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三嶺の森をまもるみんなの会の活動内容と成果・・・その2

2009-03-03 | 森林と森づくり
これまでの「みんなの会」の活動内容と成果
                      三嶺の森をまもるみんなの会 代表 依光良三

1. 植生保護柵の設置と成果
植生保護柵の設置は、当初、希少種や三嶺を代表する植生を何とか保護しなければ壊滅してしまうという現状認識のもと、緊急避難的ではあるが、残っている種を保護していこうとなった。みんなの会の定例会において高知県の環境共生課で財源措置がとれることがわかり、2008年3~4月に高知中部森林管理署の協力のもと「みんなの会」ボランティアによってさおりが原とカンカケ谷に計6カ所の 保護柵の設置が行われた(県は08年度 にも6カ所に設置しつつある)。



▲防護柵設置前のササ枯れの状況



▲みんなの会ボランティアによる設置作業

それに引き続き、四国森林管理局も保護柵設置のための資材を調達し、設置場所を協議のもと、さおりが原からカヤハゲに至る稜線のウラジロモミ群落と、カヤハゲのササ原及び韮生越にみんなの会ボランティアが設置した(設置後の植生が蘇った状況は、速報(ネットを張ってこれだけ効果が出ました!)を参照されたい)。


保護柵内で蘇った植生とモニタリング活動
 さおりが原、カンカケ谷に設置した希少種を守るための保護柵では、5月からほぼ月1回のペースで「みんなの会・高知大グループ」によってモニタリング調査が始まった。

 さおりが原では、次頁写真に見られるようにシカ食害以前にあっては下層植生が生い茂り、絶滅危惧種であるムカゴツヅリやマネキグサ等の草花が夏には花を咲かせ、大木とあいまって自然林の幽玄さを醸し出していた。ところが、2005年頃から被害が始まり、07年にはまったく植生の無い(春から初夏にかけてはシカの嫌いなバイケイソウが茂るが、)林床砂漠の様相を呈する。モニタリングを開始した5月には、保護柵内では、30種を超える植物の芽生えが見られ、柵外との差は歴然であった。



▲林床に緑が茂る2002年のさおりが原(photo by aoki)



▲林床砂漠と化したさおりが原(07年設置前)


5月に柵外でマネキグサの芽生えが確認されたが、6月にはシカに食べられたとみえ、以降まったく見られなくなった。
 なお、詳しいモニタリング結果は「報告編」の 渡津・石川(高知大グループ)の報告を参照されたい。



▲さおりが原保護柵内でのモニタリング調査


さおりが原~カヤハゲ・韮生越の異常なシカ生息密度の中で
 なお、さおりが原はシカ生息密度が最も高く、昨年度の四国森林管理局の調査によると、修正しない場合1キロ平方メートル当たり200頭超、糞虫条件からの修正値でも約80頭と非常に高い値を示した。これは、自然林での適正生息頭数5頭からすれば異常としか言いようがない数字である。比較的傾斜が緩くシカの生息環境に適しているからであろう。



▲カヤハゲで目撃されたシカ(photo by osioka)


 2007年9月と11月にさおりが原を訪れたとき、いきなりシカの親子と出会った。辺りは糞だらけ、異臭が漂い、そして林床植生が失われ砂漠状態になっているのにも驚いた。見た目には清冽な水も大腸菌が多くて飲める状態ではない。樹齢260年のトチの巨木の周辺やそこから右手裏側の奥に分け入ってもササ枯れの荒涼とした風景が続いていた。

 ところが、2008年春以降さおりが原のシカ密度は大幅に減少したと思われる。辺り一面にあったシカの糞が、ところどころにしか見られなくなったからである。一部のササを残してほとんどの林床植物を食べ尽くした結果、食料難に見舞われ、中には餓死したと思われる亡骸も見つかったほどで、多くのシカは別の場所に移動したのであろう。

 それでも、ササや木の芽、草花等の植物はそれなりの芽生えがあるので、常に巡回しながら食べて生きられる程度のシカ(カモシカも)が生息している。カヤハゲ辺りも同じであるが、目撃数は最も多く、今年の夏一度に10頭くらいのシカが分散してエサをあさっていたという。このことは、保護柵内での植生回復と柵外での植生喪失という状況を説明していよう。

(次回に続く)

三嶺の森をまもるみんなの会のホームページより分割転載



三嶺の森をまもるみんなの会のホームページより

今、県下最大の貴重な自然林、「三嶺」の森は、シカの食害によって、傷つき痛んでいます。特に、稜線部の笹と樹木の7割までが被害に遭い、枯死する樹木も増加の一途をたどっています。このまま放置しておけば、貴重な自然植生がますます失われるばかりではなく、山林崩壊、土砂流出等の危険性が高まります。
 そこで、危機感を抱き、保護と再生を目指すNGO、NPOが結集して、2007年8月に「三嶺の森をまもるみんなの会」を設立しました。県民のみなさまにこの問題をできるだけ広く知っていただくために、行政とも協力して、シンポジウムや樹木へのネット巻き等を行い、少しでもこの大切な自然を守りたいと活動しています。



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