朝寝-昼酒-夜遊

日々感じたことを思いのままに書き散らすのみ。
※毎週土曜更新を目標にしています。

「休業支援金」について気になること

2020年06月22日 14時00分53秒 | お仕事

「休業手当ゼロ」の労働者に支援金、特例法成立も…企業からの「妨害」などに懸念

新型コロナウイルスの影響で仕事が休みになったのに、休業手当を受け取れない労働者に対して、休業支援金の支給などができるようにする雇用保険法の臨...

弁護士ドットコム

 


>新型コロナウイルスの影響で仕事が休みになったのに、休業手当を受け取れない労働者に対して、
>休業支援金の支給などができるようにする雇用保険法の臨時特例法が6月12日に成立した。

以下のような疑問(考えるべき課題)がある、と感じる。
1.従業員にとって、法律通りの「休業手当」よりも「休業支援金」が有利になるのではないか?
2.従業員が「休業支援金」を受けた場合、労基署が事後「休業手当を支給していない」として
 取り締まりを(現実に)行うのか?
 その場合、事業主より「休業手当」を支給させ、従業員に「休業支援金」を返金させるのか?

この1.を中心に考えてみたい。

【従業員にとって、「休業支援金」は法定の「休業手当」より有利なのでは?】
法律では「休業前賃金の80%(月額上限33万円)」となっている。

この「休業前賃金」の計算方法は、この記事だけではよく分からないが、
例えば「育児休業給付金」同様、
休業前6か月間の賃金を180で割ったもの、と考えると
だいたい「平均賃金」と同じになる。

となると、「休業手当」は法定では「平均賃金の6割以上」だから、
法律通り支払っている事業主に比べると、
この「休業前賃金」の方が高い、ということになる。

さらに、「休業手当」は課税対象であり、そこから所得税が差し引かれる。
それに対してこの「休業支援金」は非課税なので、
その点からも従業員にとって有利になるのでは、と考えられる。

従業員にとっては、法律通り「休業手当」の支給を受けるよりも、
「休業支援金」を受給した方がトク、ということになるのではないか。
また、既に「休業手当」を法律通り受給した従業員も、
「今後は「休業手当」は要らないから、「休業支援金」の申請をしたい」と
言ってくるかも知れない。
その際、
「法律的に、「休業手当」を支給する義務があるから、少ない額で我慢してくれ」と
事業主が従業員に言うことになるのか?

このあたり、非常に「いびつ」な構造になっている、と感じる。

【労基署の取り締まりについて】
「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合において」休業手当を支払うことは
事業主の義務であり、
労働基準監督署による指導・監督の対象であるし、
事業主には「三十万円以下の罰金」を科せられる可能性がある。

ただ現時点で、今回の「新型コロナウイルス」に伴う休業について、
これが「使用者の責に帰すべき事由」にあたるのか、「天変地異」にあたるのかは
不明確である。
参考:
休業手当について(2)「使用者の責に帰すべき事由」とは? - 朝寝-昼酒-夜遊
休業手当について(2)「使用者の責に帰すべき事由」とは?(「経営上の障害」について) - 朝寝-昼酒-夜遊


個々の事情で変わってくるものと思われるが、
余程明確に「使用者の責に帰すべき事由」にあたる事案でない限り、
労働基準監督署としてすぐに「指導」するのは難しいのでは、と思う。

となってくると、「休業手当」が支給されない場合に、
即、労働基準監督署から「休業手当」を事業主が支給するように指導する、ではなく、
せいぜい「休業支援金を受給できるように、事業主は協力しなさい」という方向に
なるように思う。

そして、こうして「休業支援金」が受給された後になって、
「休業手当」を支払うように、と指導するのだろうか。
先ほども見たように、
恐らく、法定の「休業手当」の方が、「休業支援金」より低額だろう。
従業員についても、「本来受給できない「休業支援金」を受給しようとした」として
不正受給に該当するとも言い難い。
(実際には働いていて給与を支払われているのに、
 さらに「休業支援金」を二重取りした、というのであれば別だが。)

その状況で、他の「給与不払い」等の事案で忙殺されている労働基準監督署が、
敢えて(従業員も損をするかも知れない)この取り締まりを優先するだろうか。

# 強いて言えば、本来支払うべき「休業手当」を事業主が支払っていなかった場合には、
 国が支払った「休業支援金」の一部に充てるものとして
 国が徴収する、という発想はあるのかも知れない。

まだ未確定な部分(計算方法、手続など)が多い制度ではあるが、
関心は高いと思われるので、注視していきたい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

