元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

あっしは、kippleってぇケチな野郎っす! 基本、自作小説と、Twitterまとめ投稿っす!

「知らない世界」:kipple

2011-07-29 00:22:00 | kipple小説

「知らない世界」


昔々から、ボクが 色々、知ってた人

昔々から、ボクを 色々、知ってた人

ボクの前を歩いてた人 ボクの後ろを歩いてた人

ボクが前を歩いてた人 ボクが後ろを歩いてた人

ボクと 一緒に 少しの間 歩いていた人

ボクと 一緒に 長い間 歩いていた人

お空の色は同じで、お空にいっぱい紙風船 懐かしい色がいっぱいだ

色々な色で つぎはぎされた紙風船 ぷぅ~っと膨らんで浮いていた

でも、いつの間にか、ぱんっと潰れて 空から落ちて消えちゃった

夜空にゃ まだまだちゃんと浮かんでる 黄色い紙風船のお月様

その黄色い紙風船のお月様が蒼ざめちゃって告げるんだよ

あの人は死んじゃった、 もういない、 消えちゃった

あの人も死んじゃった、 もういない、 二度と いない

昔々から、

ボクを 色々、知ってた人

ボクが 色々、知ってた人

ボクが 色々、知っていて、ボクを 色々知ってた人

ボクは 全然、知らなくて、ボクを 色々知ってた人

ボクが 色々、知っていて、ボクを 全然知らない人

気づいたら、 そんなみんなは 死んじゃって、 消えちゃって

ボクの 知らない人ばかり   ボクを 知らない人ばかり

ちょっと長居し過ぎたら、

ここは、 ボクの知らない世界

ボクが 誰も知らなくて  ボクを 誰も知らないから

ここは、 ボクを知らない世界

おとうさんやおかあさんや家族のみんなも近所の人も、いなくなったよ 紙風船

昔々から大好きだった有名人も、次から次へと潰れて消えたよ 紙風船

昔々の恋人も、ちょっと昔の恋人も、もういないよ、と 紙風船破裂した

昔々の友達も、ちょっと昔の友達も、もういないよ、と 紙風船吹っ飛んだ

ここは、 知らない世界

ちょっと長居してる間に、 知らない世界になっちゃった

でも、ボクは 知らない世界の 誰も知らない秘密を、 こっそりと、

ずぅ~っと昔に、消えちゃった恋人に 聞いていたので

長居し過ぎたら、 そうしなさいと。


お庭の枝きりバサミを いっぱいに伸ばして 蒼ざめた紙風船のお月様を削るの

知らない世界で 誰も知らない事を ボクは 知ってるの

蒼ざめたお月様は 爆薬の塊だから 枝きりバサミで削って削って

ぷぅ~っと 膨らませたボクの頭の紙風船に めいっぱい詰め込んで

色んな色で 継ぎはぎされた ボクの爆弾頭の紙風船を

両手を 広げてぇ~!  さあ 思いっきり力をこめてぇ~

はい!


せぇ~の!    





                   終


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


「かみかぜJAPAN!」:kipple

2011-07-18 16:57:00 | kipple小説

かみかぜJAPAN!


暑い暑い夏が来て、kipple家では早々と主のkippleが夏バテで寝込み、

“ばかやろう、みんな勘違いしてやがる!おめぇーら、みんな、3月11日に死んでるんだぜぇ!生きてるって勘違いしてるだけだぁ!とっくに死んでるんだよ!早く気づいて成仏しやがれぇ!”

