキ林と、4林分の地表の印象は全く異なったものでした。このような地表の様子の違いを被覆割合
として測定した結果(図1)をみると、4林分の中で、間伐遅れのヒノキ林の地表被覆度は、約50%にまで著しく低下していました。これに比べて、他の林分の地表被覆度は高く、とりわけ壮齢アカマツ林は年間を通じてほぼ完全に地表が被覆されていました。またいずれの林分においても、林冠が閉鎖して林内が暗くなり林床植生が衰退した森林では、地表の保護はもっぱら堆積有機物層にたよることになります。では堆積有機物層は林地の土砂移動の抑制にどれほどの効果があるのでしょうか。地表被覆度が最も低かった間伐遅れのヒノキ林と最も高かった壮齢アカマツ林において、堆積有機物層が林地表層の土砂移動に及ぼす影響を明らかにるために、移動土砂量の測定と堆積有機物層の除去試験を実施しました(図2)。
1996年6月の除去処理前は、壮齢アカマツ林の移動土砂量はヒノキ林の移動土砂量の100分の1に過ぎませんでした。これは図1で示した両林分の地表被覆度の差が原因であると考えられます。ところが、除去処理後は、壮齢アカマツ林の移動土砂量は数十倍にまで急激に増加し、間伐遅れのヒノキ林対照区と同レベルに達しました。また、壮齢アカ
マツ林の除去区では、土壌構造の発達程度の低下や粗大孔隙の減少など土壌物理性が悪化していました。
以上のように、地表堆積有機物層は土砂移動の軽減効果が高く、林地の保護に対して重要な役割を担っていることが明らかになりました。平成7年3月現在、四国地方4県の人工林面積は86万ヘクタールで、その45%が人工ヒノキ林です。このうち15~40年生の若齢林分は26万ヘクタールあり、人工ヒノキ林全体の68%を占めています。四国地方は豪雨の頻度が高く急傾斜地が多いため、手入れが行き届かない場合には、これら若齢ヒノキ林の多くが地表の被覆を失って土壌浸食の危険にさらされる可能性が高くなります。これを防ぎ、先人が残してくれた多くの森林を豊かな森林へと育て未来の世代に伝えるためには、間伐や除伐などの保育施業を着実に実行し、森林の地表が十分に被覆された状態に維持管理することが不可欠です。
なお、本研究は農林水産技術会議事務局特別研究「人工針葉樹林における土壌劣化機構の解明」のもとに行われたものです。

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