今日から新しい年度の授業が始まりました。今年から新カリキュラムが施行されます。このカリキュラムが施行される五年間、細部の修正は毎年可能ですが、大幅な内容変更は原則できません。
前カリキュラムとの大きな変更点は、ほぼすべての授業が一コマ2時間から1時間半に短縮され、その分新たな科目が追加されたことです。学生たちにより多様なテーマを提供するというのがその狙いです。それと同時に、学部最高学年である三年の授業では、専任教員は皆自分の専門分野について授業を一コマ持つことができるようになりました。
私は月曜日に二コマ担当します。午前8時半から10時までの日本学科学部三年生必修の「日本思想史」と午後2時から3時までの応用言語学科「英語・日本語コース」の一年生対象の「日本文明入門」です。
どちらも教科書があるわけでもなく、与えられたテーマがあるわけでもなく、私が自由にテーマを選んで話せばいいので、初日の今日は、挨拶として、自分が最も得意とし、これまで授業や講演で何度も取り上げてきたテーマについて話ました。
三年生には、「例の」言わざるを得ないくらいこれまで繰り返し話してきたし、このブロクでも連載記事にしたことがある、〈なつかし〉-〈nostalgie〉-〈Sehnsucht〉の比較意味論的考察について話しました。入念に仕上げられたパワーポイントがすでにありますから、それを適当に端折って使えばよいので準備も簡単です。内容は完全に頭の中に入っているのでノートも必要ありません、今日も最初から最後まで文章が自発的に形成・出力されるにまかせればよく、学生たちも最後まで集中力を切らすことなく聴いてくれました。
一年生の方は、まだ入学したてですから、いきなり難しい話をしても面食らうだろうと思い、『かぐや姫の物語』を題材にして、そこに高畑勲がいう「積極的無常観」がどのように表現されているか、それと近い考えを村上春樹が2011年6月にカタルーニャ国際賞受賞の際のスピーチで語っていることにも触れながら、二人が「日本人に昔からある感受性」として何を強調しているかという話をしました。この話もいわば十八番の一つで、ほぼなんの準備も要りません。ただ、こちらの授業は一時間なので、映画の重要なシーンそれぞれについては詳しく話すことはできませんでした。ところが、授業後に一人の女子学生が近づいてきて、「小さい頃、この映画を観たとき、ラストがとても悲しくて、観た後20分間泣き続けたんですけど、今日の先生の話を聴いて、まったく違う観方ができることがわかってとてもよかったです」と嬉しそうに感想を話してくれました。
かくてまずは順調に新学年度の第一歩を踏み出すことができました。
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