お気に入りのクラシックCD ~交響曲・覇道編~

2020年06月18日 09時42分48秒 | 音楽
個人的にお薦めの演奏、というのもあったりする。

※画像をクリックすると「楽天」のページに飛びます

・ベートーヴェン交響曲第7番 (Cond.朝比奈隆 大フィル)



・ベートーヴェン「第九」 (Cond.アーベントロート ライプツィヒ放送響)



・ベルリオーズ「幻想交響曲」 (Cond.チェリビダッケ ミュンヘン・フィル)



・シューマン 交響曲全集 (Cond.パレー デトロイト響)



・メンデルスゾーン「スコットランド」 (Cond.クレンペラー フィルハーモニア管)



・ブラームス 交響曲全集(Cond.ベイヌム ロイヤル・コンセルトヘボウ管)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

お気に入りのクラシックCD ~交響曲・王道編~

2020年06月14日 15時39分12秒 | 音楽
ピアノを習ったこともなく、
「クラシック音楽」なぞに触れていなかった私が聞くようになったきっかけは、
中学入試だった。

試験科目に副教科(音楽、図工、体育。家庭科もあった?)があり、
音楽の過去問を見ていると放送問題がある。
曲を聞いて、作曲家や国籍を答えなくてはいけないらしい。

ということで、母や伯母が(当時)レコードやらカセットテープやらをくれて、
聞き始めた。
それが小6の冬。付け焼刃もいいとこ。

結局、その年は放送問題は出題されず、
「ト音記号の正しいものはどれか選べ」みたいなのが出て、
そのおかげかどうかは分からないが合格できた。

ただ音楽を聴く趣味は未だに残っている。

好きな曲・演奏は色々あるのですが、
まずは「交響曲・王道編」ということで、
ごくごくメジャーなものから。

※リンクをクリックすると、「楽天」のページに飛びます

モーツァルト 交響曲第39番・40番・41番 (Cond.ワルター ニューヨーク・フィル)



ベートーヴェン「第九」 (Cond.フルトヴェングラー バイロイト祝祭管)



ベルリオーズ「幻想交響曲」 (Cond.ミュンシュ パリ管)
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

ベルリオーズ:幻想交響曲 [ シャルル・ミュンシュ ]価格:1282円(税込、送料無料) (2020/6/14時点)



チャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」(Cond.ムラヴィンスキー レニングラード・フィル)



次は、そこまでメジャーではないが、個人的にオススメの「覇道編」を(笑)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2次補正予算の成立と雇用調整助成金など

2020年06月13日 13時18分05秒 | お仕事
先日、2次補正予算が成立し、
それに伴って厚生労働省のサイトも更新されています。

1.雇用調整助成金(新型コロナ特例)
 ・助成額の上限額の引上げ
 ・助成率の拡充
 ・緊急対応期間の延長
 ・出向の特例措置等
 ⇒雇用調整助成金(新型コロナ特例)

  雇用調整助成金の様式ダウンロード(新型コロナウイルス感染症対策特例措置用)

  雇用調整助成金の再申請様式ダウンロード(新型コロナウイルス感染症対策特例措置用)(再申請用)

2.新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援助成金(創設)
 ⇒新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援助成金をご活用ください

3.小学校等休業等時保護者休暇取得支援助成金(6月12日版)(上限額の引上げ、対象期間の延長)
 ⇒新型コロナ休暇支援

詳細は、別途アナウンスします。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

6月1日より、職場における ハラスメント防止対策が強化されます!

2020年06月08日 11時19分00秒 | お仕事
この6月から、大企業を中心に、
職場における「ハラスメント防止対策」が義務化・努力義務化されていますので
対応が必要です。
2020年(令和2年)6月1日より、職場におけるハラスメント防止対策が強化されます!(PDF)

1.パワーハラスメント防止措置が事業主の義務になります。
 ※大企業。中小企業は2022年4月から義務化で、それまでは「努力義務」です。)

特に、職場におけるパワーハラスメントの防止のために講ずべき
以下の「措置」が義務化されます。

1)事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
 □職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、
  労働者に周知・啓発すること
 □行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、
  労働者に周知・啓発すること

2)相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
 □相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
 □相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること

3)職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
 □事実関係を迅速かつ正確に確認すること
 □速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと(事実確認ができた場合)
 □行為者に対する措置を適正に行うこと(事実確認ができた場合)
 □再発防止に向けた措置を講ずること(事実確認ができた場合、できなかった場合とも)