などと、不気味なうわ言を繰り返しており、嫌な感じの気怠い節電の灼熱地獄が続いておりました。


そんなある日の七月十八日の事でございます。

なっち
「ねぇ!3・11の地震で地球の自転が早くなったんだってさ!するとね!すると、地球は公転から外れて流れ星になっちゃうんだって!」

ぴっぷる
「にゃあ、風力発電にすると低周波で地震を誘発しやすくにゃり、地軸が曲がるって知り合いの猫が言ってたにょ」

なまけたろう
「甘いなぁ・・・君たち、そんな遠い先の話ばかり・・・。ふっ。いいかい、地球科学の調査によるとね、もう大地殻変動は始まってるんだよ。この間の東北震災は地球上の全プレートに影響を及ぼし、ズタズタに亀裂が入ってるんだ。3・11なんて、ほんの序曲の序曲に過ぎないんだよ。」

なっち
「なによ!じゃあ、すぐにも何か起こるって言うの?言ってみなさいよ!具体的に!」

なまけたろう
「富士山。ぼくの背中の備長炭が感知したところによるとね、日本各地で異常現象が起きててね、急に温泉が湧き出たり、出なくなったり、色が不気味に変色してたりとかね。ずばっと一言でいうとね。9月に富士山が噴火するって。」

なっち
「はぁ~ぁ。。。。。。。」

ぴっぷる
「にゃぁ~ぁ。。。。。。。」

なまけたろう
「いや、ね、そのぅ農産物や海産物や牛肉とかだけじゃなくて、もっともっと微生物も被爆してるから生態系全体の大問題でね。。。そのぅ続々と奇形生物とか。。。病原体なんかも。。。」

なっち
「はぁぁぁぁ~~~・・・。。。」

ぴっぷる
「にゃぁ・・・ぁ・・・ぁ・・・。。。」

なまけたろう
「・・・いや、そのぅ・・・何か良いニュースないかなぁ。。。はぁ~・・・。」


と、その時、すでに夏バテで死にかけていたkippleが、ガバッと起き上ったのです。

kipple
「みんな!一緒に叫ぶんだぁ!ニイタカヤマノボレ!とぉ!御一緒にぃ!せぇ~の!」

なっちぴっぷるなまけたろうkipple
「ニイタカヤマノボレ!
 ニイタカヤマノボレ!」

kipple
「うっしゃぁー!そこのアナログTVをつけろい!」

なっちぴっぷるなまけたろう
「えぇぇー!節電はいいのー!?電気代ヤバいよー!」

kipple
「かまわん!どーせ来週から地デジとかやらで見れんのじゃぁ!死んだ気になってつけろい!」

TV
「なでしこジャパン!やりましたぁ!強豪アメリカを征し、世界一ですぅぅう~!」

なっちぴっぷるなまけたろうkipple
「うわきゃぁぁぁああああ~っ!」

なっちぴっぷるなまけたろうkipple
「ばんざーい!ばんざぁ~い!ばぁんざぁぁぁ~いっ!」

なっち
「これは神風よ!」

ぴっぷる
「ドイツも応援してくれてたんだにゃー!」

なまけたろう
「ほぉ、じゃ今度はイタ公抜きでドイツと二国同盟でさきの大戦の恨みを晴らしますか。広島長崎平和祈念式典もそろそろですしね。おぼえとけ、アメ公」

kipple
「うぅ!ありがとう!なでしこジャパン!
 あっしには、あんたらがまるで天照大神に見えたぜぇ!
 これは神風だぁ!さぁ!この神風に乗るんだ!日本!
 さぁ!行こうぜ!ドイツ!このままアメリカに攻め込むぞー!
 今度はワシントンに福島原発丸ごと御見舞いしてやるぜぇ!
 とっかぁ~ん!すすめぇー!トテチテター!        」

