1.協会けんぽの事業状況とお願い
(全国健康保険協会奈良支部 企画総務部長 穴吹宏樹氏)
2.年金機能強化法による制度改正
(日本年金機構桜井年金事務所 副所長 坂田隆志氏)
(日本年金機構奈良年金事務所 お客様相談室室長補佐 森田典之氏)
(日本年金機構大和高田年金事務所 厚生年金適用調査課 山本妙子氏)
1.は中小企業を中心とする「協会けんぽ」(旧政府管掌健保)の
財政状況を中心とする事業状況と、
政府に対して要請している事項、
「協会けんぽ」として実施している取り組みの紹介。
中小企業を中心とする「協会けんぽ」は、
収入は低迷・減少しているが支出は増加する、という苦境に立たされている。
例えば1人当たりの標準報酬月額は(総報酬制が導入された)平成15年度から3%低下している。
それに対して医療費(保険給付費)は20%近く増加している。
また、高齢者医療への拠出金が全支出の4割に及ぶが、
その拠出金は標準報酬月額に比例しない「頭割り」で計算されており
(現在は一部は「収入割り」になっているが)
比較的標準報酬月額の高い健保組合や共済組合に比して負担が大きい。
そんな中、国庫補助率は本則下限の16.4%から13%に低下した状態が続いていたのが、
ようやく「特例として」「時限的に」16.4%に戻されている、という状況。
結果として、現在では平均保険料率は10.00%を維持しているが、
これでは準備金を取り崩さざるを得ない。
例えば健保組合では平均8.635%だし、
共済組合でも国の共済は8.20%。
つまり、中小企業の被保険者は大企業や公務員に比して、
標準報酬月額が低い上に健康保険の保険料負担の率が高い、ということになる。
このあたり、先月「第2回必須研修」でお話し頂いた
「階層別の社会保障」になってしまっている、と感じた。
この状況を踏まえて協会けんぽでは
協会けんぽ独自の「医療費適正化」の取り組みと、
政府に対して「措置」を要請している、という紹介があった。
医療費適正化の取り組みとして、以下のような内容が紹介された。
□ジェネリック医薬品の使用促進(4年で174億円⇒43億円/年)
□レセプト点検・経費削減(309億円/年)
□扶養家族の再確認(35億円/年)
□特定健診・保健指導(?)
□健康保険の正しい利用の促進
(審査の厳格化等・「コンビニ受診防止」などの呼び掛け)
ただこの効果は(測定できる範囲では)400億円/年程度であり、
4兆3000億円に及ぶ協会けんぽの医療給付に対して1%程度の「焼石に水」ではないか、
というのが個人的な印象。
無論、やらないよりはやった方が良いのだろうが。
政府に対して要請している「措置」としては、
□協会けんぽへの国庫補助割合の引上げ
(現行特例的な16.4%⇒法律本則の上限20%)(⇒約2000億円?)
□高齢者医療制度の見直し
・高齢者医療の公費負担拡充
・高齢者医療への拠出金を頭割りから全面的な「総報酬割り」へ
・70~74歳の高齢者の窓口負担割合を1割から2割へ
が紹介された。
個人的には、全体に
「保険者間の格差」の問題(市町村国保が出てくるともっと大きな問題だろう)と
「健康保険制度そのもの」の問題という、
二つの観点があるのだろう、と感じた。
例えば健保組合や共済組合を解散させて全て「同一健康保険制度」にする、というのは
「引き下げでの平等化」になる恐れがあり、正解ではないと思うが、
脆弱な保険者に対して「結果の平等」を志向する公費負担は、方向性として必要ではないのか?
ここで予算の制約は当然出てくるし、
その面での議論は必要になってくるだろうけど。
また「健康保険制度」全体としては、
そもそも「高齢者の医療費をどうするべきなのか?」という話だと思う。
協会けんぽや健保組合、共済組合といった「被用者保険」は
「働いている世代」と「その子世代」が基本的なカバーする範囲であり、
高齢者世代をカバーすることは元々想定されていなかったのでは、と思う。
このあたりは全面的な見直し・考え直しが必要ではないだろうか。
選挙を考えると、なかなか言いづらい面もあるのだろうけど。
「2.年金機能強化法による制度改正」が今回の研修のメインテーマだったのだが、
こちらについては別途。
※(2)年金機能強化法による制度改正(1)をご覧ください。