4)そのほか併せて講ずべき措置
 □相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、
  その旨労働者に周知すること
 □相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取り扱いをされない旨を定め、
  労働者に周知・啓発すること

上記の「措置」以外にも、
事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止
「措置」ではない、事業主及び労働者の責務、
その他の「望ましい取組」が規定されます。
# こちらも、中小企業については2022年3月までは「努力義務」です。 

そのため、パワーハラスメントについても、
セクシュアルハラスメントや妊娠・出産等に関するハラスメントと同様、
都道府県労働局長(窓口は「雇用環境・均等部(室)」や「総合労働相談コーナー」)による
助言・指導、調停による紛争解決援助の対象になってきます。


2.職場におけるセクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント
 防止対策が強化されます。

従来より雇用管理上の「措置」を講じることは大企業・中小企業とも義務化されていましたが、
今般、パワーハラスメント同様の「不利益取扱いの禁止」や「事業主及び労働者の責務」が義務化され、
「自社の労働者が他社の労働者にセクシュアルハラスメントを行った場合の協力対応」が努力義務化されます。

「ハラスメント」発生は、
職場環境悪化に伴う生産性の低下や、
離職者の増加・入職難による人手不足に繋がります。
そして何より、「従業員が生き生きと仕事をする」を阻害することになります。

根本的には職場の「風土」改善が重要ですが、
今回の「ハラスメント防止対策の強化」を契機として
事業主の意思の浸透、相談窓口の設置・有意義化を進めるのも
一つの方法だと考えます。

あかるい職場応援団 -職場のハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ)の予防・解決に向けたポータルサイト-
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

休業手当について(4)「雇用調整助成金」との関係

2020年06月06日 19時01分05秒 | お仕事
「休業手当」について何日かに分けてお話ししてきました。

休業手当について(1)そもそも「休業手当」とは?
休業手当について(2)「使用者の責に帰すべき事由」とは?
休業手当について(2)「使用者の責に帰すべき事由」とは?(「経営上の障害」について)
休業手当について(3)「平均賃金の百分の六十以上」とは?

最後は、最近ニュースなどで取り上げられる機会の多い
「雇用調整助成金」との関係について触れたいと思います。

結論から言いますと、
各個人に支払う「休業手当」の金額と、「雇用調整助成金」の支給額とは、直接には関係がない
と理解した方が、誤解は少なくて済むのではないか、と考えます。
これは、本来の「雇用調整助成金」の計算方法でも、
今回の「新型コロナウイルス」対応の中でかなり簡略化された計算方法でも、同じです。

「雇用調整助成金」の支給額の計算方法は、
a.(何らかの方法で計算した)その事業所で、従業員に支給される1日あたりの給与額
×
b.助成率
×
c.延べ休業日数
です。
ここでは、実は「個々の従業員に支給した休業手当の金額」は直接出てきません。

特に、本来の計算方法では、
「a.その事業所で、従業員に支給される1日あたりの給与額」は、
昨年度提出した「労働保険料申告書」で記載された「賃金総額」を、
「所定労働日数×延べ雇用保険被保険者人数」で割って
雇用保険被保険者1人1日当たりの賃金額を計算します。


これをベースにして、さらに「助成率」と「延べ休業日数」を掛けます。
例えば、一昨年度は給与の高い方が多く(=「雇用保険被保険者1人1日当たりの賃金額」が高い)、
今回の給与の安い方が多く休業したような場合ですと、
結果として、実際に支払った「休業手当」よりも、支給される「雇用調整助成金」の金額が多くなる、
なんてケースも発生し得ます。

何故そうなるかと言えば、繰り返しになりますが、
本来の計算方法ですと、
各個人に支払う「休業手当」の金額と、「雇用調整助成金」の支給額とは全く関係ない
からなのです。

ただ、個々の休業手当を考慮しなければならないケースがあります。
それは、助成金では一般的に、「労働法規に違反してはならない」という条件があるからです。
ここで、「休業手当は、平均賃金の100分の60以上支払わなければならない」という
労働基準法の条文が生きてきます。
助成金の支給額の計算には、個々の従業員に支給される「休業手当」の金額は関係ないのですが、
そもそも助成金を受給するためには、労働基準法を守っていなければならない、ということで
各従業員に対する「休業手当」の金額がチェックされることになります。