かくして、本日、七月十八日、kipple家に久しぶりの笑顔と気合が戻ったのでございました。

なっちが、ふと、ぼんやり輝く夏空を仰ぎ見た時、ドイツ方面から微かな風を感じました。

微かな風は、なっちの頬をかすめ、裏窓に垂れ下がったヒビだらけのガラス風鈴を

 “チン

 と鳴らしました。





                   終


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


「ぼろ雑巾の唄を聴け」:kipple

2011-07-04 20:11:00 | kipple小説

「ぼろ雑巾の唄を聴け」


幼稚園の「もも組」の頃、親戚の家のTVでやってた映画を見て、干からびたボロぞうきんのように死ねたらいいなぁ、と思いました。

それから、50年近くが過ぎて、真っ黒な夜が、ジットリと放射能を含んだ霧でお腹をいっぱいにして、ツヤツヤと輝くように膨張しているので、その中から仰ぎ見ると、お月様は薄く、歪んで、干からびたボロ雑巾みたいです。

ボロ!ボロ!ボロボロぞうきん!ボロぞうきん!
ああ!ボロぞうきん!ボロぞうきんに包まれて死にたいんじゃないんだよ!

ああ!ボロボロ、ボロボロ!ボロぞうきん!
ボロボロボレロを聴きながら!干からびたボロぞうきんになって死にたいの!

あれは夢かなあ、それとも今が夢なのかなぁ。

真っ黒な夜が放射能をたっぷり含んだ霧で満たされて、ぷぅ~っと膨らんでツヤツヤして綺麗で、もったいないけど、一生懸命、ぞうきんで拭きます。

毎晩、毎晩、青白い放射能の霧にたっぷり濡れたツヤツヤの夜を拭くんです。

一晩中、汗だくになって、雑巾で吹いてると、ビショビショの視界の向うで、薄ぅ~くなって黄ばんで歪んで干からびたボロ雑巾みたいなお月様が励ましてくれているのです。

ぼんやりとした、たっぷりと放射能を含んだ白い靄が辺りにたちこめてくると、それは朝がきたと言うことです。

そしたら、帰ります。

たっぷりと放射能を含んだ朝の薄青じみた白い靄と、たっぷりと放射能を含んだ朝露に濡れながら、土手を歩いて帰ります。

湾岸沿いの廃屋になった古いアパートの、ベトベトと塵やらヤニやら埃やら、食べ物の残りカスやら垢やら体液やらがこびり付き、真っ黒焦げみたいに腐った三疊間の敷きっぱなしの万年布団に、汗だくのまま倒れて眠ります。休みます。

ボロ!ボロ!ボロボロぞうきん!ボロぞうきん!
ああ!ボロぞうきん!ボロぞうきんに包まれて死にたいんじゃないんだよ!

ああ!ボロボロ、ボロボロ!ボロぞうきん!
ボロボロボレロを聴きながら!干からびたボロぞうきんになって死にたいの!

あれは夢かなあ、それとも今が夢なのかなぁ。

あれは何ていう映画だったかなぁ。思い出せないけど確かに親戚の家に預けられてる時、「もも組」の時に見た。

こんな感じだったなぁ。


からからに晴れた日に、埃っぽい乾ききった土の上を とぼとぼと歩いてるの

とぼとぼと とぼとぼと 歩いてると 洗濯物を干してる女の人が 何か口ずさんでいるの

とても綺麗なメロディー とても懐かしいメロディー とても染み入るメロディー

それで、

“その、今、口ずさんでいたメロディーを、どこで覚えたんだ?”

って洗濯物を干している女の人に聞いてみるの

“ずっと昔、ウチにいた女の人がよく口ずさんでたのよ”

それで、

“その女は、どうした?”

と、又、聞くと

“その人、ある朝、海辺に倒れてたの。具合が悪そうだったから、ウチに連れてって介抱したんだけど、頭も少し変で何もわからないの。

 彼女、しばらくウチで過ごしたけど、ある朝、死んでたわ

 この曲ね?これは、その女の人、具合が良い時には外に出て、ラッパで吹いてたわ”

♪たぁ~ らららら~ たぁ~ らららら~ ら~らららら ら~ら ♪


そんな感じで、あんな風に、ぼろゾウキンのように死ねたらいいなぁって思ったんだ。

もも組」の頃。

彼女は、きっと!世界中の全てに見捨てられ!ボロ雑巾のように見捨てられ!

