元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

あっしは、kippleってぇケチな野郎っす! 基本、自作小説と、Twitterまとめ投稿っす!

「恋の妄想孔2008」:kipple

2008-02-06 00:43:00 | kipple小説

     「恋の妄想孔2008」
                             ~千の妄想になって♪~篇


アタシはいつもショウチャン帽をかぶっている。

頭が冷えるし物理的衝撃から保護してくれるしね。

あったかいし、何だか安心するの。

でもね、ショウチャン帽の天辺には穴が開いてるの。

お風呂の排水孔くらいの大きさ。

アタシは妄想力が足りないの。

だから妄想研究所で頭の天辺の皮を剥いでもらって頭蓋骨をショウチャン帽の穴に合わせて、お空に向けて丸出しにしてるの。

アタシは妄想研究所で頭蓋の天辺を丸るくお風呂の排水孔くらい切り取って、そこから脳の中に妄想受信機を埋めこんでもらったのよ。

脳みそ丸出しじゃないわよ、や~ね、ちゃんと切り取った自分の頭蓋骨でピッタリと蓋してるわよ。

アタシはね、妄想力が弱いから、なかなか幸せになれないの。

女の幸せって、恋することよ、恋をするには妄想がとっても大切。結局、愛なのよ。

でしょう?!

アタシの頭のショウチャン帽には、お風呂の排水孔くらいの穴が開いていて、その穴の中から頭蓋骨がお空に向かってカッパのお皿みたいに開いていて、そのお空を覗く頭蓋には、千の妄想受信アンテナが付いてるの。

小さな針くらいの大きさのアンテナが千個ついてるの。

小さな針くらいの、その千のアンテナは、脳ミソの恋の妄想受信機に繋がっているの。

アタシの頭の天辺のショウチャン帽に開けたお風呂の排水孔くらいの穴の中の頭蓋から突き出た小さな千のアンテナがどんどん、お空の上の衛星から振り撒かれた恋の妄想をキャッチしてるのよ。

恋の妄想、限定なの。妄想研究所で、そう設定してもらったんだからね。

ああ!恋の妄想が、どんどん、どんどん入ってくる!

アタシの千のアンテナが、どんどん、どんどん、受信するの!

恋のためよ。

愛するあの人が、どんなに素晴らしい人かって、どんどん、どんどん妄想して、どんどん、どんどん、この恋する気持ちを愛を膨らませて元気になるの!世界が輝くの!

もっともっと愛するため!もっともっと恋のトリコになるためよ!そうすればアタシは、恋する気持ちに、たっぷりたっぷり満たされて、夢と希望が無限大なの!

全ては、あの人のため!

頭蓋の千のアンテナは限りなく恋の妄想を受信し続け、アタシの頭の中で、どんどん幸せ展開し続けるから、アタシはあの人との無数のラブラブ関係にとっぷりと浸かるの!

浸かって浸かって膨脹して弾けそうになるくらい、あの人との全ての恋のシュチュエーションを頭の中で堪能し続けるの!

朝から晩まで、何時でも何処でも!

ああ!あの人は世界一!なんて素晴らしい人なんでしょう!なんて凄い人なんでしょう!ああ!あおの人を超える人なんて、この世には絶対に存在しないわ!

あの人以外、イ・ナ・イ!!

何処までも一緒、何時までも一緒、アナタのためにアタシの人生があるようにアタシのためにもアナタの人生があるはず・・・当たり前だわ・・・だってこんなに恋して愛し合って・・・

たぶん、アタシとアナタは一緒に死ななければいけない。

この恋は、この愛は、それで永遠になる、永遠の幸福を二人だけで獲得できる。

トワに恋して愛し合って、何処でも一緒、何時でも一緒、そのためには死をもいとわないわ。

永遠の幸福を掴むのよ!二人だけの永遠の幸せを・・・!永久の愛を!