# 今回の「新型コロナウイルス」対応の簡略版では、
 「a.その事業所で、従業員に支給される1日あたりの給与額」を、
 「実際に従業員に支払った「休業手当」の金額」として計算します。
 ただ、その場合も個別に各従業員に支払った金額から直接助成金額を計算するのではなく、
 「全従業員に支払った休業手当の総額」を「休業総日数」で割って、
 「1人1日あたりの休業手当額」を計算し、
 そこに「b.助成率」と「c.休業延べ日数」を掛けて助成金額を計算する、という流れになっています。


この流れに意味があるのが、(今回の補正予算で変わりますが)
どの段階で「上限金額」を適用するのか、という部分です。
本来の計算方法法であれば「a.その事業所で、従業員に支給される1日あたりの給与額」×「b.助成率」を計算した段階で、
簡略版であれば「1人1日あたりの休業手当額」を計算した段階で
上限額と比較し、
上限額を超えていれば上限額を適用して、助成金の支給金額を計算する、という流れになります。
個人個人で計算して、「この人は上限額を超えている」「この人は超えていない」と判断する、
という訳ではないのです。
# 今回の補正予算の中で、「1ケ月あたり33万円」というような文言があって、
 これはどのように適用されるのか?要注視、と思っていますが。(2020.6.6現在。)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

休業手当について(3)「平均賃金の百分の六十以上」とは?

2020年06月03日 09時55分34秒 | お仕事
休業手当について、労働基準法では、
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、
その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」
と規定されています。

前回までで、このうち「使用者の責に帰すべき事由」についてお話ししてきました。
休業手当について(1)そもそも「休業手当」とは?
休業手当について(2)「使用者の責に帰すべき事由」とは?
休業手当について(2)「使用者の責に帰すべき事由」とは?(「経営上の障害」について)

今日は、「休業手当」として最低限支払わなければならない「平均賃金の百分の六十以上」について
説明したいと思います。

1)そもそも「平均賃金」とは?

「平均賃金」という言葉は、「休業手当」に限らず、様々な局面で出てきます。
例えば「解雇予告手当」「年次有給休暇中の賃金」「減給の制裁の上限額」などです。
計算方法としては共通で、
a.算定すべき事由の発生した日以前3カ月間に、
 b.その労働者に対して支払われた賃金の総額を、
 c.その期間の総日数で除した金額」です。
但し、賃金締切日がある場合には、
「算定すべき事由の発生した日」の、直前の賃金締切日から起算していきます。
# また、出勤日数が少ないパートなどの場合は、最低額の保証があります。

a.「算定すべき事由の発生した日以前3カ月間」
休業手当の場合は、「休業を開始した日」になりますので、
例えば、
末日締の事業所で
4/27に休業計画を周知し、5/7から実際に休業を開始した場合ですと、
直前の賃金締切日は(5/7の直前の)4/30になりますので、
「2/1から4/30」の3カ月間の賃金額を見ることになります。

また、産前産後、育児・介護休業中、試用期間中などは除きます。
これらの期間は、給与が支給されない、または通常より給与が低いことが多いので、
平均賃金の計算に入れると金額が小さくなってしまうからです。

b.「賃金の総額」
原則として、全ての賃金(固定給、時間外労働の割増賃金、通勤交通費など)が含まれます。
但し、「賞与」「臨時に支払われたもの」などは含まれません。

c.その期間の総日数
ここが紛らわしいのですが、平均賃金を計算するときは
「所定労働日数」ではなく、「総日数」(暦日数)で割ることになります。
例えば、
賃金が固定給300,000円と交通費15,000円の場合で、
2月:所定労働日数20日(暦日数:29日)
3月:所定労働日数22日(暦日数:31日)
4月:所定労働日数21日(暦日数:30日)
とします。
この場合、所定労働日数ベースで計算しますと、
  (300,000円+15,000円)×3ケ月 / 20日+22日+21日 = 15,000円 
になります。
欠勤控除や日割計算する場合は、所定労働日数ベースで計算することが多いのではないでしょうか。

ところが、平均賃金の計算では、暦日数で計算しますので、
  (300,000円+15,000円)×3ケ月 / 29日+31日+30日 = 10,500円 
になるのです。

2)平均賃金の百分の六十(6割)
「休業手当は6割」というところから、
何となく「(欠勤控除される額である)15,000円の6割=9,000円」が最低限支給される、と
思っておられる方が(事業主、労働者とも)多いのですが、
労働基準法で最低限支給しなければならない「休業手当」の金額は、
10,500円×6割=6,300円
ということになります。
所定労働日数や残業代にもよりますが、欠勤控除額の4~5割程度、ですね。