ボロ雑巾よりもっとボロボロで!干からびて!

最後にたどり着いたのが洗濯物を干していた女のウチの近くの浜辺で!

その浜辺で、彼女は干からびたボロ雑巾のように倒れていた!

ああ!私の耳は貝の耳!海の音が聞こえる!映画の中の彼女という干からびたボロ雑巾を媒体にして!聞こえてくる!

潮騒の中で死ぬるかと思いきや、土地の女の人に助けられてしまった。

でも、結局、その助けてくれた土地の女の人の家で、ある朝・・・

干からびたボロ雑巾のように!死んでいたんだ!


ボロ!ボロ!ボロボロぞうきん!ボロぞうきん!
ああ!ボロぞうきん!ボロぞうきんに包まれて死にたいんじゃないんだよ!

ああ!ボロボロ、ボロボロ!ボロぞうきん!
ボロボロボレロを聴きながら!干からびたボロぞうきんになって死にたいの!

あれは夢かなあ、それとも今が夢なのかなぁ。


もも組」の頃に干からびたボロ雑巾のように死にたいと思ったんだが、結局、子供時代を元気に生き延びてしまいました。

二十歳までには干からびたボロ雑巾のように死ねるだろうと放浪ばっかりしてましたが、結局、元気に生き延びて、あれやこれやで、50を過ぎました。

そうして、こうして腐った三疊間に暮らして、日が暮れたら、又、放射能をたっぷり含んだ霧で、お腹いっぱいになってツヤツヤした真っ黒な夜が輝き、膨脹しはじめるから、拭きに行くのです。

その前に、お腹が空いてくるので、近所に廃棄施設がありますので、そこにたっぷり放射性物質を含有してるので食べられないと捨てられて腐ったコウナゴとか色々ありますので、そこに忍び込んで、かっぱらってきて食べちゃいます。

お金、無いですし。ボロ雑巾が綺麗な街に出ていっても、皆、嫌がるでしょうから。

それから、お腹いっぱいになりますと、ぞうきん持って、たっぷりと放射能の霧を含んでツヤツヤになって湿気いっぱいに膨脹し続けるグニョグニョの夜を拭きに行くんです。

誰かがやらなきゃならないのです。

毎晩、一生懸命拭いてます。ぞうきんで一晩中拭き続けているのですが、なにせ、放射能の湿気たっぷりのツヤツヤのグニョグニョの真っ黒な夜でして。

とっくに、ぞうきんはボロボロになっているんすが、どんどんビチョビチョと濡れて濡れて、どーもイメージ通りの干からびた「もも組」の時に見たあの映画の、ボロぞうきんのように全てに見捨てられた女の人とは違う気がするんです。

湿気が多過ぎるんです。

ボロ!ボロ!ボロボロぞうきん!ボロぞうきん!
ああ!ボロぞうきん!ボロぞうきんに包まれて死にたいんじゃないんだよ!

ああ!ボロボロ、ボロボロ!ボロぞうきん!
ボロボロボレロを聴きながら!干からびたボロぞうきんになって死にたいの!

あれは夢かなあ、それとも今が夢なのかなぁ。

そうして見捨てられた廃屋アパートの黒焦げみたいに腐った三疊間に寝泊りしながら、滲み混んで夜をツヤツヤに膨脹させている放射能の霧拭きに行く日々の泡がシャボン玉みたいに空に登ってはパチパチと弾けて消えるように続いてゆき、何ヶ月か過ぎました。

梅雨が来まして、何日も放射能豪雨が続きましたけど、そんな中でも、夜が来れば、ちゃんと拭きに出掛けました。

真っ黒な夜は放射能の霧だけでもビショビショでやっかいでしたが、それに放射能豪雨も加わって、ますますビィ~ッチャビッチャに膨れ上がって、身体が、この世界からズレ出してしまいそうなくらい大変で、ぞうきんは、さらにボロボロになりましたが、あの映画の干からびた感じとは程遠いようで、ガッカリと疲れが酷くて、夜を爆破してしまおうかと思ったほどです。