さあ、世界で一番のアナタ、一緒に死にましょう!(^ε^)



・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・×

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



はァ・・・またアタシは捕まってしまった・・・ストーカー・・・なんだって、アタシ・・・

あの人の回り半径1000メートル以内、近づいちゃダメなんだった。裁判所で言われたし。

出刃包丁まで持ってっちゃったもんなぁ。

あ、それと迷惑行為、毎日毎日、愛と恋の千通のメールを送ったり、毎日毎日、千回電話したり、毎日毎日、あたなへ捧げる愛と恋のブログを千記事書いたり、、、

しまった・・・また、やっちゃった。

外そうかな、この頭蓋の千のアンテナ。

恋の妄想受信機。。。

あ~でも妄想力の無いアタシは千のアンテナが無いと生きてけないよ。

恋してなきゃ!愛するあの人を全身全霊で絶え間なく想い続けていなきゃ喜びも楽しみも無いよ、夢も希望もないよ、人生、意味ないわよ。

恋の千のアンテナ外せない・・・恋の妄想無くては生きていけないわ・・・あ~あアンテナが受信した妄想の中ではあんなに恋して愛し合ってたのにな・・・ホントのホントは、そっちじゃないの???かな?

でも、捕まっちゃった。

この刑務所の中では、さすがに妨害壁によって衛星からの恋の妄想電波は届かない。

でも、あの人との無数の楽しい妄想の想い出が、いっぱい、いっぱい、アタシの海馬に残ってるの。

出所したら、又、アタシの千のアンテナが、めくるめく恋の妄想をキャッチして脳内展開してくれるんだ。

そしたら、また、アタシ・・・あの人のストーカーになるんだね・・・、止めれる訳ないものね。

でも、そしたら、又、捕まって、塀の中なのね、いや、次は治療所行きかしらね、一度や二度じゃないしね。

妄想受信アンテナを外す事だけは、いくら国家権力だって出来ないのよね。

国民の頭の中まで管理しちゃいけないのよ。誰だって妄想の自由はあるわ!

自由意志だもん。恋の自由妄想だもん。自由に妄想を衛星から享受する権利は憲法で保証されてるもん!

アタシ、妄想の才能ないし、、、そういう人だって、いっぱいいるわけだし。

でも、もう、アタシの場合は、、、外した方が、いいかな?千のアンテナ。

いやぁ!そんな事、あの人と朝から晩まで仲良く楽しく過す妄想抜きで生きるなんて、絶対にできないわ!

しかもよ!そしたら、アタシのあの天辺、穴あきショウチャン帽は意味無いじゃない!

ショウチャン帽、捨てるのなんかイヤ!絶対イヤ!受け取ってはくれなかったけど、あの人のために一生懸命夜なべして、毛糸で編んで、せっかく千のアンテナの恋の妄想の受信状態を最適に保つために穴まで開けたのよ!

ショウチャン帽の穴、頭蓋を外に出すため頭の皮を剥いで開けた穴、頭蓋に付けた脳みその中の受信機に繋がってる千のアンテナの穴・・・穴の穴の穴穴穴穴穴穴・・・・千の穴なのよ!女は穴の道なのよ!

恋の穴の穴の穴穴穴・・・よ!そのための穴あきショウチャン帽じゃない!

はぁ~・・・・!でもねぇ・・・ここ出ても、又、結局、同じ事になるのかしら。きっと、なるのね。

それでね・・・

刑務所の集団部屋の布団の上でアタシは頭の天辺に皮剥いて開けたお風呂の排水孔くらいの穴に、手のひらを入れて、千のアンテナが、針千本みたくチクチク付いてる頭蓋を、やさしく、心を込めて、チクチクチクチク、撫で~撫でぇ~して考えに耽ってたらね。

アタシ・・・思わず、ため息と共に、こう呟いたの。。。








“あぁ~!もう~、いやっ!そうんな生活っ!”



                  ・・・・・ !


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


「妄想研究所」:kipple

2008-02-05 00:40:00 | kipple小説

     「妄想研究所」


金が尽きてきたので、私は、妄想研究所に妄想を売りに行った。

午前7時に入所し、裸になって、薄暗い生暖かい塩水タンクに入った。

頭のてっぺんから、つまさきまで、千の電極を付けられて、妄想を続けた。

たくさん、妄想した。たくさん、たくさん。

私の妄想は全て、この妄想研究所から妄想加工工場に送られ、人工衛星に送信され、再び衛星から地球上に振り撒かれる。

そうして、人類は妄想循環の中で、いつまでも想像力を失わず活気を保てるのだ。

あっと言う間に終った。

今回は、ずいぶんと溜まっていたので、いつもの倍以上の妄想を大サービスで、千の電極に吸い取らせてやった。

スッキリした。

私は、けっこうな大金を手に、妄想研究所を出た。

外は夜で、見上げると天辺に青白い満月が笑っていた。

私は、思わず、つぶやいた・・・








もうそうんな時間かあ!”




