2.年金機能強化法による制度改正
(桜井年金事務所 副所長 坂田隆志氏)
(奈良年金事務所 お客様相談室室長補佐 森田典之氏)
(大和高田年金事務所 厚生年金適用調査課 山本妙子氏)
※1.「協会けんぽの事業状況とお願い」については
前ブログ((1)協会けんぽの事業状況について)をご覧ください。
「年金機能強化法」は、正式には
「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」
という長い名称。
名称通り「年金の財政基盤を強化する」施策と「年金の最低保障機能を強化する」施策、
そしてそれに合わせて要望のあった事項をいくつか取り込んでいるものだろう、と感じた。
今回の研修では、4月施行分について説明された。
年金機能強化法の全事項が4月から施行される訳ではない。
例えば「受給資格期間を25年から10年に短縮する」や「短時間労働者への厚生年金保険の適用拡大」も
法律には含まれているのだが、
このあたりは今回は施行されない範囲。
4月施行分についてを、大きく以下の3つに分けて説明された。
■保険料の納付
(1)保険料免除期間に係る保険料納付の取扱いの改善
(2)国民年金保険料の免除等に係る遡及期間の見直し
(3)付加保険料の納付期間の延長
(4)国民年金保険料の2年前納制度の創設
■年金給付
(5)遺族基礎年金の支給要件に係る男女差の解消
(6)未支給年金の請求権者の範囲拡大
(7)老齢年金の支給繰下げに係る支給開始時期の改善
(8)国民年金の任意加入被保険者期間中の保険料未納期間に関する合算対象期間への算入
(9)障害年金の額改定請求に係る待機期間の一部緩和
(10)特別支給の老齢厚生年金に係る障害者特例の支給開始時期の改善
(11)所在不明の年金受給権者に係る届出制度の創設
■産休期間中の厚年の取扱い
(12)産休期間中の保険料免除及び従前標準報酬月額の特例
【保険料の納付】
(1)保険料免除期間に係る保険料納付の取扱いの改善
・法定免除期間について、保険料が納付できるようになった。
遡及して法定免除となった場合について、現行の「必ず還付」から
「希望すればそのまま保険料納付済期間にできる」ようになった。
・保険料前納後に法定免除・申請免除が承認された場合、
現行では「前納保険料は還付されない」が、
今後は「還付か保険料納付済期間とするかを選択できる」ようになった。
※個人的には、この改正で前納しやすくなったのでは、と感じた。
従来だったら後に免除されても還付されなかったので、
「前納して、後で免除されたら損」と感じていたところ、
「免除されたら、後で前納保険料を還付してもらえば良い」と考えられるだろう。
(2)国民年金保険料の免除等に係る遡及期間の見直し
申請免除の対象月が「申請前直近の7月以降」から「過去2年分まで」に拡大された。
(3)付加保険料の納付期間の延長
付加保険料を納期限までに納付しなかった場合、即「納付辞退、以降納付不可」から
「過去2年まで納付できる」ようになった。
※個人的には、付加保険料を納付して受給できる「付加年金」はお得な制度だと思う。
月400円の保険料だが、
老齢基礎年金を受給するようになると納付月数×200円の付加年金が受給できる。
(例えば3年納付すると、保険料額は400円×3年×12ヵ月=14,400円、
付加年金額は1年あたり200円×36か月=7200円なので、
2年間老齢基礎年金を受給すれば「元が取れる」ことになる。)
国民年金の第1号被保険者(自営業者など)で、
かつメインの保険料を(免除などではなく)納付している必要はあるのだが。
※ただ恐らく、最初から付加保険料を払う手続をしていなかった者が
遡って付加保険料を払うようになることはできないと思う。
ここは、いちおう確認してみたい。
(4)国民年金保険料の2年前納制度の創設
現在の「1ヵ月前納」「6ヵ月前納」「1年前納」に加えて、「2年前納」制度が設けられた。
平成26年の場合、14,800円(だいたい1ヵ月分の保険料)が割引された。
納付方法は「口座振替」限定。申込期限は2月末。
4月から翌々年3月分までが4月末に一括で自動引き落としされる。
※2月末が期限なので、研修の時点では既に遅かった。
「1年前納」と同じように、向こう2年間ではなく「4月から翌々年3月」限定であること、
納付額が大きい(平成26年の場合、355,280円)ことから、
どの程度の人が利用したか疑問ではある。
※個人的には、来年度の保険料は確定している訳ではない(物価上昇率等によって変動する)ので、
その差額を精算するのかしないのか、
精算するとしたらどのように精算するのか、が気になっている。
「年金給付」、「産休期間中の厚年の取扱い」については
別途紹介します。