でも、夜空を仰ぎ見れば、お月様も、豪雨の向うで歪みまくってビショビショで、昔の干からびた感じとは違った感じで苦しんでいるみたいなので、お月様があんなんなら、もっと頑張らなきゃ、という気になりました。

前は、お月様は、歪んで干からびた黄色い痩せ細ったトカゲみたいにボロ雑巾で、もうすぐにでも死んじゃえば幸せだねと思ってたのですが、梅雨入りして以来、1000兆トンの高濃度放射能汚染水をぶっかけられたみたいにビチャビチャになっちゃって全然干からびた感じが無くなっちゃって、可哀想で可哀想で、いっそ、夜を爆破して楽をしてしまおうか、なんて考えただけで、お月様のバチが当たりそうで、なおさら頑張って拭きました。

ボロ!ボロ!ボロボロぞうきん!ボロぞうきん!
ああ!ボロぞうきん!ボロぞうきんに包まれて死にたいんじゃないんだよ!

ああ!ボロボロ、ボロボロ!ボロぞうきん!
ボロボロボレロを聴きながら!干からびたボロぞうきんになって死にたいの!

あれは夢かなあ、それとも今が夢なのかなぁ。

何日も続いた放射能豪雨が、やっと止みました。

まだ夕暮れ前で、廃棄施設からかっぱらってきた食べられない放射性物質たっぷりのお魚を沢山食べた後でしたので、お腹いっぱいで、する事もなく腐った三疊間の万年床に寝転がってボケっとしてました。

放射能豪雨は昨日から止んでいるのですが、空はカラッと綺麗に晴れてくれるわけではなく、薄い灰色の曇りが世界を覆い尽くしていました。

寝転がってヒビだらけの天井からぶら下がった壊れた裸電球を眺めてると、異様な程、ムッとする空気を感じ三疊の部屋の中が湿気と暑さで、丸ごとメルトダウンしてしまいそうそうでしたので、

よっこらしょっと立ち上がり、何日も閉ざしていた部屋の窓を開けて、ひょこっと顔を出して外気を吸ったのでした。

心持ち、放射性物質の細かな苦い味を感じたけれども、そんなの気のせいで、外気は特に爽やかという訳でもなかったけれども、部屋の中の湿った空気よりは随分とマシかな?
と思いました。

しばらくそうして窓から顔を出して外気を吸っていると、隣りに住んでいる女の人が隣りの窓から同じようにひょこっと顔を出して外気を吸い始めました。

しばらく、その羨ましいくらい青白く干からびたボロ雑巾のような横顔にみとれてから、その隣の女の人の方に顔を向けて言いました。

「こんにちわ」

隣りの女の人は、こっちに顔を向けて軽く会釈をして挨拶を返しますと、

もも組」の頃の、大昔の夜を飾ってた、物凄くでっかくて、まっ黄色に眩しく輝いていた、失われた満月みたいに、大きくまわるく口を開けて、笑いながら言いました。

「まあ!干からびたボロぞうきん!」


ボロ!ボロ!ボロボロぞうきん!ボロぞうきん!
ああ!ボロぞうきん!ボロぞうきんに包まれて死にたいんじゃないんだよ!

ああ!ボロボロ、ボロボロ!ボロぞうきん!
ボロボロボレロを聴きながら!干からびたボロぞうきんになって死にたいの!