                  ・・・・・ !


This novel was written by kipple
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「雨族」 断片23-焼却場Ⅶ~落合さんによる説明:kipple

2008-02-02 00:45:00 | 雨族(不連続kipple小説)

ようこそRAIN PEOPLES!超バラバラ妄想小説『雨族』の世界へ! since1970年代


               「雨族」
     断片23-焼却場Ⅶ~落合さんによる説明


落合さんは、よく見ると、とても疲れた顔をしていた。

彼は、もう自分のすべての役目は終わってしまい、あとはただ何となく運命どおりに訪れる死を待ちながら生きるしかないんだ、そんな顔をしていた。

若々しく見える微かな笑顔の裏に僕は悲しい老いの顔を感じた。

まばたきの間に僕は、いたるところに肝斑に覆い尽くされ、極度に老化し、皺だらけの千匹のみみずが蠢く様な醜悪な死の素顔を垣間見た様に思った。

彼のクラウネン家に仕えてきた長い長い生は、D・クラウネンの死によって終焉を迎えようとしているようだった。

落合さんは、死の影を潜め棲ませながらも、いつもながらの静かな微笑と落ち着いた紳士的なトーンで僕に言った。

「こうして、また、あなたと会えるなんて。奇跡みたいです。ずいぶん久しぶりですね。まるで世界が終わって、生き残った二人が偶然再会したような気がします」

落合さんは、ぽつんと雨の中で佇んでいる子供のようだった。

僕はしみじみとした。

いみじみ、しみじみ。

落合さんは、きっと「メステル」たちのいる深海世界に戻りたいのだろうな、と僕は思った。

永遠で誰も欲せず誰も傷つかず誰も歳をとらず誰も死なない究極の数学の向こうにある理想の地に。

F・クラウネンは、そのどこを見ているのかわからない目で死体の隅々を、まるで毛穴のひとつひとつを封印するかのように観察していた。

外の雨が次第に烈しさを増してきたようだった。

ボバババババァァと、時折、樹木からごってりとした葉をつたわって大量の雨水の落ちる音が聴こえた。

F・クラウネンを無視して、僕と落合さんは話し続けた。

僕が落合さんにいろいろ短い質問をし、それに落合さんがとても丁寧に答えてくれた。

僕は、D・クラウネンが射殺された状況とその後の処理の事を尋ねた。

「私は長い間、小平の屋敷でいろんな事をやりくりしていて市外には、ほとんど出る事がなかったのです。つい、一週間前の事です。三ヶ月ぶりに動力ぼっちゃまが帰っていらして、
-{僕は死ぬからね、すべては弟の{えふ}が引き継ぐ。{えふ}は死海のクムラン洞窟から帰っている。彼は死海文書以前の写本を見つける事はできなかった。がっかりして帰ってくる。彼の怒りをわかってやってくれ。彼は僕みたいに全知能力は持っていないが希望を持っているんだ。あらゆる希望は大切なものだ。もしかしたら宇宙の白痴プログラムをひん曲げる事ができるかもしれない。大切なのは物質的な様相が、どうということではなく彷徨える意識の方向なのだ。僕は物理的な成り行きのすべてを知っているが彷徨える意識の成り行きはわからない。僕は最近、絶対法則・・パラダイム・・に逆らってインド洋くらいの反吐をはいてもいいんじゃないかという気持ちになっているんだ。しかし、自分の死には逆らえない。僕はね、落合!一週間後に死ぬんだ。でも一石を投じておく。僕の後継者となるシリウスへのデータ通信者に対してね。いいかい、落合、これから伊豆の辺鄙な山の中にいく、そこで僕は死ぬ。後処理を頼む。警察を近づけるな。そして火葬にしろ。完璧に僕が灰になるまで焼き尽くせ。そこでだ、僕が焼かれていく時にこの呪文をとなえるのだ。僕の脊髄が焼かれる時、データはシリウスに送信され、次のデータ送信者への引継ぎがおこなわれる。この呪文はデータ送信者に待ったをかける事になる。わかるか?これは僕の既決宇宙の法則に対する唯一の反逆なんだよ}-
 と言われました。なんだか、とてもウキウキしているようでした」





断片23     終


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)