内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

学生たちの文章力と思考力を鍛え上げる

2020-10-17 23:59:59 | 講義の余白から

 「日本の文明と文化」という日本語のみで行う授業は、今年も去年と同じ映画を教材としながら、二週間に一回、日本語で課題レポートを書かせている。観る映画は同じだが、課題として出す問いは去年とは変えてある。
 去年もとても優れた文章を書く学生が何人かいたが、他方では、日本語としてはきちんとしているが、内容的にはそつなくまとめているだけで、あまりよく考えているとは思えない、悪い意味で優等生的なレポートで済ませている学生もいた(添削は楽でいいけれど、仕事としてはつまらなかった)。
 今年の三年生は、さらに優秀な学生が多い。彼らが二年生のときから、よくできるし反応の良い学年だと同僚間でとても評価が高いクラスだったが、私も昨年度後期に近現代日本文学の授業を担当して、対面はわずか六回しかできなかったが、その間、確かに、筋の良い質問が毎回のように複数出て、とても気持ちよく授業ができるクラスだった。
 今年度、彼らの日本語での文章力の高さに驚かされている。しかも、よく考えて書いている。もう自分の文体をしっかりもっている学生もいる。言語感覚の良さを感じる。
 今、第三回目のレポートを添削しているところだ。授業では、二回に渡って『かぐや姫の物語』を取り上げ、死と再生の物語として見る解釈を提示した上で、かぐや姫の罪と罰について自分の解釈を書きなさいという課題を出した。
 一応字数は六〇〇~八〇〇字にしてあるが、「書きたいだけ書いていいよ」とも言ってある。実際、目安の字数を大幅に超えた「大作」を書いてくれる学生が毎回数人いて、しかも実に斬新な解釈を見事な日本語で展開できる学生もいる。今回の最大作は、なんと三〇〇〇字を超えている。それをわずか数日で書き上げるのだから、大したものである。
 レポートは Moodle の課題提出用のセクションに提出させている。提出されると同時に私のメールボックスに知らせが届く。添削の平均所要時間は十五分ほどで、原則、即返す。特によく書けていたレポートには、「よく書けていた」「あなたの解釈は実に面白い」「あなたの作品分析を高く評価します」など、一言添えて返す。すると、「ありがとうございます」「認めてもらえてうれしいです」「今回は特に真剣に取り組んだので、先生の評価が嬉しいです」など、すぐに返事が返ってくる。
 他方、時間がなかったのか、本人らしからぬ間違いが目立つレポートが一つあった。それに対しては「今回は、いつもの君らしくない間違いが多かった。添削箇所をよく読み直し、なぜそう直されたのか考えてみなさい」と添えて返した。
 対面だろうが遠隔だろうが、彼らの文章力と思考力を一年かけて鍛え上げていくこと、それが私のミッションである。