あれは夢かなあ、それとも今が夢なのかなぁ。

隣のボロ雑巾のような女の人に太鼓判を押されましたので、なぁんだ、ボロボロだけど、あの映画のシーンみたいに干からびたイメージじゃないなぁと思っていたのだけれども、この梅雨の合間の曇りのせいか、はたまた、もっとずっと前からか、湿ってると思い込んでいただけで、とにかく、干からびたボロ雑巾に、ちゃんとなっていたんだ。

それじゃぁ、夢が叶いそうなのです。

じゃ、そーいう事で。

腐った三疊間のジメジメした万年床にボロぞうきんになって寝っ転がりました。

ある日、見捨てられたアパートの三疊間の万年布団の上で、死んでいました。

まるで、それは、干からびたボロぞうきん でした。


もう、夜拭きの仕事は交代です。

やる気のある人がいれば、の話ですが。

ボロぞうきんの夢は叶って幸せに死に、隣の部屋から、弔いと祝福の意味を込めて、女の人が口ずさんでいます。

死んだボロぞうきんは、それを聞いて幸せいっぱいで、涙をじゃぶじゃぶ流しました。

♪たぁ~ らららら~ たぁ~ らららら~ ら~らららら~ ら~ら ♪


ボロ!ボロ!ボロボロぞうきん!ボロぞうきん!
ああ!ボロぞうきん!ボロぞうきんに包まれて死にたいんじゃないんだよ!

ああ!ボロボロ、ボロボロ!ボロぞうきん!
ボロボロボレロを聴きながら!干からびたボロぞうきんになって死にたいの!

望み、叶ったけど、やっぱり何もかも夢だったのかなぁ。





                   終


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


「雨族」 断片80-すぐ終わる:kipple

2011-07-03 01:25:00 | 雨族(不連続kipple小説)

ようこそRAIN PEOPLES!超バラバラ妄想小説『雨族』の世界へ! since1970年代


               「雨族」
        断片80-すぐ終わる


大丈夫だよ、すぐ終わるから。

雨が一降り、サッと過ぎった、そんな感じで、すぐに終わるから。

楽しい?永遠に続くみたい?苦しい?永遠に続くみたい?

“楽しい”も“苦しい”も薄っぺらい紙の裏表で、“楽しい”の裏側は“苦しい”だし、“苦しい”の裏側は“楽しい”だし

いちいちこだわる事はないよ。

永遠は一瞬の中にあり、一瞬に永遠を感じてるに過ぎないんだから

君が望もうが望むまいが全く無意味なんだよ。

どっちにしろ、すぐに終わるから。

人が、この世界に滞在している時間は本当にアッと言う間なんだ。

幼児だろうが若者だろうが中年だろうが老人だろうが108歳だろうが何の意味も無いし、すぐに終わる。

生まれる前に中絶されようが若くして病死しようが殺されようが自殺しようが大災害で足元で真っ黒な口を開けてる亀裂から底無しの闇に呑まれようと長生きして家族に見守られて大往生しようと、おんなじだよ。

すぐ終わるんだよ。すぐ。

人間の滞在時間なんて、本当に一瞬の通り雨みたいなもんなんだ。

不安になる事も安心する事も一重で、全く気にする事はない。

すぐに終わり何もかも跡形もなく消えるからね。

逆に言えば、どんなに善行をしようと、どんなに悪行をしようと、全然、構わないんだ。

君は最初から徹底的に自由なんだ。

どっちにしろ、何をしようとしまいと、すぐ終わるから。

それを知っていれば、君にとって怖いものなど、この世に一つだってありゃしないんだ。

どうせなら思いっきり何かして、私を一瞬の間でも楽しませてくれぬかね。

そんな絶対の事を言う私は何者なんだ?と君は問うか?

