元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

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音楽室5号 第8章

2021-06-25 07:16:45 | 音楽室5号

 


第8章
(果たして僕は何を待ち続けているのだろうか・・・いったい)



 ぴいっ!


 カラス女が、しゃべります。


   カチッ!

kuchikuchikuchi
「あたしよ、夜子よ、思い出したわ、あなたキーホーね、ごめんね、わからなかったわ、だって、すっかり大きくなってるんだもん、あたしね、夜にバスに乗るのが大好きなのよ、それでバスの色に合わせて服装や化粧を選ぶのよ、だから今日は黒よ、あらどうしたの?ポカンと口開けて、目つきも何だか変だわねぇ、トロンとした感じで、あなたさっき、あたしを呼んだんでしょう?、キーホーちゃんでしょ、ね、ああ、懐かしいわねぇ、そうそう思い出してきたわ、小学生の頃の事、よく覚えてるわ、あったし、実はね、あなたを好きだったのよ、ほほっ、確かあたしの大事な赤鉛筆をあなたに貸してあげたわよね、でも、あなたは無感動みたいだったわ、もう十年以上も昔の話よねぇ、そうそう、あなたは村井くんと凄ぉく仲が良かったわよねぇ、でも村井くん、あんな事になってしまってねぇ、恐ろしかったわぁ~、カラスに喰べられちゃうなんてねぇ、でも、まだ生きていたら、きっと、まだ、キーホー!、あなたの親友でしょうねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ一緒に毒ガスでも作っているかしら、ほほほ、ねぇ?」
kuchi kuchikuchi

 


 キーホーは、しゃあしゃあと、こんな空虚な無思考言語を、超スピードで捲し立てる女達のアサリかシジミ並の無神経さが、さっぱり、やっぱり、けっぱり、わかんなぁ~いのです。


 キーホーは後頭部を冷たい夜気に撫でられて、這いつくばって、油たっぷりの床板と接吻していました。

脊髄をガンマ・アミノ核酸が、ゆっくりと流れていきます。


 そのうちに、キーホーの意識と右上腹部は黒い綿で一杯になってしまいました。


 ★オヤスミナサイ★


 でも、キーホーは、カラス女のスカートをめくり忘れた事を、睡眠ジュースが意識を夢の内部にとろかしてゆく寸前くらいに、薄ぼんやりと後悔していたのです。


 ※注。

  キーホーが後悔したのは、脳波が低振幅θから丘波+紡錘波のレム期に突入する直前だった。

 



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