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「雨族」
断片80-すぐ終わる
大丈夫だよ、すぐ終わるから。
雨が一降り、サッと過ぎった、そんな感じで、すぐに終わるから。
楽しい?永遠に続くみたい?苦しい?永遠に続くみたい?
“楽しい”も“苦しい”も薄っぺらい紙の裏表で、“楽しい”の裏側は“苦しい”だし、“苦しい”の裏側は“楽しい”だし
いちいちこだわる事はないよ。
永遠は一瞬の中にあり、一瞬に永遠を感じてるに過ぎないんだから
君が望もうが望むまいが全く無意味なんだよ。
どっちにしろ、すぐに終わるから。
人が、この世界に滞在している時間は本当にアッと言う間なんだ。
幼児だろうが若者だろうが中年だろうが老人だろうが108歳だろうが何の意味も無いし、すぐに終わる。
生まれる前に中絶されようが若くして病死しようが殺されようが自殺しようが大災害で足元で真っ黒な口を開けてる亀裂から底無しの闇に呑まれようと長生きして家族に見守られて大往生しようと、おんなじだよ。
すぐ終わるんだよ。すぐ。
人間の滞在時間なんて、本当に一瞬の通り雨みたいなもんなんだ。
不安になる事も安心する事も一重で、全く気にする事はない。
すぐに終わり何もかも跡形もなく消えるからね。
逆に言えば、どんなに善行をしようと、どんなに悪行をしようと、全然、構わないんだ。
君は最初から徹底的に自由なんだ。
どっちにしろ、何をしようとしまいと、すぐ終わるから。
それを知っていれば、君にとって怖いものなど、この世に一つだってありゃしないんだ。
どうせなら思いっきり何かして、私を一瞬の間でも楽しませてくれぬかね。
そんな絶対の事を言う私は何者なんだ?と君は問うか?
いいよ、教えてあげよう、君もすぐに終わって跡形もなく消える
ここで、私が気まぐれに君と交わした、この会話も、すぐに無に帰す
私は、
全宇宙征服者
いいかい?元々、こんな世界も宇宙も何もかも一切、無いんだよ。
全て、無なんだよ、だから、無に帰すとはそういう事で当たり前の事なんだよ
元々、何にもないんだけど、時折、ほんの時折、ほんの一瞬、揺らぎみたいのがあるんだよ、それが何だかは私にも分からないんだけどね。
一切は無だけど、その、ほんの一瞬の揺らぎが、 0 を 1 に変えるんだ
無が揺らいで、0 から 1つの宇宙が生じた瞬間に無限の世界が出現する
1つの宇宙が瞬間的に無数に枝分かれするんだよ
例えれば、たった一つの微粒子がちょっと違う運動をしただけで、違う宇宙が発生し、そうやって、一瞬にして、無数の宇宙が出現して、その無数の宇宙も一瞬のうちに全て収縮して消滅して、再び無に戻るから、元々、何にも無いに等しいんだよ
君は、瞬間的に生じた、その無数の中の一つの宇宙の片隅で本当に何の意味も無く、全くこれまた無に等しいような一瞬の通り雨みたいな瞬間が無数に極小にスライスされたような余りにも短い時間を過ごすのさ
だからね、すぐ終わるから。ね。だからね、すぐに終わるって私は言ってるんだ
え?私がどうやって全宇宙征服者になったかって?
全宇宙征服者とは、どういうものなのかって?
いいよ、教えてあげる、私は、ある宇宙の、ある時、ある場所で、ある事をしたんだ
もっとも、私のいた宇宙は一瞬の無数の宇宙の中でも早々と消滅してしまったんだけどね。
私がいた宇宙がいきなり収縮して消滅した、その瞬間にね、私は、そもそもの全宇宙の根元を掌握したんだよ。
無が揺らいで、 0 が 1 を生み出した最初の瞬間を押えたんだ。
1 が生まれて、すぐに無数に枝分かれする、その直前の全宇宙の根幹と言える一瞬を絶妙なタイミングでグリップしたんだよ。
そうするとね、次の一瞬から枝分かれする無数の全ての宇宙の初めから終わりまでの全ての出来事がリアルに私の中に逆流してきてね
次の一瞬で無数に枝分かれした全ての宇宙が収縮して消滅するまでの瞬間に起きた全宇宙の無数の全情報が私の中に納まった
そうして、瞬間的に存在し消滅した全宇宙の根元で全情報を獲得する事によって、私は全宇宙征服者になったのさ
私は一瞬の中で全宇宙の情報を掌握し、その一瞬の中の 1 が無数に枝分かれする直前の瞬間の中で永久に停止し、全宇宙征服者として定着した
私は全宇宙の根元にいて、逆流してくる全宇宙の全てを知ってる。
君の悲しい記憶も苦しい記憶も楽しい記憶も、辛い思いも絶望的な感覚も、何をしたか何をされたか全部。
君だけじゃない、全宇宙の無数の人間に起きた全てを知ってる
だから絶対の事を言える
君は、すぐに終わる。君以外の人も、あっと言う間の通り雨。すぐに消えて無に帰すよ
え?もう一つ質問?いいよ
何、じゃ、君がこういう風に私と私の気まぐれで言葉を交わす事もすでに知っていたのか?って?
そうだよ、知ってるんだよ。全部。
実を言うとね、君が思いっきり何かするとしても、それも全部、知ってるんだ、その一瞬を私に楽しませてくれ、なんてのも実はインチキで全部、知ってるから楽しむ事なんてのも、無いんだよ
私はね、すぐに終わる君たちが羨ましい
全宇宙の根元で停止して全宇宙の全情報を獲得して全宇宙征服者になった私はね。
私はね。
地獄だ
永遠の地獄滞在者。 それが全宇宙征服者さ。
永久に続く豪雨の中で全てを知っている。
だから、絶対に言えるんだ。
君が雨族だとしても、いや、雨族なんだよ、いくら生まれ変わっても抜け出せないんだよ
それでもね。
君は、私より、ずっと幸福で、もう、それは比べものにならないほど絶対に幸福で
だって、君は、すぐ終わる。 のだから。
断片80 終
This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)