いいよ、教えてあげよう、君もすぐに終わって跡形もなく消える

ここで、私が気まぐれに君と交わした、この会話も、すぐに無に帰す

私は、

全宇宙征服者

いいかい?元々、こんな世界も宇宙も何もかも一切、無いんだよ。

全て、無なんだよ、だから、無に帰すとはそういう事で当たり前の事なんだよ

元々、何にもないんだけど、時折、ほんの時折、ほんの一瞬、揺らぎみたいのがあるんだよ、それが何だかは私にも分からないんだけどね。

一切は無だけど、その、ほんの一瞬の揺らぎが、 0 を 1 に変えるんだ

無が揺らいで、0 から 1つの宇宙が生じた瞬間に無限の世界が出現する

1つの宇宙が瞬間的に無数に枝分かれするんだよ

例えれば、たった一つの微粒子がちょっと違う運動をしただけで、違う宇宙が発生し、そうやって、一瞬にして、無数の宇宙が出現して、その無数の宇宙も一瞬のうちに全て収縮して消滅して、再び無に戻るから、元々、何にも無いに等しいんだよ

君は、瞬間的に生じた、その無数の中の一つの宇宙の片隅で本当に何の意味も無く、全くこれまた無に等しいような一瞬の通り雨みたいな瞬間が無数に極小にスライスされたような余りにも短い時間を過ごすのさ

だからね、すぐ終わるから。ね。だからね、すぐに終わるって私は言ってるんだ

え?私がどうやって全宇宙征服者になったかって?

全宇宙征服者とは、どういうものなのかって?

いいよ、教えてあげる、私は、ある宇宙の、ある時、ある場所で、ある事をしたんだ

もっとも、私のいた宇宙は一瞬の無数の宇宙の中でも早々と消滅してしまったんだけどね。

私がいた宇宙がいきなり収縮して消滅した、その瞬間にね、私は、そもそもの全宇宙の根元を掌握したんだよ。

無が揺らいで、  0 が 1 を生み出した最初の瞬間を押えたんだ。

 1 が生まれて、すぐに無数に枝分かれする、その直前の全宇宙の根幹と言える一瞬を絶妙なタイミングでグリップしたんだよ。

そうするとね、次の一瞬から枝分かれする無数の全ての宇宙の初めから終わりまでの全ての出来事がリアルに私の中に逆流してきてね

次の一瞬で無数に枝分かれした全ての宇宙が収縮して消滅するまでの瞬間に起きた全宇宙の無数の全情報が私の中に納まった

そうして、瞬間的に存在し消滅した全宇宙の根元で全情報を獲得する事によって、私は全宇宙征服者になったのさ

私は一瞬の中で全宇宙の情報を掌握し、その一瞬の中の 1 が無数に枝分かれする直前の瞬間の中で永久に停止し、全宇宙征服者として定着した

私は全宇宙の根元にいて、逆流してくる全宇宙の全てを知ってる。

君の悲しい記憶も苦しい記憶も楽しい記憶も、辛い思いも絶望的な感覚も、何をしたか何をされたか全部。

君だけじゃない、全宇宙の無数の人間に起きた全てを知ってる

だから絶対の事を言える

君は、すぐに終わる。君以外の人も、あっと言う間の通り雨。すぐに消えて無に帰すよ

え?もう一つ質問?いいよ

何、じゃ、君がこういう風に私と私の気まぐれで言葉を交わす事もすでに知っていたのか?って?

そうだよ、知ってるんだよ。全部。

実を言うとね、君が思いっきり何かするとしても、それも全部、知ってるんだ、その一瞬を私に楽しませてくれ、なんてのも実はインチキで全部、知ってるから楽しむ事なんてのも、無いんだよ

私はね、すぐに終わる君たちが羨ましい

全宇宙の根元で停止して全宇宙の全情報を獲得して全宇宙征服者になった私はね。

私はね。

地獄だ

永遠の地獄滞在者。 それが全宇宙征服者さ。

永久に続く豪雨の中で全てを知っている。

だから、絶対に言えるんだ。

君が雨族だとしても、いや、雨族なんだよ、いくら生まれ変わっても抜け出せないんだよ

それでもね。

君は、私より、ずっと幸福で、もう、それは比べものにならないほど絶対に幸福で


だって、君は、すぐ終わる。 のだから。




断片80     終


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)