また、「1日の内、一部休業した場合」についても、注意が必要です。
労働基準法では、「休業があった日について、平均賃金の6割は支払わなければならない」定めですので、
例えば半日勤務(半日分の給与を支払う)、半日休業の場合、
この「半日分の給与」が平均賃金の6割を超えていれば、
追加で休業手当を支給する必要はありません。

先ほどの例ですと、
日割計算した場合の半日分の給与は 15,000円/2 = 7,500円 であり、
平均賃金の6割(6,300円)を超えていますので、
休業手当の支給は不要、ということになります。

何となく違和感もあるのですが、
「休業手当」が、「使用者は、労働者に対して、1日あたり平均賃金の6割の収入を保障しなければならない」
という考え方で設定されているのだろう、と思います。

# また別の話ですが、休業手当は「給与所得」となり、労働者の所得税の課税対象となります。
 No.1905 労働基準法の休業手当等の課税関係|国税庁
 また、社会保険の標準報酬月額は、4月・5月・6月の支給額をベースに9月分以降が決定されますが、
 休業があり、休業手当が支給された場合には(休業の日数等により)注意が必要です。
 こちらは別途、整理して書きたいと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

休業手当について(2)「使用者の責に帰すべき事由」とは?(「経営上の障害」について)

2020年06月02日 09時24分20秒 | お仕事
前回のブログで、「休業手当」が必要になる条件として、「使用者の責に帰すべき事由」による休業、というお話をしました。
その中で、
「不可抗力(天変地異)」については除外されるが、
「使用者の故意・過失」よりは広い、という説明を紹介しました。

この、「使用者の故意・過失」より拡張された部分を、
故意・過失があるとは言えない「経営上の障害」と呼び、
この部分については「使用者の責に帰すべき事由」に含まれる(=休業手当の対象となる)
解されています。

具体的には、
「顧客減少」「機械の検査」「原料の不足」「流通機構の不円滑による資材入手難」
「監督官庁の勧告による操業停止」「親会社の経営難のための資金・資材の獲得困難」等が
「経営上の障害」と認められ、
そのため休業した場合に休業手当の支給が求めらている事例があります。

経営者側から見ますと、けっこう「厳しい」と感じられるものもあるのではないでしょうか。
このあたりには、労働者の生活が使用者に依存している、という関係を踏まえて
使用者には労働者を働かせて(=働くための前提や環境を整備して)、
給与を支払う義務がある、と考え方が表れているように思います。

では、今回の「新型コロナウイルス」に伴う休業はどうでしょうか?
「不可抗力(天変地異)」(=「休業手当」の支給は不要)と考えられますし、
「経営上の障害」(=「休業手当」の支給が必要)にあたるのでは、とも考えられます。

結論としては、休業した場合に、一概には「休業手当」の支給要否は決まらない、ということになります。
厚生労働省のHPにQAがあります。
新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)|厚生労働省
「休業手当」に関する部分をまとめますと、
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
| ●一般論として、「不可抗力」になる(=「休業手当」の支払義務なし)のは、以下の2つの要件をともに満たすものであり、
|  どちらか一方でも満たさないと「使用者の責に帰すべき事由」にあたる(=「休業手当」の支払義務あり)可能性がある。
|  1.その原因が事業の外部より発生した事故であること(外部起因性)
|  2.事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること(防止不可能性)
| 
| 【新型コロナウイルスに感染した場合・感染の恐れがある場合】
| ●新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、
|  一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられるので、休業手当を支払う必要はない。
| 
| ●新型コロナウイルスへの感染が疑われる方について、「帰国者・接触者相談センター」でのご相談の結果を踏まえても、
|  職務の継続が可能である方について、使用者の自主的判断で休業させる場合には、
|  一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要がある。
| 
| ●発熱などの症状があるため労働者が自主的に休んでいる場合は、
|  通常の病欠と同様に取り扱えば良い(=休業手当の支払は不要)。
|  但し、発熱などの症状があることのみをもって一律に労働者に休んでもらう措置をとる場合のように、使用者の判断で休業させる場合は、
|  一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要がある。
| 
| 【事業の休止の場合】
| ●一般論として、今回の新型コロナウイルス感染症により、事業の休止などを余儀なくされた場合において、
|  労働者を休業させるときには、労使がよく話し合って労働者の不利益を回避するように努力することが大切
| 
| ●海外の取引先が新型コロナウイルス感染症を受け事業を休止したことに伴う事業の休止である場合には、
|  当該取引先への依存の程度、他の代替手段の可能性、事業休止からの期間、
|  使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、判断する必要がある(一概に言えない)。
| 
| ●協力依頼や要請などを受けて営業を自粛し、労働者を休業させる場合であっても、
|  労使がよく話し合って、休業中の手当の水準、休業日や休業時間の設定等について、労働者の不利益を回避する努力をお願いする。
|  一律に労働基準法に基づく休業手当の支払義務がなくなるものではない
|  例えば、営業を自粛するよう協力依頼や要請などを受けた場合であっても、
|  使用者として休業を回避するための具体的努力を最大限尽くしていると言える必要がある。
|  例えば、
|   ・自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか
|   ・労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか
|  といった事情から判断されるので、このような検討が不十分であれば「休業手当は必要」と判断される可能性がある。
|
|------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

