元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

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シナリオ的な、あまりに、シナリオ的な、「ペルソナ乱舞」

2021-06-09 08:02:50 | 夢洪水(散文・詩・等)


シナリオ的な、あまりに、シナリオ的な、
「ペルソナ乱舞」

 





 目だ。目。目が、ゆっくりと、閉ざされてゆく。暗くなる。暗く。

 そして広いホールに突然、スポットライトに照らされたロミ1の姿が浮かび上がる。

 演劇調にロミ1は叫ぶ。

「俺は夢を見た。夢の中では俺は理想の俺となって現れるのだ。それは俺の中の俗念を完全に排除し、真の純潔と美の意図のもとに作られた姿だ。俺は夢の中で女になった。演奏中によく現れるあの女だ。」

 ロミ1の顔が次第に、女の顔に変わってゆく。

 首を一回転させると、もうすっかり美しいピンク色の女だ。
 


 ピンク色の女は暗い地下道を抜け、ビルの林立するアスファルトを歩き、背の高い草の道を歩き、そして視界の素晴らしく開けた海に出る。

 ピンク色の女は海を凝視しているが、何かの気配に俊敏に反応し、その方角を見る。すると、そこに忽然とロミ1とロミ2が現れる。

 ロミ2は透明な仮面を付けたロミ1の姿だ。ロミ2は、するするとピンク色の女に欲望をむき出しにした表情で近づき、彼女を砂浜に押し倒す。

 ロミ2がピンク色の女を犯している最中にロミ1はサックスを吹く。空高く、神に近づこうとするかのように。
 


 薄暗いが、かなり広いスタジオ。舞台の上では、ロミ1(テナーサックス)を含めたグループが演奏している。メンバーは全員、化粧をし奇妙な衣装をまとっている。

 曲が進むにつれ興奮したメンバーが狂ったように暴れ回る。ロミ1は音に酔いしれ身体を震わせ、オルガスムスに入っていく。

 射精した瞬間、音の渦が、かっ消え、ロミ1の頭の中に夢の女が現れ、何かを叫ぶ。ロミ1は、一瞬、サックスを口から離すが、すぐに狂気の如く吹き始める。

 音楽は次第に、とてつもない不協和音と化し、爆発するように終わる。



 外は雲一つ無い上天気だ。ロミ1は陽だまりの中で、汗だくのまま、しゃがみ、コーラを飲む。遙か彼方から誰かが歩いてくるのが見える。

 それは仮面を付けたロミ1、すなわちロミ2だ。ロミ1はロミ2と向かい合う。ロミ2はロミ1の前に立ち、傲慢に笑う。

ロミ2「そんなオナニー楽器、壊しちまえ!自分の骨をしゃぶってるようなもんだぜ。」 彼は風船ガムを噛んでいる。

ロミ1「余計な、お世話だ。」

ロミ2「ふん。俺は、お前だよ。お前は、そうやって仮面をつけてるんだ。」

ロミ1「           。」

ロミ2「だけど、お前は、いくら高潔ぶった仮面を付けていても、素顔は貪欲な俗物なのだよ。仮面なんてぶち壊せ!」

ロミ1「必ず、仮面が素顔になる時は来る。」

ロミ2「ひとつ教えてやろう。お前の女は、お前の気取った仮面を、ひっぺがしてくれるだろうよ。」

ロミ1「俺の女とは何の事だ?」

ロミ2「お前は今日、その女に会うんだよ。ほら、夢の中のピンク色の女だ。」

 ロミ2は、風船ガムを膨らます。

 
 

 ロミ1は街を歩いている。人々は化粧をし、機械的に整然と歩いている。ロミ1は小さな小屋の様な映写館に、ふと入る。

 

 
 暗い室内で、5~6人の奇妙な人々が、じっとスクリーンを凝視している。ロミ1も彼らに混じって見る。

 やがて、スクリーンの中にはロミ1の夢の中のピンク色の女が現れる。スクリーンの中では、静かな人のいない公園を、その女が歩き、立ち上がり、座り、空を仰ぎ、まるで、白痴のように彷徨っている。

 ロミ1は、どんどん身を乗り出してゆき、ついに、スクリーンの中に入り込む。

 
 

 ロミ1はピンク色の女を、公園内を、追いかける。

ロミ1「 待てよ 」      ピンク色の女、待たない。

ロミ1「 待てよ 」      ピンク色の女、振り向く。

ピンク色の女「何?」

ロミ1「俺は夢の中で君になった。」

 ピンク色の女は、黙したまま顔をそむけ、再び歩き出す。

ロミ1「そ、それで、君は海で、2人の俺を見たんだ。」

 ピンク色の女は、困った顔で言う。

ピンク色の女「そうよ。」

ロミ1「見たのか?」      目を丸くする。

ピンク色の女「見たわ。」

ロミ1「本当か?」

ピンク色の女「わかったわ、いらっしゃい。」

 ピンク色の女はロミ1の手を引く。

 

 
 灰色の淋しい路地を通って、ロミ1とピンク色の女は、ラブホテルに入っていく。

 広い部屋の広いベッドで、異星人同志のように緊張して2人は抱き合う。

 ロミ1の頭の中で、唯一の理想像と同化した、このピンク色の女の、あらざるべき肉欲を憎み、それを拒まずに通過させた自分の凡俗さをも憎み、2つが混在し痛烈な激怒となり、ピンク色の女が事が済み、ロミ1に報酬を要求した時、突如、ロミ1はピンク色の女を乱打し、半殺しにして立ち去る。
 



 ロミ1は街を歩く。人々は奇怪な化粧をし、いっせいに振り向いて、ロミ1を見下して笑う。ロミ1は顔をふせ、足を早める。肌が鳥肌立つ。そして逃げるように走り出す。

 
10
 

 ロミ1は、自分のアパートに帰る。ドアの隙間から、自分の部屋を見ると、中で自分(ロミ2)が振り返って笑っている。

ロミ1「外へ出ろ。」

ロミ2「よし。」

 ロミ1は息をきらしている。ロミ2は立ち上がる。

 
11

 
 ぶどう畑。2人は向かい合っている。ロミ2がガムをロミ1に吐きつける。そして、殴り合いが始まる。

 風景に、白に赤や緑、様々な絵の具が付着し、それが、薄ぼけ、パックしているロミ0の顔が出現する。

 
12 
 

 パックしているロミ0は静かな公園でサックスを吹いている。そこへ、あのピンク色の女が、何処からともなく現れる。

ピンク色の女「パック仮面の下は、どんな顔?」

 女はロミ0のパックを額から徐々に、剥がしてゆく。血だらけの醜い皮膚が見える。

 女は大きな悲鳴を上げる。

 ロミ0は走り出す。鏡に映じた自分の顔を見て大きく呻き、走り、車にひかれ、割れた頭蓋からピンク色の脳味噌を散乱させる。

 
13 
 

 目。目が開く。ピンク色の女がベッドの上で勢いよく上体を起こし、目覚める。ベッドの近くには大きな窓がある。

 ピンク色の女は、変な夢を忘れようとするように、外の景色を見る。

 窓からは向こうの公園が見え、そこではロミ1がサックスを吹いている。





 




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