個人的には、今回の「新型コロナウイルス」の対応では、
政府は使用者に過度の負担を負わせ過ぎなのでは、と感じます。
「具体的努力を最大限尽くしている」ことを事業主に求めていますが、
政府自身が「具体的努力を最大限尽くしている」のか?と悪口も言いたくなります。

特に国が「休業要請」や「自粛要請」した事業所に対しては、資金繰り等を考えると、
使用者が労働者に「休業手当」を支給し、その後、国が「雇用調整助成金」で補填する形ではなく、
直接、国が労働者に対して支給するべきだと考えます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

休業手当について(2)「使用者の責に帰すべき事由」とは?

2020年06月01日 07時19分32秒 | お仕事
「休業手当」について、前回
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、
その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」
という労働基準法の条文をご紹介しました。
(前回:休業手当について(1)そもそも「休業手当」とは? - 朝寝-昼酒-夜遊

今回は(2)として、「使用者の責に帰すべき事由」について説明します。

(2) 「使用者の責に帰すべき事由」とは?
この文言だけを見ますと、「使用者に故意・過失がある場合」程度の、かなり限定的な範囲のように見えますが、
実際にはかなり広範に認められる(=使用者が、「休業手当」を払う必要のある範囲が広い)と解釈されています。

使用者の責任度合に応じて、以下のように区分して整理します。
1) 不可抗力(天変地異など)
2) 故意・過失があるとは言えない「経営上の障害」
3) 使用者の故意・過失による事由

1) については、「使用者の責に帰すべき事由」には該当しない(=「休業手当」を払う必要はない)と解釈されています。
これは、当然のようですが、
実は、法律が制定される際には「労働者の最低生活の保障」の観点から
労働者の責に帰することのできない事由による休業の場合」を「休業手当」の対象にする、という構想だったようです。
この表現だと例えば「天変地異」についても(「労働者の責」に帰することは、当然できませんので)「休業手当」の対象となります。
ただ、これは事業主にとってあまりにも酷、ということで、
「不可抗力」は除外された「使用者の責に帰すべき事由」という表現になったようです。

2) は後で詳細に検討します。

3) については、「使用者の責に帰すべき事由」に該当する(=「休業手当」を払う必要がある)と解釈されています。
これは当然かと思います。
ただ民法では、
「債権者(=使用者)の責めに帰すべき事由によって債務を履行する(=働く)ことができなくなったときは、
債権者(=使用者)は、反対給付の履行(=賃金の支払)を拒むことができない。」(民法第536条2項)と規定されています。
民法での「債権者の責めに帰すべき事由」は「故意、過失または信義則上これと同視すべき事由」と解されていますので、
使用者の故意・過失による休業の場合は、労働基準法による「休業手当」(平均賃金の60%)でなく、
賃金を100%請求することも可能
である、ということになります。
ただ実際には、「使用者の故意・過失」を証明するのは困難であり、裁判となると時間もかかりますので、
労働基準法の「休業手当」を請求するケースが多いのでは、と思います。
# 「休業手当」の目的の一つは、この「使用者の故意・過失」の証明を省略し、使用者の責任範囲を拡大することで、
 裁判(費用・時間を考えると労働者にとって不利になります)を経ずに
 実質的に労働者の最低生活の保障を図る、ということにあるのだと思います。

ここで、「2) 故意・過失があるとは言えない「経営上の障害」」が問題になりますが、
次回説明したいと思います。

【参考】
労働法(菅野和夫著)第11版(P.439)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする